★民維基軸の野党再編VS政策基軸の野党再編ー(植草一秀氏)

安倍首相が1月20日からスイスのダボスで開催されるワールドフォーラムへの出席を断念した。

1月4日付本ブログ記事

「国会さぼりダボスでTPP批准表明など愚の骨頂」

http://uekusak.cocolog-nifty.com/blog/2016/01/tpp-9e1e.html

の指摘が、あるいは影響したのかも知れない。

ワールドフォーラム=世界経済フォーラムは、強欲巨大資本の年次集会である。

新自由主義=グローバリズムの年次総会なのである。

ここに、のこのこ出かけて行って、

「TPPを早期に批准します」

と宣誓することほど馬鹿げたことはない。

TPPは日本の主権者に利益をもたらすものではなく、

世界の強欲巨大資本の利益を極大化させるための枠組みだからだ。

日本は、安倍晋三自民党が

「国の主権を損なうようなISD条項には合意しない」

と公約に明示しているから、TPPに参加できない。

ISD条項が盛り込まれているTPPに参加することは、明白な公約違反になるからだ。

安倍首相がダボス会議への参加を見送ったのは、

菅義偉 対 竹中平蔵

の図式で、菅義偉氏が押し切ったことを意味する。

竹中平蔵氏は、強欲巨大資本の命を受けて、

ダボス会議での安倍晋三氏によるTPP批准宣誓を画策したが、失敗したと見られる。

TPPの内容は概略部分ですら、日本語版が政府から公表されていない。

日本が交渉に参加した際、交渉段階から日本が関与することが必要との大義名分が強調された。

そうであるなら、TPP合意文書は、日本語版も用意されるべきである。

ところが、TPP合意文書は英語、フランス語、スペイン語だけ。

日本は交渉参加国のなかで2番目に大きな経済規模を保持する。

その日本が、合意文書正文として、日本語を用意することを求めなかったのだ。

初めから、日本の対応は、米国の属国、米国の植民地扱いなのである。

日本国憲法が米国主導で編纂されたから問題だというのなら、

TPPの文書正文のひとつに日本語を入れさせることなど、常識以前のことである。

菅義偉氏は、さすがに、国会をさぼって、スイスにまで外遊し、

TPP批准を宣言してくるのは行き過ぎであると判断したのだろう。

すべては、今年予定されている選挙への配慮である。

参議院選挙は恐らく7月10日に実施されるだろう。

衆議院総選挙は、7月10日の衆参ダブルの可能性があるが、

公明党がダブルを嫌っており、秋以降に先送りすると考えられる。

3度目の12月総選挙の可能性が高い。

その場合には、消費税再増税の再先送りを決定すると考えられる。

安倍政権は、選挙を実施する際に、必ず株価を吊り上げる。

そして、安倍政権は選挙になると、必ず株価を吊り上げる。

2013年7月参院選では、5月22日から6月13日にかけて株価が急落したが、

6月13日から7月18日にかけて、日経平均株価が2363円も吊り上げられた。

2014年12月総選挙では、9月25日から10月17日にかけて株価が急落したが、

10月17日から12月8日にかけて、日経平均株価が3403円も吊り上げられた。

選挙に向けて、人為的な株価吊り上げ政策が実施される可能性が高い。

しかし、2016年の場合には、すでに状況が異なっている。

年初から株価が大幅下落している。

中国要因、中東要因、北朝鮮要因など、いろいろあるが、

最大の要因は、安倍政権の経済政策スタンスが、財務省主導の緊縮路線に転じていることが大きい。

安倍政権は財務省主導の超緊縮財政政策スタンスを払拭して、

日本経済浮上に軸足を移さなければ、選挙での勝利体制を敷くことができない。

この点でも主導権を握ると見られるのが菅義偉氏である。

消費税再増税先送りを、いつ提示するのかが焦点になっている。

「安倍政治を許さない!」

と考える主権者は多いが、選挙を通じて政権を刷新する絵が描けない。

その最大の原因は、野党の中核部分に

鵺(ぬえ)のような存在

が横たわっているからである。

そもそも、この鵺(ぬえ)の存在によって、日本政治刷新の大きな流れが破壊されたのである。

民主党のなかに潜んでいた、

既得権と通じる勢力。

これが政治刷新の流れを破壊した。

2010年6月に鳩山政権が破壊され、樹立されたのが菅直人政権。

その後継政権が野田佳彦政権である。

この二つの政権は、

米国に隷従し、

官僚組織に隷従し、

大資本に隷従した

政権だった。

この変質によって、主権者が悪徳民主党に愛想を衝かして、政治刷新の流れが終焉してしまったのである。

野党共闘に盛り上がりが欠けるのは、このためである。

野党共闘問題の中核に居座ろうとしているのが、既得権勢力と通じる、自公補完勢力なのである。

参議院選挙では32の1人区がカギを握る。

だから、野党共闘を成立させなければ、自公の支配を許してしまう。

したがって、何とか野党共闘を成立させる必要がある、との理屈は分かる。

しかし、政策の方向において、

「水と油」

の関係が残る以上は、自公の退潮を実現しても、その先の課題が残る。

原発・戦争法・TPP・基地・格差

の問題で、基本的に足並みを揃えているのは

共産、生活、社民

の3勢力である。

しかし、いま、生活、社民は、極めて小さな勢力に追い込まれてしまっている。

他方、民主、維新においては、この三つの勢力よりも、むしろ自公に近い勢力が多数潜伏している。

こうした現状を踏まえると、政策が曖昧な野党の共闘を無理やり追求し続けることも難しいと考えられる。

むしろ、政策を純化させて、

共産・生活・社民を軸に、

政策でこの路線に同調できる民主・維新勢力を引き寄せることの方が、

中長期では賢明な選択であると考えられる。

衆議院の小選挙区では

自公候補

民主・維新候補

共産候補

の三つ巴の状況が全国で観察される。

このとき、民主・維新候補と共産系候補の調整が難航する場合、

主権者は、思い切って、共産系候補の積極支援を検討するべきではないかと考えられるのだ。

共産色が強まり過ぎれば、いわゆる「アレルギー反応」が生まれるかも知れない。

したがって、

共産・生活・社民プラス民主・維新の有志連合

という図式を生みだすことが重要ではないのか。

大事なのは「政策」である。

自公に近い民主・維新議員が多く誕生しても、政策の基本方針は変わらない。

現有議席では民主・維新がたしかに多いが、自公補完勢力の民主・維新を、

いまの主権者は、まったく評価していない。

政策を基軸に、党派の壁を超えて、主権者が主導する候補者一本化こそ、重要である。

そのためには、まず、立候補予定者の政策公約を公開質問状等で明らかにして、

その事実を公表することが重要である。

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