★天王山2016年参院選に負ければ「日本喪失」ー(植草一秀氏)

2016年の参院選まで8ヵ月を切った。

投開票日は7月10日に設定される可能性が高い。

公職選挙法第三十二条は、参議院議員の通常選挙について次のように定めている。

(通常選挙)

第三十二条  参議院議員の通常選挙は、議員の任期が終る日の前三十日以内に行う。

2010年7月11日に実施された第22回参議院議員通常選挙で選出された参議院議員の任期満了は

2016年7月25日。

2016年の参院選は2016年6月25日から7月24日までの間に実施される。

投開票日設定に影響を与える、もうひとつの事情がある。

安倍政権が18歳以上の国民に選挙権を付与する法律改定を行ったことだ。

新制度の実施は、法律制定後、1年間の周知期間を経たのちとされている。

18歳以上の国民が選挙権を得て選挙を実施できるのは、2016年6月20日以降に公示される選挙になる。

この二つの条件を満たす日程は、

6月23日公示、7月10日投開票

6月30日公示、7月17日投開票

7月7日公示、7月24日投開票

の三つになる。

この三つのケースのいずれかで参院選が実施される可能性が極めて高い。

7月17日は連休の初日、7月24日は夏休み最初の日曜日になる。

したがって、6月23日公示、7月10日投開票の日程で

2016年参院選が実施される可能性が極めて高い。

5月26日からは主要国首脳会議が三重県伊勢志摩で開催される。

この日程に合わせて、通常国会は2016年1月4日に召集される。

会期末は6月1日になる。

臨時国会の召集が要求され、憲法の規定に従い、

安倍政権は臨時国会を召集しなければならなかったが、安倍政権は憲法の規定を無視した。

そして、その代わりに通常国会を早めに召集するとしているが、

通常国会を早期に召集するのは、国会召集の要求とは関係のない事情で決まっている。

憲法を無視し、憲法を破壊する安倍暴政の嵐が吹き荒れているのだ。

この安倍政権を一刻も早くに退場させなければ、取り返しのつかないことになる。

2016年参院選を日本政治刷新の確実な第一歩にしなければならない。

安倍政権の企みを正確に捕捉して、その企みを粉砕しなければならない。

2015年9月19日の戦争法強行制定から2ヵ月の時間が経過した。

戦争法強行制定に対する主権者の怒りは強かった。

問題は、この怒りを持続させることである。

このような問題について、主権者が「忘却力に富んで」いてはならないのだ。

安倍政権は憲法改定を目論んでいる。

当初は96条改定を目論んだ。

憲法改定のハードルを下げてしまうことだ。

しかし、96条改定に対する反発は強かった。

そこで、安倍政権は憲法に緊急事態条項を盛り込むことを目論んでいる。

安倍自民党は憲法改正草案で、

現行憲法にある「最高法規」の章を削除して、新たに「緊急事態」の章を設けようとしている。

98条、99条を新たに加える案を提示している。

内閣総理大臣が「緊急事態」を宣言し、全権を掌握できる条文である。

この改定を行ってしまえば、内閣総理大臣は全権を掌握して、合法的に独裁政治を実施できることになる。

ナチスによる全権委任法制定と同じ経路を日本が辿ることになる危険が極めて大きくなる。

11月22日の大阪ダブル選の延長上に、

安倍政権は憲法改定=緊急事態条項の「加憲」を目論んでいるのである。

このことを踏まえて、日本の主権者は、参院選必勝の方策を確定して、

必ず参院選に勝利しなければならない。

この選挙に敗北することは、

「日本を喪(うしな)う」

ことを意味する。

自民党憲法改正草案に示されている、第98条、第99条の条文は次のものだ。

第九章 緊急事態

(緊急事態の宣言)
第九十八条 内閣総理大臣は、我が国に対する外部からの武力攻撃、
内乱等による社会秩序の混乱、地震等による大規模な自然災害その他の法律で定める緊急事態において、
特に必要があると認めるときは、法律の定めるところにより、閣議にかけて、
緊急事態の宣言を発することができる。

2 緊急事態の宣言は、法律の定めるところにより、事前又は事後に国会の承認を得なければならない。

3 内閣総理大臣は、前項の場合において不承認の議決があったとき、
国会が緊急事態の宣言を解除すべき旨を議決したとき、
又は事態の推移により当該宣言を継続する必要がないと認めるときは、
法律の定めるところにより、閣議にかけて、当該宣言を速やかに解除しなければならない。
また、百日を超えて緊急事態の宣言を継続しようとするときは、百日を超えるごとに、
事前に国会の承認を得なければならない。

