★今一度問う、消費税を上げて、法人税を下げる政策を日本は今取るべきか。ー(孫崎享氏)

A:事実関係

 「政府は、企業のもうけにかかる国と地方をあわせた法人実効税率について、

現在の32・11%を、2016年度に29・97%までは引き下げる見通しとなった。

企業の規模などに応じた「外形標準課税」を強化し、

20%台にする時期を当初の想定より1年早める。

企業の国際競争力強化につなげるねらいがあるが、一部の赤字企業は増税につながる。

 法人減税は安倍政権の経済政策「アベノミクス」の柱の一つ。

政権が発足した12年度(37・00%)から4年で、7%幅を超える減税を進めることになる。

 大企業が支払う法人事業税に占める外形標準課税の割合は

いまは8分の3だが、これを16年度に8分の5まで拡大することなどで、

新たに財源を捻出する。黒字企業の負担は減るが、赤字企業にとっては負担増になるため、

経済界の一部には慎重論がある。」(28日朝日夕刊)

B:評価

・ 政府が法人税を下げる場合、行うことは2つの可能性がある。

 一つは政府の支出を抑制すること、

 今一つは別の財源を探す事。

 安倍政権は防衛費を増やし、海外にはお金をばらまきと支出抑制には真剣に対処していない。

 そうすれば別の財源を探すしかない。それが消費税である。

・過去、消費税の導入、消費税のアップとほぼ同じ時期におきているのは法人税下げである。

・2012年衆議院選挙での自民党公約を見ていただきたい。

Action4暮らしの再生・「消費税は全額社会保障に使います」

 これは嘘である。

・軽減税率を導入すれば、国民は負担増から免除されるような印象を与えるがそんなことはない。

消費税が2%増になることは、我々の消費する力が2%減になることだ。

自民党政権になって、消費税を5%上げることとなる。我々の生活が5%苦しくなることを意味する。

・今一つは国の経済に与える影響である。

内閣府が11月16日発表した2015年7~9月期の国内総生産(GDP)速報値は、

物価変動の影響を除く実質で前期比0.2%減、年率換算では0.8%減だった。

 国の需要は消費、設備投資、輸出、国の財政出動で成り立っているが、

日本の場合、消費が極めて重要である。

 消費税導入によってこの部分は実質マイナスになる。

 経済の減速に加速がかかる。

 他方企業側は、減税された分を使うかと言うと必ずしもそうならない。

一番多いのはまず内部留保に回す。

内部留保分は海外の企業買収や投資に使われる場合がある。

国内で使われるとは限らない。明らかに国内需要が減ずる。

・結局、消費税を上げて、法人税を下げる政策は国民の視点にたっても、
国家の視点にたってもマイナスである。

利益を得るのは、大企業とその株主である。今日、大企業の株は相当部分外国が保有している。

本当にこんな政策を国民が支持するのか。軽減税率を導入すればいいという問題ではない。

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