★12月8日、真珠湾攻撃の日、何故真珠湾攻撃と言う馬鹿な選択をしたか
(『日米開戦の正体』から)、
嘘と詭弁で崩壊の道は今の安倍政権と何と類似していることか。ー(孫崎享氏)

1真珠湾攻撃は日本歴史の最大の愚挙です。

 ジェフリー・レコード著『アメリカはいかにして日本を追い詰めたか』という本があります。

米国陸軍戦略研究所(U.S.Army War Collage, Strategic Studies Institute)内のレポートの訳です。

冒頭、米国陸軍戦略研究所所長グラス・ラブレースの言葉が記載されています。

・日本が1941年に下した米国攻撃の決断は全く合理性に欠け、

ほとんど自殺行為であったと考えられる。

アメリカは日本の10倍の工業生産力を持っていた。

もちろん日本がアメリカ本土を攻撃することは出来るものではない。

そんな国と戦って日本は勝算があると考えたのだろうか。

太平洋方面で我が国と戦えば負けることは解り切ったことだった。

日本が我が国と戦うと決めた歴史的事実を一体どう説明したらよいであろうか。

・ディーン・アチソンは1941年には国務次官補であり経済担当をしていた。

彼は真珠湾攻撃以前につぎを語っていた。

「我が国を攻撃すれば、日本にとって破壊的な結果になることは、

少し頭を使えば、どんな日本人にでも解ることだ。」

 その通りと思います。日本の10倍の工業生産力を持った米国と戦争すれば、

「少し頭を使えば破壊的な結果になる」のです。

しかし、当時の国家の中枢の人は詭弁を使いました。

「民主主義国家の米国は永い戦争に堪えられずに途中でやめる」という詭弁で、日本を破壊に導きました。

2:1945年8月15日トルーマン大統領は対日戦における空襲の効果について調査を命じます。

 調査委員会の定員は文官300名、将校350名、下士官500名です。大変な大部隊です。

副委員長に「20世紀においてその著作が最も読まれた経済学者」と言われたガルブレイスが参加しています。

 この調査報告書は次のように記述しています。

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 開戦並びにフィリピン等に侵攻するという最終的決定は重要な地位にある

全陸海軍指揮官並びに政府要人の完全なる意見の一致と積極的な承認によって

定められたのである。実際に1941年10月までに行った次のごとき情勢判断に基づいている。

A 満州側面におけるロシアの脅威はドイツ軍のヨーロッパに於ける圧倒的勝利によって消滅した。

B 大英帝国は挽回することの出来ないほど守勢的立場にある、

C 米国およびその連合国が直ちに太平洋に展開しうる兵力、

特に空軍兵力は十分に訓練さられ且動員さられた日本軍を阻止することが困難である。

3,4か月の内に日本軍はビルマ、スマトラ、ジャワ等それから北にのびて

千島に至る線で囲まれる全地域を占領しうるであろう

D ビルマ公路を切断された支那は孤立し和平を乞うであろう

E大英帝国の援助にやっきになり、更に真珠湾攻撃により痛撃を受けた米国は

来るべき18カ月乃至2のうちには攻撃をとると十分なる兵力を動員しえない、

この期間に円周防御線を堅固に構築し、

且必要な前進飛行場並びに基地飛行場を建設することが可能となる。

Fこれら占領された強固な防御が戦争を継続する米国の決心をにぶらした反面、

日本はポーキサイト、油等を獲得し、

これらの物資を日本に輸出して加工し日本の生産並びに軍事機構を補給強化しうる

G民主主義国家としての米国の弱点は強烈に抵抗する日本の陸海軍人並びに飛行士によって

与えられる大損害並びに連合国の脱落に直面しては全面的攻勢を維持することが出来ない。

したがって米国は妥協して日本が最初に占領した地域の領有を許すであろう

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 報告書のAからGをみてどう感じられたでしょうか。

 ほとんど皆、間違っています。

 しかし、「開戦並びにフィリピン等に侵攻するという最終的決定は重要な地位にある

全陸海軍指揮官並びに政府要人の完全なる意見の一致と積極的な承認によって定められた」のです。

 では当時、AからGの結論になるのは当然のことだったのでしょうか。

 真珠湾攻撃の翌日ルーズベルト大統領は議会で対日宣戦を求める演説をしています。

「昨日、1941年12月7日という日は屈辱のもとに生きる日となるでしょう。

この日にアメリカ合衆国は日本帝国の海・空軍の意図的な攻撃に突然さらされたのです。

 合衆国はかの国と平和的な状態にありました。

そして日本の懇願のもと合衆国は、

太平洋の平和維持を目指して日本政府及び天皇と交渉中であったのです。 (省略)

 陸海軍の最高指揮官として私は、国家防衛の為あらゆる手段を取るように命令を発しました。

この措置は我々に対する攻撃がどのようなものであったかを全国民に常に思い出させることでしょう。

 この計画的な侵略を打ち負かす事にどれほど長い時間がかかろうとも、

アメリカの民はその正義の力のもと、必ずや勝利を収めるでしょう。

 私は、我々はただ自国を護るだけではなく、

このような形の危機が二度と我々を脅かす事のないようにしなければならないと

主張致します。この主張を受けての議会と国民の意志は、もとより私は承知しております。」

 ルーズベルト大統領は「打ち負かす事にどれほど長い時間がかかろうとも、

アメリカの民はその正義の力のもと、必ずや勝利を収めるでしょう」と言っています。

「このような形の危機が二度と我々を脅かす事のないようにしなければならない」と言っています。

 こうした ルーズベルト大統領の発言は決して予想外のものではありません。

当時の米国指導者層の発言をみれば、当然行う発言です。

 1941年8月ルーズベルト大統領とチャーチル首相が発表した太平洋憲章では、

「“ナチ”の暴虐の最終的破壞の後」という文言が入っています。

これはナチだけではなくて、3国同盟の日本も入ります。

しかし日本の評価は「民主主義国家としての米国の弱点は強烈に抵抗する

日本の陸海軍人並びに飛行士によって与えられる大損害並びに連合国の脱落に直面しては

全面的攻勢を維持することが出来ない。

したがって米国は妥協して日本が最初に占領した地域の領有を許すであろうこと」と

180度逆のことを述べています。

嘘なのです。

当時でも嘘であることが解るのです。

まさに「嘘だ」と解ることをあたかも事実のようにして推し進める、

この体質が真珠湾攻撃に突き進んだ一番の問題と思います。

3:嘘と詭弁まさに今の姿。日米開戦と現代

① 指導者が嘘や詭弁の説明をする、

② この嘘や詭弁で、本来は国民が望まない方向に政策を誘導する、

③ マスコミが調べれば嘘や詭弁であることが解るのにそれを検証せず、嘘、詭弁の拡散

④ 国民はこの嘘や詭弁を信じ(信ずるふりをし)政策を容認する。

⑤反対者を弾圧、排除

実はその現象は、正に、今の日本です。

集団的自衛権、TPP,、原発再稼働、消費税等に使っている論理と同じなのです。

一番重要な論点を避ける。歪める。

そしてありえない事実や、さして重要でない側面を強調し、

本来執るべきでない政策を進める、それが今日の日本で強烈に復活しているのです。

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