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境 玄冬 · @mor_rhiw

25th Dec 2015 from TwitLonger

遅くなりましてすみません。クリスマス当日になってしまいましたが… #束adv 12月20日分でございます。


・・・それは、まだまだ今ほどすれたオトナでなかった学生時代のこと。
卒論用に買った本を読んでいてあれっと思ったかの日このかた、思考回路にへばりついて離れない妄想があります。
もしかして、イタリア古典文学って、あの超絶品スープのダシとして、結構重要なポジション占めてるんじゃない?
「スープの骨」についてやたら詮索するのは野暮なものだけど…
かのC.S.ルイスが指輪物語を語るのにアリオストを引き合いに出した時、束教授はそれはそれは強硬に反発したらしいけど…でも、嫌いは興味の裏返しともいうし、もしかして…

 ことの始まりは、ボイアルドの’Orlando Innamorato’のこの一節でした。
39
Or con queste arme il suo patre il mandò,
Stimando che per quelle il sia invincibile,
Ed oltra a questo uno anel li donò
Di una virtù grandissima, incredibile,
Avengaché costui non lo adoprò;
Ma sua virtù facea l’omo invisibile,
Se al manco lato in bocca se portava:
Portato in dito, ogni incanto guastava.

(拙訳)
さて、これらの具足を与え父親はかれを送り出した
かくて息子は無敵になると考えて
また、想像だにできぬ効能をもつ
ひとつの指輪を重ねて与えた
結局かれが用いることはないのだが。
左の手でこれを口へ持っていけば
指輪の力によって人の姿は消え
指に在ればあらゆる呪いは破られる。
(Orlando Innamorato volume primo, pp.14-15)

 「姿を消せる魔法の指輪」というアイテムに食らいついた私。なんて安直な興味の持ち方でしょうね~(笑)
しかし、いったん気になりだすとなんでもアンテナに引っかかってしまうのか、なんとなく中つ国とのリンクを想像させる要素が、その後もごろごろ出てくることになりました。
その中の一つを今回ご紹介、もとい、萌え語りしたいと思います。

「おれの邪魔をするだと?愚か者め。生き身の人間の男にはおれの邪魔立てはできぬわ!」
その時メリーはおよそこれほど場違いなものはないと思われるものを耳にしました。デルンヘルムが声をたてて笑ったように思われたのです。その澄んだ声は鋼が鳴り響くようでした。「しかしわたしは生き身の人間の男ではない!お前が向かい合っているのは女だ。わたしはエオウィン、エオムンドの娘だ。
(中略)
しかしかの女の秘密を守っていた兜は落ち、その輝く髪が、束縛から解き放たれて、薄い金色にきらめいて両肩にこぼれ落ちていました。
『指輪物語5 王の帰還(上)』,J.R.R.トールキン,瀬田貞二 訳,評論社,1974, pp.193-194

言わずと知れた名場面。暗い戦場にぱっと黄金の光が差すドラマチックな描写になっていますね。
では、次にこちらをご覧ください。

39
E stando così tacita e sospesa,
Rugier sogionse a lei: - Franco barone,
Volentier saprebbi io, se non ti pesa,
Il nome tuo e la tua nazione. -
E la donzella, che è d’amore accesa,
Rispose ad esso con questo sermone:
- Così vedestù il cor, che tu non vedi,
Come io ti mostrarò quel che mi chiedi.

かの女が黙したままなので
ルッジェーロはさらに言った
「勇ましき殿御よ、差支えなくば
御身の名と出自、拙者も知りたい」
して恋に落ちたりしおとめ子は
この問いに答えて曰く――
「御身は心を開けど我は未だし。
なればお話し申し上げよう

40
Di Chiaramonte nacqui e di Mongrana.
Non so se sai di tal gesta niente,
Ma di Ranaldo la fama soprana
Potrebbe essere agionta a vostra gente.
A quel Ranaldo son sora germana;
E perché tu mi creda veramente,
Mostrarotti la faccia manifesta -;
E così lo elmo a sé trasse di testa.

我はキアラモンテとモングラーナの血筋の者
御身はこれらの家門を知りますまい
されど名も高きラナルドのことならば
御身らの耳にも入っているでしょう
この身はかれの同胞(はらから)の紅一点
してそのことが紛うかたなきよう
わが顔しかとお見せいたそう」
かくて乙女は兜を取った。

41
Nel trar de l’elmo si sciolse la treccia,
Che era de color d’oro allo splendore.
Avea il suo viso una delicateccia
Mescolata di ardire e de vigore;
E’ labri, il naso, e’ cigli e ogni fateccia
Parean depenti per la man de Amore,
Ma gli occhi aveano un dolce tanto vivo,
Che dir non possi, ed io non lo descrivo.

兜を脱ぐや黄金なす
巻き毛がふわりと広がった。
乙女の繊細な面差しには
血気と活力がともに在った。
口元、鼻筋、また睫毛
すべては愛神の筆に描かれたよう
またその眼の優美さは
言葉にも文字にも表せぬほど。

(Orlando Innamorato volume secondo,p.1174)

 片や敵味方、片や共に戦った戦友同士の会話ですが、どちらも「戦場のど真ん中で勇猛に戦っていた騎士が名乗りを上げて兜を取った途端に豊かな金髪と見目うるわしい乙女の素顔が現れる」という視覚効果のきいたシーンになっています。男だと思って話しかけたらあらびっくり!というのも共通ですね。
 さらに付け加えるならこの騎士-ブラダマンテという名ですが―は、武勇をもって鳴らす一族の姫君。
 偶然の一致といえばそうかもしれない。でも、もしかして…

なお、この話を大学の先生にしたところ、
「それを言うならトルクァート・タッソの『エルサレム解放』にも似たような描写があるけど」
と半分呆れ顔で言われました。
さっそく確認したところ、そこには新たな萌えポイントが!
しかし資料がてのとどくところにないので、そのあたりは追い追い語らせていただくことにしまして、短いですが今宵はこれまでに致しとうございます。

(オイ!ほんとに短いな!しかも内容薄いし。手抜きかよ)

(ぎくり。お、おあとがよろしいようで~(脱兎))

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