★TPPで私たちの暮らしはこのように破壊されるー(植草一秀氏)

昨日、4月21日(木)正午から、

衆議院第二議員会館多目的会議室

において、

「TPPを批准させない 4.21院内集会」

http://nothankstpp.jimdo.com/

が開催された。

主催は「TPP批准阻止アクション実行委員会」

で、集会開催に当たっては、

全国保険医団体連合会(保団連)

https://hodanren.doc-net.or.jp/

が事務局機能を担ってくださった。

集会では、

TPP阻止国民会議代表世話人、TPP交渉差止・違憲訴訟の会会長で

前日本医師会会長の原中勝征氏が冒頭にあいさつをされた。

また、集会の締め括りには、

日本保険医団体連合会会長の住江憲勇氏が、

TPPが医療にもたらす問題点の核心について説明をされた。

さらに、TPP批准阻止運動の中心を担われている山田正彦元農林水産大臣が全体を総括された。

国会議員も、

民進党から福島伸享衆院議員、宮崎岳志衆院議員、藤田幸久参院議員、小宮山泰子衆院議員、

日本共産党から笠井亮衆院議員、畠山和也衆院議員、田村智子参院議員、

社会民主党から福島瑞穂参院議員、

などが出席し、TPP阻止に向けての現況報告並びに問題点の指摘、今後の活動方針などが示された。

集会の前半では、私からTPPの主要な問題点についての概略的な説明をさせていただいた。

演題を

「いのちとくらしを蝕(むしば)むTPP
 甘いマスクと悪魔の素顔」

とした。

TPPの問題点をまず三つ挙げると、

1.TPPは強欲巨大資本=多国籍企業の利益極大化を目標にする枠組みであること

2.TPP(ISDS条項)によって日本の主権者は、対外的な独立性、意思決定権の両面から主権を喪失すること

3.TPPによって、私たちのいのちと健康、暮らしが破壊されてしまうこと

の三つを挙げることができる。

強欲巨大資本の手先であるマスメディアは、

TPPは国民の幸福を増進するものであるかのように美辞麗句を並べて説明するが、

この虚偽説明を鵜呑みにすると取り返しのつかないことになる。

今次通常国会でTPP批准が実現しない見通しが強まっていることは大変喜ばしく、

これまでの多様な運動の大いなる成果であると評価できるが、ここで気を緩めてはならない。

目標はTPP批准阻止であり、TPPそのものを消滅させることである。

TPP発効には85%ルールが適用される。

85%ルールというのは、TPP域内の国内総生産(GDP)の合計が85%以上を占める6カ国以上の批准で

発効できるというものである。

現在の参加国のGDPでは、2013年時点では米国のGDPが域内の約60%、

日本が約18%を占めているため、日本または米国のいずれかの国で批准されなければ、

TPPは発効できないことになる。

つまり、日本のTPP批准を阻止できれば、TPPそのものを消滅させることができるのである。

この大いなる目標が、架空のものではなく現実のものになる、大いなる活路がいま開けようとしている。

このことを私たちははっきりと確認しておかねばならない。


TPPのイメージを正確にすべての主権者に正しく伝えることが重要である。

そのために、私は集会で、TPPのイメージを伝える三つのたとえを紹介した。

講演タイトルの

「甘いマスクと悪魔の素顔」

というものを、より具体的なイメージとして伝えるための例を三つ提示した。

その1が

「トリカブト」

「トリカブト」の花をご存じない方が多いかもしれない。

「トリカブト」は実に可憐で美しい花を咲かせる。

しかし、トリカブトには猛毒成分が含まれており、人を死に至らしめる。

その2は、

「サソリの毒」

である。

ISDSの恐ろしさは、時間がたたないと分からない。

ISDSの制度によって、何十年もかけて、日本改変が実行されるのである。

「サソリの毒」という意味は「後で効くのよ♪」ということだ。

その3は、

「シベリア抑留地行きの列車」

である。

敗戦後、満州で捕虜になった日本兵が祖国に帰還できると思って乗り込んだ列車は

シベリア抑留地に向かう列車だった。

地獄が待ち構えていたのである。

私たちはTPPという地獄行きの列車に乗ってはならないのだ。


TPPにはさまざまな毒が盛り込まれている。

毒素条項

とも言われる。

その最大のものが

ISDS条項

だ。

自民党は

「国の主権を損なうようなISD条項には同意しない」

ことを公約に掲げたが、

