★「検証なき国はすたれる」と書いた日経新聞「風見鶏」に思うー(天木直人氏)

きのう4月24日の日経新聞「風見鶏」で、

秋田浩之編集委員が「検証なき国は廃れる」という見出しの論説を書いていた。

 そこで書かれている内容は、日本と言う国は誤りを検証しない国であるという嘆きだ。

 そして、その典型例として書かれていたのが、あのイラク戦争に賛成した日本の検証のなさだ。

 欧米諸国とのあまりの違いを、次のように指摘している。

 今年の6月に、英国政府が2009年に設置した独立調査委員会が8年越しの検証結果を発表する。

 尋問に応じたのはブレア首相(当時)をはじめ当時の要人や軍幹部百数十人にのぼる。

 イラク戦争を始めた米国は、すでに約600ページの報告書を10年ほど前に出している。

 イラク戦争に参加しなかったオランダさえも、戦争を支持したことが正しかったかどうか、

約500ページの検証結果を発表している。

 ところが日本は民主党政権の指示を受けた外務省が、民主党政権が終わる直前の2012年12月に、わずか4ページの検証要旨を公表しただけだ。

 さすがに、このまま日本が検証なしに終わらせるわけにはいかない、

そういって秋田浩之編集委員は次のように締めくくっている。

 「日本は先の大戦で、自国民だけで約310万人の命を失った。

再び、国策を誤ることはないのか。国の検証力の乏しさを考えると、不安になる」と。

 なぜ今ごろになって日経新聞は、そして秋田編集委員は、このような論評を掲げたのだろう。

 私が想像するに、今年の6月に英国の検証調査委員会の膨大な検証結果が公表されると、

その時点で再びイラク戦争を検証すべきではないか、という声が高まるからだ。

 私はまったく知らなかったのだが、

この検証報告が今年の6月に発表されるということは一大ニュースだ。

 いやがおうでも世界はイラク戦争について思い出さざるを得ない。

 しかし、残念ながら今年6月に英国の検証結果が公表されても、

日本ではいまさらイラク検証の気運は起こらないだろう。

 ひょっとしたら、この日経新聞の記事も、それを見越した上で、

格好をつけてこのようなガス抜きの記事を書いたのかもしれない。

 なぜ私がそう思うか。

 それは、日本では、外務省や小泉自民党政権はもとより、民主党政権になっても、

そして再び安倍自民党政権になっても検証は行われなかったからだ。

 それどころか、超党派の国会議員も、市民団体による検証も、

まともな検証が出来ないまま今日に至っている。

 彼らには、はじめからまともな検証などする気はなかったのだ。

 その証拠に、彼らの誰一人として、私への聞き取りをしようとしたものはいなかった。

 私が自己宣伝したいからそう言っているのではない。

 もし本気で検証するのなら、少なくとも、当時あの戦争は間違いだったと小泉首相(当時)に

進言して解雇された私への聞き取りは不可欠であったはずだ。

 なぜだろう。

 私の存在に気づかなかったのか。

 そんなはずはない。

 結果として私があまりにも正しかったからだ。

 そんな私に証言を求めるのはしゃらくさいからだ。

 もしいつの日か、日本があのイラク戦争を本気で検証するようになり、

私にも証言を求めるようになったらどうするかって。

 残念ながらそのような時は来ないだろう。

 そして、たとえそのような時が来たとしても、私は証言には応じないだろう。

 へそを曲げて応じないのではない。

 当時の事はとっくに忘れてしまったからだ。

 物事には何ごともタイミングというものがある。

 タイミングを逸してしまえばすべては終わるということである。

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