★2020東京オリンピックは呪いがかけられているのではないかー(田中良紹氏)

2020年の東京オリンピックには呪いがかけられているのではないか。

招致活動の先頭に立ち招致を成功させた猪瀬直樹前東京都知事は「政治とカネ」で失脚し、

その後に就任した舛添要一現都知事もまた「政治とカネ」で世論の糾弾を浴びている。

オリンピックのメインスタジアムとなる新国立競技場の建設計画とエンブレムのデザイン案は

白紙撤回されるというお粗末劇があり、

また森元総理が組織委会長を務めることから米国メディアに「ヤクザ・オリンピック」と報道され、

今度は招致を巡る日本の買収工作にフランスの捜査当局がメスを入れようとしている。

これまでの経緯を整理する。オリンピック東京招致が決まったのは2013年9月である。

その前年の12月に東京招致を言い出した石原慎太郎東京都知事の後継指名を受けて

猪瀬氏が立候補、個人で史上最高票を獲得して都知事に就任した。

その選挙の際に猪瀬氏は医療法人徳洲会から5千万円を受け取る。

徳洲会の徳田虎雄氏と石原氏は盟友関係にあり、

息子の徳田毅衆議院議員から猪瀬氏は議員会館で現金5千万円を受け取ったのである。

そして猪瀬都知事が誕生した同じ日に衆院選で自民党も政権に返り咲き、第二次安倍政権が誕生した。

オリンピック招致に積極的だったのは猪瀬知事だけではない。

安倍政権もアベノミクス「第四の矢」として招致に全力を挙げた。

英国の「ガーディアン」紙は2013年7月と10月に日本の銀行からシンガポールの「ブラック・タイディング」社に

2億2千3百万円がオリンピック招致の名目で振り込まれ、そこには電通の名前もあると報道した。

この「ブラック・タイディング」社はオリンピック招致を決めるIOC委員で国際陸連前会長の息子と関係があり、

フランスの司法当局は贈収賄の疑いで捜査を進めているという。

これに対し日本オリンピック委員会はその会社が業務契約に基づく正式なコンサルタントだと発表した。

ところがテレビで見る限り「ブラック・タイディング」社は個人のアパートの一室を住所とする

典型的なペーパーカンパニーである。

ともかく13年9月に猪瀬知事は招致に成功した。

すると猪瀬知事に対する安倍政権の対応が変わってくる。

森元総理が公然と猪瀬氏を批判するようになり、

招致が決まった10日後には東京地検特捜部が徳洲会マネーの捜査に乗り出す。

そしてその狙いが徳洲会と政治家の関係ではなく、

猪瀬氏ただ一人を狙っていることが分かってくるのである。

捜査に慌てた猪瀬知事はすぐに5千万円を徳洲会側に返却した。

すると待ってましたとばかり家宅捜索でその金が検察に押収される。

そして検察はそれをメディアにリークした。メディの報道は猪瀬知事に集中し、

徳洲会マネーの全容解明にはならなくなる。

猪瀬知事は東京五輪組織委会長のポストに意欲を示していたが、

森元総理の会長就任がこれで決定的になる。

そして後任の東京都知事には安倍政権にとって都合のよい人物を探し、

さらに14年2月から始まるソチ・オリンピックの開催中に都知事選挙が行われる日程が考えられた。

そのため猪瀬知事にすぐに辞められては困る。

疑惑の発覚ですっかり権力の操り人形と化した猪瀬知事は説明にならぬ釈明を延々と続けた。

フーテンは「所詮は政治のアマチュアである猪瀬氏は速やかに知事を辞め、

作家に戻って国民のために政治の裏舞台を暴露すべきだ」とブログに書いた。

しかし猪瀬氏は「哀れなピエロ」を演じ続ける。

現金授受は足がつくのを防ぐやり方である。

だから「裏金」の可能性があり贈収賄を疑う必要があるのだが、

検察は猪瀬氏を公職選挙法の形式犯という交通違反並みの軽い処分とした。

真相をしゃべらぬ代わりに軽い処分で済ませるよう官邸から指示された結果だとフーテンは思った。

14年2月、ソチ・オリンピックの最中に行われた都知事選挙で、

小泉元総理が細川元総理を引っ張り出し、反原発を争点にしようとする。

これに対し与党は自民党から野党に転じた舛添要一氏を立てて自民党色を薄め、

労働組合の連合も取り込んで徹底した組織選挙を展開した。

一方で共産党は宇都宮健児氏を推し野党候補の一本化ができなかった。

結果、舛添氏が当選し、宇都宮氏は細川氏を抑えて2位となった。

そのため野党勢力には選挙での候補者の1本化調整と風頼みではない組織選挙の必要性が認識された。

舛添知事が誕生したころ、米国のニュースサイト「デイリー・ビースト」がソチ・オリンピックを

「ひどいオリンピック」と批判する一方で、「2020年の東京オリンピックはヤクザ・オリンピック」という記事を

掲載した。

根拠は日本オリンピック委員会副会長の田中英寿氏と東京五輪組織委員会会長の森喜朗氏は

指定暴力団や右翼との関係が深く、日本の警察関係者が東京オリンピックに絡む工事を

田中氏や森氏がヤクザにつなげる口利きをするのではないかと心配しているという内容である。

欧米メディアはソチ・オリンピックを批判し、ドーピング疑惑が今でも問題にされているが、

そのソチ・オリンピックに西側から出席した首脳は安倍総理ただ一人である。

東京オリンピックに批判的な記事が出てくる背景には森元総理と安倍総理のプーチン・コネクションが

関係しているかもしれない。

それから2年、新国立競技場は建設費の高騰が問題となり、エンブレムには登用疑惑が起きた。

そして舛添氏の「政治とカネ」の疑惑に週刊文春が火をつける。

甘利スキャンダルのスクープ以来、文春には情報提供が相次いでいるというから舛添氏の疑惑も

そうした情報に基づくものだろう。

その中にはオリンピックを巡って舛添氏に言うことを聞かせようとする勢力からの情報提供が

含まれているかもしれない。現在明らかにされた内容はとんでもないことばかりだが、

ただそれに怒るだけでなくその背後にある情報の意図を読み取ることも必要である。

そして舛添氏と同じく2018年に任期切れを迎える安倍総理は、

2020年の東京オリンピックまで任期を延長するため衆参ダブル選挙を考えていると言われる。

熊本地震でいったんは消えたかに思われた衆参ダブルも、

オバマ大統領の広島訪問で再び蘇ったと永田町では言われている。

そうした時にフランスの捜査当局が贈収賄疑惑で日本のオリンピック招致活動にメスを入れ始めた。

日本政府としては何もなかったことにしたい思いでいることだろう。

舛添氏の先行きもフランス当局の捜査の先行きも現時点では読み切れないが、

しかしフーテンはオリンピック招致が決まって日本中が沸いている時に、

日本は順番を間違えていないかという思いに取りつかれた。

日本国家が取り組むべきことは災害からの復興と少子高齢化への対応に着手することであり、

それらをおろそかにしてまでオリンピックに力を入れるべきではない。

ところがその順番を間違え2020年オリンピックに浮かれていると、

終わった後には悲惨な日本が待ち受けるのである。

オリンピックに呪いがかけられていると思える出来事が続くのは、

順番を間違えるなという天からの警告ではないかとフーテンには思えてくる。

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