★文民統制がかなぐり捨てられた2016年の「3・11」ー(天木直人氏)

どこもかしこも、追悼一色の3・11に関する報道であるが、その中でも、見過ごせない重要な報道はある。

 きょう3月12日の下野新聞が一段の小さな記事で教えてくれた。

 防衛省は11日発表した、と。

 すなわち、これまで背広組防衛官僚が中心の「内局」が担っていた権限の一部を、

制服組自衛官が中心の統合幕僚監部に移譲した、と。

 これはとんでもない発表だ。

 戦前の軍部の暴走を防ぐために、

戦後の国防の基本とされて来た「文民統制」を、完全に放棄することになるからだ。

 報道によれば、今月に施行される安保法関連法案に基づいて実施されるものである、

と当然のように書かれているが、どの安保関連法案の、

どの部分にそのような事が明記されているというのか。

 そんな事が書かれているはずがない。

 そんな事が書かれている法案があれば、国会審議の過程で大問題になっているはずだ。

 少なくとも私にはそんな議論が行われたという記憶はない。

 唯一私の記憶にあるのが2月23日の東京新聞の社説である。

 すなわち、その社説では、

防衛省内で自衛官を中心とする統合幕僚監部が権限の大幅移譲を求めている動きがあるとし、

「実力組織の性急な権限拡大は文民統制を危うくし、自衛隊への国民の信頼を損ねることにならないか」

と警鐘を鳴らしている。

 それに対し、すかさず河野克俊統合幕僚長が2月25日の記者会見で「権限よこせではない」と

次のように反論している。

 「防衛省改革に伴い、作戦計画策定に関わって来た内局運用企画局が廃止された・・・

(だから)運用企画局が従来やっていたことを誰かがやらなければいけない。

その切り分けを内局でするのか、統幕でするのかと言う話だ・・・

最終的に何がベストかという落としどころを見つけて、結論を出す・・・

基本的な方針を定めた大臣指針の決定や、大臣に承認を求める・・・」と。(2月26日東京新聞)

 このような重要な発言が大臣から発せられることなく、

そして防衛事務次官という内局のトップからでもなく、自衛隊のトップである統合幕僚長から発せられたのだ。

 防衛大臣に一任され、そして防衛大臣が2016年3月11日に決めた。

 文民から制服へ作戦計画策定を移譲すると。

 我が国の国防政策の最重要の決定が、公開議論のないままに、

防衛省内の力関係で決まり、そして発表された。

 とんでもない事である。

 いまからでも遅くない。

 護憲政党や護憲政治家は、この文民統制をかなぐり捨てる暴挙を国会で徹底追及しなければいけない。

 それが出来ないようでは護憲を名乗る資格はない。

 おそらく、国会は選挙がらみの政局に明け暮れてまともな議論がなされないままやり過ごされるだろう。

 憲法9条はこうしてなし崩し的に捨てられようとしている。

 耐えがたき現実である。

 耐えがたき護憲政党、政治家の体たらくである。

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