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カラサワ · @cxp02120

22nd Nov 2015 from TwitLonger

北の湖親方の訃報記事を書きました。『苦渋の晩年 【訃報 北の湖敏満】』


北の湖という力士に関してはは怪童と呼ばれた入幕時から「憎らしいほど強い」と言われた大横綱時代、満身創痍の中、最後の全勝優勝の際に高見山の引退に触れ「19◎◎年の◎場所の◎日目に対戦したときの取組で……」とスラスラ答えた記憶力に驚愕した時まで強烈に覚えている。まさに私の年代にとってのヒーローだった。

悪役横綱というのは一種の圧倒的強さに対する褒め言葉だろうが、相撲協会の理事長に就任してからは不祥事続きで、しかもそれを隠蔽しようとし、発覚すると責任逃れをし、また積極的な改革を行えない尻腰のなさで、本当の悪役理事長になってしまった。晩節を汚したというか、まことに残念である。

なぜこうなったかというと、北の湖が中学時代から角界に入り、そのままエリートコースで出世して、いわゆる社会人としての苦労をほとんど経験していなかったからである。相撲業界の悪慣例と言われるものの、いったいどこがいけないのか、よくわかっていなかったきらいがある。輪島と共に戦後生まれの新世代横綱の筆頭でありながら、ただでさえ閉鎖的と言われる協会の体質改善に貢献できなかったのは、一にかかって、他の社会の常識を知らず、相撲の世界だけを世界と思ってオトナになった視野の狭さが問題だった。

八百長問題や暴力問題はまだ角界の長い歴史と共にある問題だから仕方ないと言えるかもしれない(仕方なくはないが)が、こと麻薬問題にまで至っては、いかに北の湖親方が「弟子の教育は各部屋の問題」「責任は各親方にある」と逃げを打っても逃げられず、あげくに自分の部屋の力士からまで逮捕者が出て、とうとう理事長引退に追い込まれた。

真面目な性格で、本当に相撲が好きで、大相撲の発展に心胆を砕いてきた、と言われる。それは本当のことだと思う。この世界を愛していなければ大横綱になれるわけがない。ただ、その世界を愛するが故にその世界の持つ矛盾や悪習を改善・排除できない、という部分は、その世界と周囲の社会との調和に意を配らねばならない理事長というポストには、いかにも不向きであったと思う。

病に冒されたこともあるだろうが、晩年の顔を見ると、苦渋が表情にそっくり出ていた。そこからの解放は、ある意味天の救いだったのかもしれないとさえ思えてしまう。11月20日死去、62歳。冥福を祈りたい。

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