「国の主権を損なわないISDS条項」など存在しない。

「人の命を奪わないような殺人なら許される」

という説明が意味を持たないのと同じだ。


TPPとはそもそも、誰が、何を目的に推進しているものなのか。

TPPの生まれとその後の経過にズレがある。

TPPはもともとブルネイ、シンガポール、チリ、ニュージーランドの4ヵ国で始めたものだ。

このうち、ブルネイ、シンガポール、チリの3ヵ国は食糧自給のできない国である。

現在70億人の世界人口は2030年には80億人に達すると見られている。

人口が爆発するとき、紛争の原因になるのが食糧である。

その食糧難を見越して、上記3ヵ国はTPPの枠組みを構築したのだと思われる。

それはさておき、TPPを現在のような枠組みに改変した主導者は、もちろん米国である。

そして、米国のターゲットは、もちろん日本である。


米国は日本市場を収奪することを永年の目標に据えてきた。

かつての貿易摩擦がアクションプログラムに姿を変え、

日米構造協議=SII

年次改革要望書

などの大型交渉が繰り広げられてきた。

その日本収奪のための最終兵器が

TPP

なのである。

TPPは経済戦争における大量破壊兵器、

核兵器に他ならない。

その核兵器TPPの核弾頭が

ISDS条項

なのである。


TPPで私たちの暮らしはどう変わるのか。

四つの重大な変化が生じることになるだろう。

第一に、日本の農業が劇的に衰退することだ。

強欲資本は日本で農業を株式会社形態で実行しようとしている。

一部の農業は株式会社方式、大資本投下で、十分に儲かるビジネスになる。

しかし、その結果として、日本のほぼすべての兼業農家は廃業に追い込まれるだろう。

食糧自給率は下がり、

津々浦々の田園風景は消滅するだろう。

津々浦々の田園が果たしてきた役割は無限に大きい。

2030年の世界が深刻な食糧危機に直面するとき、

多くの日本人が食糧危機によって命を失うことになるだろう。


第2は、食の安全・安心が完全に崩壊することだ。

日本の食品添加物、残留農薬、食品表示義務の制度は、米国よりもはるかに厳しい。

米国の規制が緩いのは、米国では制度が国民を守るためではなく、

大資本が儲かるために設計されている面が強いからである。

日本がTPPに参加すると、日本に投資する強欲資本は、日本の諸制度、諸規制が

邪魔で邪魔で、どうしようもないと考えるに違いない。

そして、ISDSを活用して訴訟を起こすと脅すだろう。

ISDSの裁定では、大資本寄りの決定が示される可能性が極めて高い。

ポストハーベスト、

アフラトキシン、

BSE、抗生剤、成長ホルモン剤、ラクトパミンの危険が大きい食肉、

そして

GM(遺伝子組み換え)食品

GM植物用の殺人農薬

などが、日本でも野放し状態になる可能性が極めて高いのである。


第3は医療の崩壊だ。

強欲巨大資本は2段階の戦術を実行してくるだろう。

第1段階は、日本の公的保険を食い荒らすこと。

日本の公的保険の枠組みの中で、米国などで製造する医薬品、医療機器などを

できるだけ高く売りつけようとするだろう。

そのために、保険収載を決定するプロセスに強欲資本が関与する仕組みの構築を強引に要求するだろう。

日本の公的医療保険が高価な医薬品、高価な医療機器を組み込むことになれば、

公的医療保険の財政破たんは一段と前倒しになる。

この事情が、日本における混合診療全面解禁、高額療養費制度の崩壊を加速させる。

その結果として、日本の医療は完全な二本立てになる。

国民皆保険は制度として残っても、貧困な医療しか実行できなくなる。

十分な医療を受けることができるのは、高額な民間医療保険に加入できる富裕層に限られることになる。

医療のビジネス化は加速し、救急医療、へき地医療、産婦人科、

小児科を担う医師は激減してしまうに違いない。


そして、第4の問題は、日本の金融がハゲタカによって、いよいよ本格的に食い荒らされることだ。

日本郵政のマネー、公的年金のマネーの収奪はすでに本格化しているが、

これがさらに、共済制度の浸食にまで進む。

JA共済、全労済、コープ共済などが、優遇措置を受けているとされ、

共済制度全体が破壊される可能性があるだろう。

こうした変化で日本の国民の大半は甚大な被害を受ける。

まさに地獄の日々が待ち構えているのだ。

TPPという地獄行きの列車に

乗ってはいけない。

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