★北朝鮮への日本独自の制裁措置はミサイル開発、核開発の抑止に何の効果もない。
ではなぜするか。
国民に北の脅威を高め、毅然と対応しているとのイメージ与える、国内政治向け行動-(孫崎享氏)

A事実関係(時事ドットコム)

対北朝鮮で独自制裁決定=船舶入港・送金規制強化-政府

政府は10日夕、国家安全保障会議(NSC)を首相官邸で開き、

北朝鮮に対する日本独自の制裁措置を決定した。

再入国禁止の対象を核・ミサイル技術者に拡大したほか、

全ての北朝鮮籍船舶の入港禁止などが柱。

核実験や長距離弾道ミサイル発射を強行した北朝鮮に対し、毅然(きぜん)とした姿勢を示し、

国連安全保障理事会での制裁決議採択に向けた議論を加速させる狙いがある。

政府は速やかに閣議決定し、発動する。

安倍晋三首相は記者団に、

「北朝鮮に対し断固たる制裁措置を決定した。拉致・核・ミサイル問題解決のため

国際社会とより緊密に連携する」と述べ、米韓などと協調して圧力を強める考えを示した。

政府は、北朝鮮の動向をにらみ、必要に応じて、さらなる制裁措置も検討する。

北朝鮮の核実験と長距離弾道ミサイル発射を受け、

政府が10日決定した独自制裁の主な内容は次の通り。

 【人的往来規制】

(1)北朝鮮籍者の入国の原則禁止

(2)在日北朝鮮当局職員およびその活動を補佐する立場にある人の北朝鮮を渡航先とした再入国の原則禁止

(3)日本から北朝鮮への渡航自粛要請

(4)国家公務員の北朝鮮渡航の原則見合わせ

(5)北朝鮮籍船舶の乗員らの上陸の原則禁止

(6)在日外国人の核・ミサイル技術者の北朝鮮を渡航先とした再入国の禁止

などの措置を実施する。

 【資金移動規制】

北朝鮮への現金持ち出しの届け出義務を100万円超から10万円超に引き下げるとともに、

人道目的かつ10万円以下の場合を除く北朝鮮向け送金を原則禁止する。

 【船舶入港禁止】

人道目的を含む全ての北朝鮮籍船舶と、北朝鮮に寄港した第三国籍船舶の入港を禁止する。

 【資産凍結】資産凍結の対象団体・個人を拡大する。

B:評価

・制裁措置をとるのは、その行動によって、相手国が行っている一定行動を阻止するのが目的だ。

 しかし、今次、日本の「独自制裁措置」は北朝鮮の核開発、

ミサイル開発を止めるための実行力はゼロに等しい。

・したがって今次制裁行動は北朝鮮に向けてのものではない。

 北朝鮮の脅威をあおり、これに毅然とした態度を取るとの印象を国民に与えることを狙った

国内宣伝活動であるとの認識がなによりも必要だ。

・今回のミサイル実験は長距離弾道ミサイル実験で、対象は米国、日本と関係のない実験である。

対象となる米国がどれだけ騒いでいるか。

この実験で実体的に米国に脅威を増したという騒ぎは米国にほとんどない。

・日本に関しては中距離弾道ミサイル、ノドンが200発―300発実戦配備されている。脅威は既に存在する。

・北朝鮮に対して何らかの影響を与えるとすれば、それは米国、中国などがいかなる対応を取るかであって、

日本が国際協調を超えて制裁措置を取ることによって、北朝鮮の軍事活動を抑制できる可能性はない。

・意味のない行動をとる目的は一つ、北朝鮮の脅威をあおり、毅然と対応しているというイメージを

国民に与えることにある。

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