★庶民を踏みつけにするアベノミクスを粉砕ー(植草一秀氏)

12月6日のNHK『日曜討論』で、NHKは日本経済について

「緩やかな回復が続く日本経済」

と紹介した。

この現状認識が間違っていることを本ブログ、メルマガで指摘した。

メルマガ読者から、この番組で、甘利明経済相が

「この不況から脱出するために」

と発言し、司会の島田敏男氏が慌てて言葉をさえぎった場面があったとの指摘をいただいた。

政府は本音では、日本経済が不況にあることを認めているのだ。

この番組で、甘利経済相が、

2015年7-9月期のGDP統計が改定値でゼロになると発言して物議を醸した。

発表されていない経済データの改定値について言及したからだ。

本日発表された改定値は、年率換算でプラス1.0%の伸びになった。

正確な数値を記憶していなかったことが甘利氏に幸いしたが、数値の改定は既定路線だった。

法人企業統計で設備投資の数値が上方改定されたから、

設備投資計数が上方に変化して、成長率が上方修正されるとの見方が有力であったからだ。

GDP統計は改定されたが、日本経済が低調推移している事実には、何らの変化もない。

アベノミクスとは、メディアがはやし立てている言葉であって、一般庶民の生活には関係のない言葉である。

安倍首相は12月8日のエコノミスト懇親会に出席して、

「成長と分配の好循環で、名目国内総生産(GDP)600兆円は十分達成可能」

と述べたと報道されているが、安倍首相は、

「成長と分配の好循環」

の意味をほとんど理解できないのだと思われる。

安倍政権が掲げる

「成長」

とは、資本の利益の成長のことである。

とりわけ、大資本の利益が拡大することが「成長」なのだと理解しているのだと思われる。

資本の利益を増やす方策は、

1.人件費を削ること

2.税金を減らすこと

であり、安倍政権が「成長戦略」の名の下で推進しているのが、この二つである。

雇用のあり方について、安倍政権は、非正規労働者の比率が上昇することを後押ししている。

生涯、派遣労働で働く労働者の比率は、安倍政権が実現させた法改定で一段と上昇することになるだろう。

また、税制改定で推進していることは、

大企業の税金をどんどん軽減し、

中小零細企業の税負担を増やし、

所得のない、あるいは所得の少ない国民から税金を搾り取ること

である。

この結果、分配の格差は、拡大の一途をたどっている。

富める者を益々豊かにして、貧しい者をさらに虐げる。

これが安倍政権の成長戦略の基本である。

その政策のどこに、

「成長と分配の好循環」

が存在するというのか。

このようなでたらめを公言してはばからないこところが、

安倍政権の反知性主義の面目躍如

といったことになるのだろう。

トリクルダウン

などという言葉も、羞恥心があれば使えぬ言葉だが、安倍政権は平気で使ってしまう。

財界人は、大資本に対しては、徹底的な優遇、

課税軽減を振る舞う安倍政権を大歓迎するだろうが、

そのような政策推進が、やがては、経済全体を根絶やしにしてしまうことを考えないのだろうか。

安倍首相の周辺は、安倍首相を含めて、まさに、

「今だけ、金だけ、自分だけ」

の人々の集まりなのである。

一般国民が、現実を直視し、現実を精査して、

アベノミクスの根本的な誤りを指摘し、これを排斥してゆかなくてはならない。

ここに気付かない限り、日本経済の復活はあり得ない。

すべてが逆なのだ。

社会の1%を優遇するのではなく、社会の1%を抑圧して、

社会の99%を優遇することが求められている。

雇用形態における非正規化の進展は、低所得に苦しむ国民の比率を圧倒的多数に向かわせている。

一生懸命働いても、年収が200万円に届かない。

あるいは、300万円に届かない。

この状況を固定化させるのが、非正規化の推進がもたらす結果なのである。

「正規雇用の拡大を求める」ことが、

改正労働者派遣法に盛り込まれたなどと政府は主張するが、

「求める」だけで、正規化を義務付けるとか、

正規化しなければペナルティーを課すなどの規定がなければ、何の意味もない。

問題は、安倍政権が、結果における平等、格差是正を推進する意思を持っているのかどうかなのだ。

答えは明白だ。

安倍政権は、格差を是正する考えなど、みじんも持ち合わせていない。

資本の利益の極大化だけを考えている。

弱い者が苦しもうが、死のうが、関係ないと考えているのである。

正確に言えば、「関係ない」などという受動的なものではなく、

「弱い者にはできるだけ早く消えてもらった方が良い」

とまで考えていると推察できるのだ。

安倍政権がこれから推進するのは、医療分野における格差の積極的な導入である。

医療を

富裕層向け医療



貧困層向け医療

の二本立てに転換するのだ。

そして、

富裕層向け医療



成長戦略の柱の一つに位置付ける。

貧困層医療は、

できるだけ縮小の方向に誘導する。

この政策を推進するうえで、強力な武器になるのがTPPだ。

TPPに参加して、外国資本によるISD条項の積極的活用を「てこ」として利用して、

日本の医療制度を根本から改変する。

米国の保険会社が狙うのは、富裕層向けの医療保険商品である。

富裕層と貧困層とでは、疾病への罹患率が異なる。

金持ちほど病気になりにくいという傾向がある。

そこで、富裕層向けの高額な民間医療保険商品を販売する。

この保険に加入できる富裕層の人々は、いざ病気になったときには、

高額な最先端の医療を受けることができるようになる。

他方、貧困層では疾病の罹患率が高い。

しかし、財務省は社会保障支出だけは、徹底的に切る方向で予算編成を進めている。

公的医療保険の支出は抑制される一方で、疾病に罹患する患者は増加する。

そうなると、公的医療保険の収支が悪化して、

保険でカバーできる医療の質が著しく低下することになる。

つまり、貧困者は、病気になっても、十分な医療を受けられなくなるのである。

政府は、こうした人々に対して、十分な医療を提供するという考えを持たない。

政府は、こうした人々は、出来るだけ早期に死亡するのが望ましいと考えているのである。

その方が、財政支出負担を節約できる。

こう考えるのである。

安倍政権のこの基本姿勢は、安倍政権が推進する税制改定の中身にはっきりと表れている。

2007年の政府税調が、

「日本の法人の税および社会保険料負担は国際比較上高くはない」

との公式見解を示したにもかかわらず、大企業に対する減税は2011年以降、加速されているのである。

その一方で、消費税だけは増税に次ぐ増税である。

このような政策を許してよいのか。

判断するのは主権者国民である。

日本の主権者国民は、権力に従順すぎる。

このような姿勢では、自分たちを守ることができない。

手遅れになる前に、現実を知り、歪んだ現実を、自分たちの手で変えてゆかねばならない。

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