★国際批判に包囲されつつある慰安婦問題「日韓合意」ー(天木直人氏)

国連の潘基文事務総長がニューヨークの国連本部で元慰安婦らと面会したという。

 そして日韓合意に理解を求めたという。

 このニュースが流された時、

私はてっきり潘基文事務総長が米国や韓国政府の代弁者となって

元慰安婦らを説得するために動いたのではないかと思った。

 実際のところNHKも大手紙もそのように報じていた。

 ところが、きょう3月13日の産経新聞を読んで、私の考えが間違っていた事を知った。

 すなわち産経新聞はこう教えてくれている。

 日韓合意を認めず、その無効を訴える動きが、米国で次々と広がっていると。

 潘基文事務総長が元慰安婦らに会ったのも、その動きの一環だったのだ。

 すなわち潘基文事務総長が彼らを呼んで説得しようとしたのではなく、

彼らが潘基文事務総長を訪れて、日韓合意を認めてはならないと訴えたのだ。

 そう思って、あらためてその記事を読み返して分かった。

 確かに潘基文事務総長は昨年末の日韓合意発表後、すかさずこの合意を歓迎する声明を出した。

 そして、今度の元慰安婦らとの会談でも、日韓合意が誠実に履行されるよう望むと述べている。

 しかし、それだけではない。

 むしろ、元慰安婦らに対し弁解していることに重点が置かれている。

 すなわち、潘基文事務総長は、

「(元慰安婦らが)受けた苦しみや痛みに同情する。被害者の声に耳を傾けるのが重要だ」と述べ、

「包括的な解決に向けて関係者が対話を続けることを求めている」と述べたという。

 そして、この面会を報じる聯合ニュースは、潘氏は「誤解があった」と釈明し、

「(日韓合意に関する自分の声明は)両国の解決への努力を歓迎したもので、

合意内容を歓迎したものではないとの趣旨だった」と語ったと報じているという。

 おりから国連のゼイド人権高等弁務官は

「元慰安婦自身から疑問の声が出ていることは非常に重大だ」と批判し、

国連の専門家グループも慰安婦問題について声明を発表し、

「元慰安婦が長く待ち望んでいる謝罪はまだこれからだ」と日韓合意に懸念を示したという(3月13日毎日)。

 それにしても滑稽なのは日本政府の対応だ。

 菅官房長官は極めて遺憾であり日本政府として抗議すると強く反発している。

 しかし、日韓合意は日米韓の合作である。

 だからその反論も日米韓三カ国が一緒になって行うのが筋である。

 それなのに、ひとり日本だけが突出して反論し、それがさらなる対日批判につながっている。

 どこまでいっても損な役回りをさせられている、ピント外れの外交である。

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