【重要ー拡散希望】
★まるで選挙演説のごとき施政方針演説に安倍総理の窮状を感じるー(田中良紹氏)

まるで選挙演説のような施政方針演説を聞かされた。

施政方針演説とは通常国会の冒頭で内閣総理大臣が今年の政府の基本方針を示すものである。

現在の日本が抱える課題を列挙し、それぞれに政府がどう対応するかを明らかにする。

ところが今年の安倍総理の施政方針はのっけから野党批判で始まった。

徳川幕府で勝海舟のライバルであった小栗忠順の言葉を引用しながら、

「批判だけに明け暮れ、対案を示さず、あとは『どうにかなる』。

そういう態度は国民に対して誠に無責任だ」と野党批判を行ったのである。これにフーテンは唖然とした。

なぜならどこの国の野党も議会での仕事は政府を批判する事で対案を示す事ではないからである。

それを安倍総理はご存じないらしい。

安倍総理がしきりにすり寄る米国でも、議会の役割は政府を追及する事で、

こちらでは野党だけでなく与党の議員も追及する。

そして与党も野党も政権に対し対案を示す事などしない。

納税者である国民を代表し政府のおかしな所を追及するだけである。

国民から預かった税金を政府が間違った方向に使わないよう監視の目を光らせるのが議会だ

という民主主義の根本原理を、安倍総理は知らないのである。

野党が対案を示すのは選挙の時で十分だ。

選挙では政府与党の政策に対峙する政策を野党は打ち出しそれで国民に信を問う。

それが民主主義の原理である。

繰り返すが議会で政府を追及するのにいちいち対案を出さなければならない民主主義国など世界中ない。

また安倍総理が引用した小栗忠順の「どうにかなる」は幕府に向けた批判である。

「どうにかなる」で幕府は倒れたが、それで日本国が滅亡した訳ではない。

むしろ日本は旧体制が倒れて新時代を迎えた。

従って安倍総理が小栗の言葉を引用するなら政権与党内部に向けて使うべきである。

野党に向けて使う意味が分からない。

幕府に対立した尊王攘夷の討幕派は現在の野党に当たるが、

幕府を批判するだけで対案など出さなかった。

だから幕府が倒れた後の日本は大混乱で新体制が整うまで時間がかかった。

現代の日本人はそれを良しと考えているのではないか。

野党は批判だけして政権を倒す。幕末維新の教訓はそれである。

のっけから唖然とさせられた安倍総理の施政方針演説は 

その後も自らの実績を過大評価する一方で野党批判に終始した。

これは施政方針演説ではなく選挙演説である。

つまり安倍総理の頭は夏の参議院選挙で一杯なのである。

それは危機感を抱いている証拠でもある。選挙が怖いのだ。

もし野党の選挙協力が実現したら・・・。もしアベノミクスの破たんに国民が気付いたら・・・。

もし去年の安保法の記憶が国民に甦ったら・・・。

そして主要閣僚の甘利大臣がスキャンダルの痛撃を受け、

事と次第では政権崩壊の引き金になる。

官邸主導で強行した軽減税率や憲法改正のシナリオに自民党内から冷めた視線も感じられる。

安倍総理が「対案」を強調するのは野党勢力を分断したいからだ。

野党各党の政策には違いがあり、野党が「対案」に乗ってくればバラバラになるのは必至である。

だから「対案」を強調する。従って野党は「対案」にこだわるべきでない。

せっかく安倍総理が小栗忠順を引用したのだから、

討幕の一点で薩長土肥が協力したように政策の違いなど棚上げして幕府を倒せば良い。

それが政治というものである。

憲法改正を打ち出したのも野党分断が目的である。

憲法改正派と護憲派の間に楔を打ち込みたい。

しかしフーテンが正月のブログで書いたように、

米国の言うがまま解釈改憲を行った政権に憲法改正をやる資格などない。

やればかつての自民党が主張した自主憲法制定とは真逆の対米従属をさらに強める憲法が出来上がる。

その証拠に安倍総理は9条改正に手を付けようとしない。

米国がそれを望むはずはないからだ。だから緊急事態条項の導入でお茶を濁そうとする。

しかし安倍側近と言われる稲田政調会長が9条2項の改正を主張し始めた。

これはかつての自民党の主張に沿ったもので対米自立を意味する。

むしろ野党は憲法改正で自民党内の分断を図る事に注力すべきである。

受け身になって分断工作されるより対米自立の方向に議論を誘導し、

自衛隊を専守防衛の軍隊にして欺瞞に満ちた現行憲法をやめ、自らの手で平和憲法を作り直せばよい。

そして今年はアベノミクスのごまかしがきかなくなる年だとフーテンは考えている。

異次元緩和を行っても輸出は増えず、GDPも民主党政権時代の半分で、

企業が儲かっていると言っても円安の為替効果で数字が膨らんでいるだけなのだ。

生産量が増えている訳ではない。だから儲けが人件費や設備投資に回らない。

異次元緩和を奨励した米国の経済学者ポール・クルーグマンは

昨年秋「異次元緩和は失敗」とのブログを発表した。

日本の潜在成長率の低さは生産年齢人口の減少に原因があると言うのである。

2%のインフレ目標を達成しても経済は良くならず、

目標をそれ以上に引き上げなければならないが、それは財政危機を招く恐れがあると言う。

つまり我々は将来世代に大いなるツケを回す可能性があるのである。

目の前の人参だけを見て走らされてきた国民がそろそろ気がついても良いところまで来た

とフーテンは思っている。自民党は民主党政権の「子ども手当」を「バラマキ」と批判したが、

自分たちは選挙目当てに高齢者に3600億円を超える「バラマキ」を実施する。

どちらが日本経済の最大問題である生産年齢人口の減少を食い止める力があるか。考えれば分かるだろう。

米国は「世界の警察官」をやめるというが、これから自らは司令塔の役割に徹し、

現場で戦闘する要員を他国の軍隊に委ねようということだ。

日本の自衛隊もその要員になる事が昨年の安保法成立で可能になった。

そして世界は米国の「一極支配」から「多極化」へと舵を切る。

中国の習近平国家主席は断交したばかりのサウジとイランを訪れ、

国際外交での影響力を示そうとしたが、

中国に対抗する事で米国の歓心を買おうとしてきた安倍総理は、

施政方針演説を行ったその夜、ロシアのプーチン大統領に電話をしてロシアの地方都市訪問を申し入れた。

これがまたフーテンには「すり寄り外交」に見え、

相手に足元を見られることにならないかと懸念を感じる。

アベノミクスにほころびが見え始めたので国民の目を「外交」向けさせようと、

安倍総理は5月の伊勢志摩サミットをしきりに宣伝するが、

ロシアも中国も参加しないサミットにどれほどのニュースバリューがあるかと言えばない。

しかしそれにすがりつくしかないのが今年の安倍総理である。

施政方針演説にはそうした安倍総理の追い詰められた窮状を感じさせられてしまうフーテンである。

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