★見過ごされる安倍首相のこれ以上ない対米従属発言ー(天木直人氏)

きのう4月7日の産経新聞が小さく報じた。

 安倍首相はトランプ米大統領選候補が在日米軍撤退の可能性に言及した事に対し、

米紙ウォ-ルストリートジャーナル(電子版)とのインタビューに応じて次のように語ったと。

 「予見できる将来、米国の存在が不必要となる状況は考えられない」

 産経新聞はこれを、日本にとって在日米軍の不在は「考えられない」と安倍首相が語った、と書いている。

 だれが聞いてもそう受け止められる発言だ。

 しかし、これほど主権を放棄した対米従属的な発言はない。

 およそ世界のまともな独立国の中で、

外国軍の常時駐留を当たり前のように語る首相や大統領がいるだろうか。

 韓国のように、いまだ北朝鮮と戦争状況(休戦中)にある国と日本は、根本的に違うのだ。

 「日米軍事同盟によって地域の平和と安定がもたらされる」、というところまでは、まだいい。

 しかし、日米軍事同盟、つまり日米安保条約でさえ、米軍の永久駐留を認めているわけではない。

 それどころか、一方の通告で、いつでも安保条約は解消出来る事になっている。

 確かに米国の本音は、米国の望む数の米軍を、米国が望む日本全土に、米国が望む時まで、

駐留させるというのものであり(ダレス発言)、

それを担保するものが日米地位協定であるとされているが、

それらはすべて国民に知らされないところで合意され、運用されているいわば「密約」なのである。

 在日米軍の不在は考えられないなどと言って、

在日米軍の常駐を公然と認めた日本の首相を私は知らない。

 しかもそれを国会で国民に説得するのではなく、米紙とのインタビューで語ったのだ。

 おりから米軍新基地を辺野古につくる事が沖縄との間で一大内政問題となっている。

 この安倍首相の発言は辺野古を強行すると米紙に約束しているようなものだ。

 この大問題発言を、ところが、誰一人として問題視しようとしない。

 この発言を報じたのが右翼新聞である産経だけだというのも、大きな皮肉だ。

 なぜこの安倍首相の一大問題発言が、日本の政治で問題にされないのか。

 それは、いまの日本の政治が選挙一色に浮足立ったからではない。

 在日米軍に反対して来た左翼政党が機能不全になってしまったからだ。

 社会党は日米安保を容認して自滅し、いまや党が消滅しつつある。

 唯一の安保反対政党である共産党は、安保問題を棚上げして、

安保容認の民進党との選挙協力に躍起だ。

 これを要するに、今の日本の政治から、

在日米軍を日本からなくすと本気で唱える政党がなくなったということだ。

 戦後70年たって、ここまで在日米軍の存在が当たり前のようになってしまったのだ。

 私が無力感を感じるのは、まさしくこのような今の政治状況に対してである。

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