4 第二項及び前項後段の国会の承認については、第六十条第二項の規定を準用する。
この場合において、同項中「三十日以内」とあるのは、「五日以内」と読み替えるものとする。

(緊急事態の宣言の効果)
第九十九条 緊急事態の宣言が発せられたときは、法律の定めるところにより、
内閣は法律と同一の効力を有する政令を制定することができるほか、
内閣総理大臣は財政上必要な支出その他の処分を行い、
地方自治体の長に対して必要な指示をすることができる。

2 前項の政令の制定及び処分については、法律の定めるところにより、
事後に国会の承認を得なければならない。

3 緊急事態の宣言が発せられた場合には、何人も、法律の定めるところにより、
当該宣言に係る事態において国民の生命、身体及び財産を守るために行われる措置に関して
発せられる国その他公の機関の指示に従わなければならない。
この場合においても、第十四条、第十八条、第十九条、第二十一条その他の基本的人権に関する規定は、
最大限に尊重されなければならない。

4 緊急事態の宣言が発せられた場合においては、法律の定めるところにより、
その宣言が効力を有する期間、衆議院は解散されないものとし、
両議院の議員の任期及びその選挙期日の特例を設けることができる。


これが、自民党憲法改定案に仕込まれた毒素条項である。

独裁政権を合法的に成立させる根拠が定められるのである。

憲法改定は「逐条改定」になるため、

憲法の内容を全面的に書き換えるには、膨大な手続きが必要になる。

そこで、安倍政権は憲法96条を改定して、憲法改定のハードルを下げることを目論んだ。

現行憲法では、憲法改定の発議には、

「衆参両院の3分の2以上の賛成」

が必要としているが、これを、

「過半数の賛成」

による発議に改定しようとしたのである。

しかし、憲法はすべての基本で、

通常の法律よりも改定のハードルは高くあるべきとの反乱が強く、安倍政権はこれを断念した。

しかし、ひとつの条文ごとに改定作業を進めてゆくのでは、憲法の全面的な書き換えは容易でない。

そこで、安倍政権がいま目論んでいるのが、

「緊急事態条項」

を書き加えることなのだ。

二つの条文を書き加えるだけで、独裁政治の樹立が可能になる。

来年の参院選後に、この改定を実現することを目論んでいるのだと考えられる。

この改定が実現してしまうと、安倍独裁政治が合法的な存在になってしまう。

上記の条文案を見ると、

第98条第1項で、

「内閣総理大臣は、内乱等による社会秩序の混乱、

その他の法律で定める緊急事態において、緊急事態の宣言を発することができる」

としている。

「地震等による大規模な自然災害」

のタイミングでも

「緊急事態の宣言を発することができる」

としている。

要するに、内閣総理大臣が勝手に「緊急事態」を宣言できるのである。

そして、第99条において、「緊急事態」が宣言された場合、

「内閣は法律と同一の効力を有する政令を制定することができる」

「内閣総理大臣は財政上必要な支出その他の処分を行い」、

「地方自治体の長に対して必要な指示をすること」

ができる

としている。

さらに、

「緊急事態の宣言が発せられた場合には」、

「何人も、法律の定めるところにより、

当該宣言に係る事態において国民の生命、身体及び財産を守るために行われる措置に関して

発せられる国その他公の機関の指示に従わなければならない」

とされ、

「効力を有する期間、衆議院は解散されないものとし」、

「両議院の議員の任期及びその選挙期日の特例を設けることができる」

とされるのである。

まさに、内閣総理大臣が全権を掌握し、基本的人権も踏みにじられることになる。

この憲法改定が強行される危険が極めて高い。

戦争法制定どころの騒ぎではなくなる。

「日本喪失」

である。

これを回避するには、2016年参院選で、安倍政権に対峙する勢力が大勝利を収めなければならない。

注意が必要であるのは、

「安倍政権補完勢力」

が跋扈していることだ。

安倍政権に正面から対峙する勢力を勝利させねばならないのだ。

公約を基準に、

党派を問わず、

主権者が主導して、

オールジャパンで支援する候補を選定する。

そして、その候補の全員当選を実現する。

このことによって、「日本を喪う」ことを回避しなければならない。

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