★「愚かな国民」が「愚かな政府」を作ることを忘れるなー(植草一秀氏)

メルマガ版「植草一秀の『知られざる真実』」

第1099号タイトルは

「愚かな権力者が国民の未来を破壊し尽くす」

だった。

京都大学原子炉実験所助教の小出裕章氏が本年2月27日に行った最終講演

について記述した。

小出氏が勤務していた京都大学原子炉実験所は大阪府の熊取町にある。

この実験所の6人の研究者が反原発の研究活動を継続してきた。

彼らは「熊取6人衆」と呼ばれた。

2008年、大阪の毎日放送が

『なぜ警告を続けるのか?京大原子炉実験所-異端の研究者たち』

と題したドキュメンタリー番組を放送した。

「熊取6人衆」を取り上げた番組だった。

放送の翌日、関西電力が毎日放送に

「とんでもない番組だ。毎日放送は原子力に関して偏向している」

と抗議したという。

福島原発事故が発生する3年前のことだ。

熊取6人衆は、世の中の大勢に逆らって原発の危険性を訴え、原発に抵抗し続けていた。

どちらの主張が正しかったのかは、その後の歴史の事実が明白にしている。

福島原発事故が増えて、小出裕章氏をゲストに招く番組は増えた。

しかし、それらの番組は、いまはすべてなくなってしまったという。

安倍晋三氏は2013年9月7日にアルゼンチンのブエノスアイレスで開かれたIOC総会で次のように述べた。

「フクシマについて、お案じの向きには、私から保証をいたします。
状況は、統御されています。東京には、いかなる悪影響にしろ、これまで及ぼしたことはなく、
今後とも、及ぼすことはありません」

「汚染水の影響は、福島第一原発の港湾内の0.3平方キロメートルの範囲内で完全にブロックされています」

この発言はウソである。

メディアは、このウソを暴かない。

逆に、この発言がウソだと述べる者を排除する。

国全体が狂気に包まれている。

原発の危険性を訴え、原発を廃止することを求めてきた小出氏に発言の機会は提供されず、

原発事故などなかったかのように、原発の再稼働が強行されている。

この現実に対して、主権者は、見て見ぬふりをするべきでない。

小出裕章氏が新著を出版された。

『原発と戦争を推し進める愚かな国、日本』

http://goo.gl/3RoZOP

である。

冒頭に記したメルマガ記事タイトルとも相通じる部分がある。

たしかに、愚かな権力者がいま、原発と戦争を推し進めている。

そのために、国民の未来を破壊し尽くされようとしている。

しかし、愚かであるのは、本当に権力者だけなのか。

愚かな権力者を生み出しているのが、国民自身であることを忘れてはならない。

小出氏は新著のなかでこう記している。

「「愚かな国民には愚かな政府」とはよく言われることです。

たとえ民主主義を謳う国家であっても、国民が無関心で考えが浅く、

政府をしっかりと監視できていない場合は、政府が暴走してしまうのです。

残念なことに今の日本は、まさに政府のやりたい放題になっているのです」

小出氏はさらにこう述べる。

「日本の先の戦争の時もそうでした。

だんだん戦争にのめり込んでいって、

日清戦争、日露戦争、第一次世界大戦、第二次世界大戦と、

とにかく戦争は正しいことだという方向に国民が流されてしまいました。

そして徹底的に敗北した時に、

「ああ、間違えていました。私たちはだまされていたんです」

と多くの人たちが言ったわけですけれども、冗談は言わないでください、と私は言いたい。

あれだけ膨大な犠牲者を出して、取り返しのつかない事態を招いておいて、

私は悪くないと言える人の精神を私は疑います」

「愚かな国」を作りだす張本人は「愚かな国民」であることを、私たちは見落としてならないのである。

小出裕章氏も、マルティン・ニーメラー牧師の言葉を引用する。

ドイツのルター派牧師であり、

反ナチ運動組織告白教会の指導者マルティン・ニーメラーの言葉に由来する

「彼らが最初共産主義者を攻撃したとき」

と題する詩がよく知られている。

ニーメラー財団が提示する詩の邦訳は次のものだ(Wikipedia)。

ナチスが最初共産主義者を攻撃したとき、私は声をあげなかった
私は共産主義者ではなかったから

社会民主主義者が牢獄に入れられたとき、私は声をあげなかった
私は社会民主主義ではなかったから

彼らが労働組合員たちを攻撃したとき、私は声をあげなかった
私は労働組合員ではなかったから

そして、彼らが私を攻撃したとき
私のために声をあげる者は、誰一人残っていなかった」

不正があるとき、間違った現実があるとき、

人は行動しなければならないのだ。

声を上げ、行動しなければ、現実を変えることはできない。

小出氏はこう述べる。

「日本人は歴史的にずっとそうですが、少数派の人を、

何か間違ったことをしているかのような目で見る傾向があります。

お上意識がものすごく強いですし、長いものには巻かれろと教わってきた。

できれば少数派にはなりたくない、多数派にいたいと、多分ほとんどの人は思っていると思います。

でも、声を上げないということは、それを認めているということなのです。

それがどんなに愚かな政策でも、国民の声が上がらなければ政府はそのまま動いていってしまいます。

つまり、黙っていることは、その愚かな政策に加担していることになるわけです。

だから、それはおかしい、間違っていると思ったら声を上げなければいけない」

日本の主権者に対して、

ものごとを自分の頭で考えること、

そして、

黙っていないで、行動すること

を小出氏は呼びかけている。

「原発再稼働の動きもそうですが、

この日本では今、戦争に向かっていく大きな流れが確実につくられているように思います。

それが決定的になった時、気がついた時にはもう遅いのであって、

もう誰も抵抗できなくなるわけですから、その小さな芽がどんどん現れてくる時に、

やはり一つひとつ、つぶさなければいけないと思います」

小出氏は、行動する勇気を持つことを訴えている。

オールジャパン平和と共生の連帯運動は、

日本の針路を誤らせないための、市民による連帯運動である。

特定の政党を利するための運動でもなく、

特定の個人を利するための運動でもない。

ただひとつ、この国の進路を誤らせないための運動である。

国の進路を誤らせないためには、権力の要を押さえなければならない。

どれだけ高い理想を掲げても、現実の政治に影響力を与えることができなければ意味はない。

現実の政治を動かす決め手になるのは、

国会の議席なのだ。

国会の多数議席を占有して、初めて、理想の政治を実現できる。

だから、選挙に勝つこと、選挙を通じて、

理想を実現する議員を多数生み出すことがどうしても必要なのである。

戦争と原発を許さない。

そして、

TPPを許さない。

さらに、

辺野古基地と格差拡大を許さない。

この明確な政策方針の下に、主権者が結集すること。

これが大事だ。

そして、この政策を実現する国会議席を確保すること。

そのために何よりも重要なことは、的確な選挙戦術を構築することだ。

一選挙区に一候補者の体制を固めて、オールジャパンで支援する。

この戦術で、必ず勝てる。

必ず日本政治を刷新できる。

あとは、行動するだけだ。

すべての志を共有する主権者が行動すれば、必ず、日本一新は成し遂げられる。

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