★オバマ大統領の広島訪問に、「卒業旅行」以上にどれ位の意義がるか。
2009年プラハ演説。核廃絶に向け強い意思表明は昔の話。ー(孫崎享氏)

1: 2009年4月5日オバマ大統領はプラハにて演説を行った。核兵器廃絶に向け、

歴史的演説と位置づけられた。中身を見てみたい。

・ 今日、焦点をあてる問題は私たちの国の安全保障と世界の平和にとって基本的なものです。

21世紀の核兵器の未来についてです。

・今日、冷戦は消えましたが、何千もの兵器は消えませんでした。

 何千もの核兵器の存在は冷戦の最も危険な遺産です。

・20世紀に自由のために立ち上がったように、

21世紀にすべての人が恐怖から自由に生きられる権利のために一緒に立たなければいけません。

核保有国として、核兵器を使用したことがあるただ一つの核保有国として、

米国は行動する道義的な責任を持っています。

私たちは一カ国ではこの努力を成功させることはできませんが、リードすることはでき、始めることはできます。

・だから今日、私は明白に、信念とともに、米国が核兵器のない平和で安全な世界を追求すると約束します。

・弾頭と保有量を減らすために、新しい戦略兵器削減条約を今年ロシアと交渉し始めます

・核実験を世界で禁止することを達成するために、

私の政権では包括的核実験禁止条約(CTBT)の批准をただちに、そして積極的に追及します。

・兵器の基礎となる部分をカットオフ(取り除く)するため、

米国は、核保有国で使用される核物質の生産を検証可能な形で終わらせる新しい条約を目指します。

2:上記の演説は核の廃絶に向けて米国が具体的行動をとることを訴え、国際世論は強く支持した。

 2009年10月ノーベル平和賞を受賞した。

3:オバマ大統領は大統領選挙に於いてイラク戦争反対を述べ、

これもまた米国の新しい安全保障政策への期待感を高めた。

4こうした中で2009年オバマ大統領が訪日時、広島訪問を希望したが、

外務省が消極的見解を述べたことが明らかにされている。

オバマ大統領の広島訪問 外務次官「時期尚早」 ウィキリークス公開の米公電

オバマ大統領は日本人の間で歴史的なほどの人気を誇っており、

日本の大衆は大統領の11月の日本訪問に高い期待を持つだろうと藪中外務次官は指摘した。

特に反核団体は、4月5日プラハでの核不拡散に関しての大統領のスピーチを念頭に、

彼が広島を訪問するかどうかについて推測を巡らすだろう。

だが、オバマ大統領が広島を訪問し、

第二次世界大戦中の原爆投下に対して謝罪をするという考えは

「成功の見込みのないもの」なのだから、

両国政府はこのような問題についての大衆の期待を静めなければならないと強調した。

ファンファーレ無しの地味な広島訪問ですら正しいメッセージを伝えるのに十分象なのに、

11月の訪問にこのような計画を含めるのは時期尚早であると。

9:薮中次官の発言は自己の見解を述べただけではない。

事前に米側関係者の助言があったと推定される。

10:2009年の時に反対し、現在反対の力はあまりない。この違いは何か。

 2009年はオバマ大統領は核廃絶に向け、具体的に動こうとした。

広島訪問をその動きのエネルギーに使うことを考えた。だから止めたのである。

 今次訪問時、プラハ演説のように、

「今日、私は明白に、信念とともに、米国が核兵器のない平和で安全な世界を追求すると約束します」

と言えるか。最早、言えない。

10 米国政治は新しい大統領選出の時期に入った。

オバマ大統領が重要な政策を打ち出せる時期は終わった。

だから米国内に絶対阻止するという力は強くない。

 一言でいえば、大統領の卒業旅行みたいなものだ。

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