★日本を売り渡すに等しいTPP参加強行-(植草一秀氏)

主権者が主権者としての権利を行使できる最大の機会は選挙である。

選挙権を行使することによって、主権者は主権者が望む政治を実現することができる。

それでは、主権者は選挙に際して、何を基軸にして判断するべきか。

答えは明らかだ。

主権者は「政策公約」を基軸にして判断するべきである。

主権者に影響を与えるのは、

政策

だからだ。

政党

ではない。

どの政党が政権を担うのかはあまり意味がない。

どの政策が実行されるのかに意味がある。

したがって、選挙の際に示される

政策公約

が何よりも重要になる。

ただ、そのときに、ひとつ極めて重要な前提条件がある。

それは、

政策公約が遵守されることだ。

政党や議員候補者は選挙に際して政策公約を明示する。

公約を明示することは極めて重要だ。

しかし、より重要なことは、明示した公約を遵守することだ。

この前提条件が成り立って、初めて主権者は、

選挙の際に明示される政策公約を吟味して投票することができる。

主権者が棄権せずに必ず投票に行く。

主権者の選択で樹立された政権は、明示した公約を遵守する。

このことによって、国民主権の政治、主権者が選択する政治が実現する。

ところが現実はどうか。

選挙の際の公約が守られない。

公約詐欺が横行している。

こうなると民主主義は機能しなくなる。

主権者は選挙で政策を吟味して投票しても、政党や政治家が公約詐欺を行うなら、

選挙に行く意味を感じられなくなる。

そのために投票率の著しい低下が生じているのだ。

そして、利権の維持拡大だけを目指す政権勢力は、

選挙の際に組織動員をかけて、選挙を支配してしまう。

その結果として、主権者の4分の1の支持しか得ていない与党勢力が、

独裁政治的な手法で権力を濫用してしまう。

主権者の政治に対する期待、希望を根底から破壊した主犯は、菅直人氏と野田佳彦氏である。

2009年に樹立された民主党を軸とする政権は、消費税増税を4年間は封印することを公約に掲げた。

消費税増税を検討する前に、シロアリ退治が必要であると訴えたのである。

「シロアリを退治しないで消費税を増税するのはおかしい」

と絶叫した人物がいた。

それが野田佳彦氏である。

http://goo.gl/2a2EVz

http://www.youtube.com/watch?v=y-oG4PEPeGo

その野田佳彦氏が消費税増税を強行決定した。

これが日本政治が崩壊した主因であったと言っても過言でない。

そして、安倍政権は「TPP断固反対!」のポスターを貼り巡らせて総選挙を戦っておきながら、

TPP参加に突き進んでいる。

TPPは条約の一種であるから、ひとたびTPPに参加してしまうと、足抜けすることが極めて困難になる。

日本の主権者に想像を絶する災厄をもたらすことが確実と言えるTPPに

日本が参加することを防がねばならない。

2月22日(月)にTPP違憲訴訟の第3回口頭弁論が東京地方裁判所で開かれる。

午後1時半から東京地裁正門付近で門前集会が開かれる。

法廷は午後2時半に開廷される。

http://goo.gl/g60WdA

1人でも多くの主権者が参集して、TPP阻止の主権者意思を表示する必要がある。

2012年12月の総選挙に際して、安倍晋三自民党は6項目の公約を明示した。

http://goo.gl/Hk4Alg

「わが党は、TPP交渉参加の判断基準を明確に示します。

TPP交渉参加の判断基準

1 政府が、「聖域なき関税撤廃」を前提にする限り、交渉参加に反対する。

2 自由貿易の理念に反する自動車等の工業製品の数値目標は受け入れない。

3 国民皆保険制度を守る。

4 食の安全安心の基準を守る。

5 国の主権を損なうようなISD条項は合意しない。

6 政府調達・金融サービス等は、わが国の特性を踏まえる。」

選挙の際に明示した公約を、政権を樹立した与党が遵守しなければ、議会制民主主義は機能しない。

詐欺政治=ペテン政治に転落する。

菅民主党・野田民主党がペテン政治の先鞭をつけた。

この勢力に安倍政治を批判する資格はないと言える。

しかし、この状況が国民を不幸に陥れているのだ。

安倍晋三自民党は選挙の際に明示したTPPに関する6項目の公約を遵守したのか。

6項目の公約の1番目が関税撤廃に聖域を設けることだった。

コメ、麦、肉、乳製品、砂糖

を守ることが約束された。

これを「5品目」という。

自民党の公約は6項目だった。

ところが、いつからか、「6項目の公約」が「5項目の公約」にすり替えらえた。

「5品目」が「5項目」と言い換えられ、「5品目」だけが公約であるかのような説明が行われるようになった。

この「5品目」についても、関税区分の586品目のうち、

約3割にあたる174品目で関税が撤廃されることになった。

牛豚肉では約7割が関税撤廃になる。

農産物834品目全体では、約400品目が関税撤廃される。

安倍首相は「聖域を守った」と発言するが、

オリンピックを招致するために、「フクシマはアンダーコントロール」と述べたのと同じだ。

TPPでバラ色の世界が広がるかのような話が流布されているが、

TPPが利益を与えるのはグローバル強欲巨大資本だけである。

第2次大戦が終結したときに旧満州でソ連軍の捕虜にされた日本人は、

国に帰ることができると信じて列車に乗った。

ところが、到着したのはシベリアの抑留施設だった。

TPPはまさにシベリア行きの片道切符なのである。

6項目の公約に

「国の主権を損なうようなISD条項は合意しない」

というものがある。

ISDS条項は、国の主権を奪うものである。

先進国に適用する条項ではない。

日本のことを日本で決めることができなくなる。

紛争処理センターでは、投資に損害を与えたのかどうかだけが検討される。

国民の幸福を守ることなど考慮されないのである。

憲法が保障する幸福追求権さえ侵害されることになる。

したがって、もしISDS条項がTPPに盛り込まれるなら、日本はTPPに参加できない。

これが安倍自民党が国民に明示した公約の意味だ。

しかし、安倍政権はISDS条項が盛り込まれているTPPへの参加を強行しようとしている。

TPPが発行するのかどうかのキャスティングボートを握っているのは米国だ。

その米国では、TPP批准審議が大統領選以降にずれ込むと見られている。

したがって、日本が拙速に批准する理由は皆無だ。

また、安倍政権は今次通常国会にTPP対策を盛り込んだ予算を提出しているが、

TPPの影響評価も行っていない段階で、対策を決定すること自体が本末転倒である。

夏の参院選に向けて、選挙買収資金をばらまくことだけが目的になっている。

残念ながら、この国の政治はまさに後進国の政治そのものに堕してしまっている。

既存の政治勢力を一掃するような、本当の改革が求められている。

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