★反知性・憲法破壊暴走安倍政権は国民の敵ー(植草一秀氏)

安倍政権が臨時国会を召集しない方針を決めたことは、

この政権の醜い本性を剥き出しにするものである。

この政権の本性とは、

立憲主義を否定し、

国民の権利を否定し、

議会制民主主義を否定し、

平和主義を否定し、

基本的人権の尊重を否定する

ものである。

政治権力が憲法の規定に従わなければならないことは当然のことだ。

そのために憲法を定めている。

日本国憲法は次の条文を置いている。

第九十八条 この憲法は、国の最高法規であつて、
その条規に反する法律、命令、詔勅及び国務に関するその他の行為の全部又は一部は、その効力を有しない。

第九十九条 天皇又は摂政及び国務大臣、国会議員、裁判官その他の公務員は、
この憲法を尊重し擁護する義務を負ふ。

この二つの条文は、

日本国憲法 第十章 最高法規

という章に置かれている。

この第十章の条文は、上記の第九十八条および第九十九条と、

以下に示す第九十七条の三条文によって構成されている。

第九十七条 この憲法が日本国民に保障する基本的人権は、
人類の多年にわたる自由獲得の努力の成果であつて、
これらの権利は、過去幾多の試錬に堪へ、現在及び将来の国民に対し、
侵すことのできない永久の権利として信託されたものである。

憲法が保障する基本的人権は、

「人類の多年にわたる自由獲得の努力の成果」

であり、

「これらの権利は」

「過去幾多の試錬に堪へ」

「現在及び将来の国民に対し、侵すことのできない永久の権利として信託されたもの」

と規定しているのだ。

日本国憲法の意味を理解するうえで、第九十七条は最高に重要な条文であると言ってもよい。

安倍自民党は、この憲法がいやでたまらないのだろう。

しかし、憲法があり、憲法が、国務大臣に憲法尊重、擁護義務を課しているのだから、

どれだけ日本国憲法が嫌いでも、憲法は守らねばならぬ。

それが近代民主主義国家の根幹をなすルールだ。

安倍政権は「特定秘密保護法」で、国民の「知る権利」を侵害している。

TPPも秘密交渉であり、国民の「知る権利」を侵害しており、憲法違反の交渉である。

また、TPPそのものが日本の国家主権を侵害するISD条項を含んでおり、憲法に反するものである。

さらに、日本国憲法第九十九条が、集団的自衛権行使を禁止していることが、

これまでの政府による憲法解釈で確認されてきた。

したがって、集団的自衛権行使を容認する必要があると考えるなら、

憲法改定の手続きを経ることが必要であることは論を待たない。

これを無視して、安倍政権は憲法違反の戦争法を強行制定した。

完全なる狂気の安倍政権である。

この政権に野党が国会召集を求めた。

日本国憲法第四章 国会 に次の条文が置かれている。

第五十三条 内閣は、国会の臨時会の召集を決定することができる。
いづれかの議院の総議員の四分の一以上の要求があれば、
内閣は、その召集を決定しなければならない。

したがって、安倍内閣は臨時会の招集を決定しなければならない。

ところが、安倍政権はこの条文に違反する行動を示している。

現行憲法が嫌いでたまらない安倍政権は、この憲法を改定する草案を公表している。

第五十三条についても、改定案が明示されている。

(臨時国会)
第五十三条 内閣は、臨時国会の召集を決定することができる。
いずれかの議院の総議員の四分の一以上の要求があったときは、
要求があった日から二十日以内に臨時国会が召集されなければならない。

安倍自民党は、現行第五十三条の持つ意味を、より具体的に明記した。

「要求があった日から二十日以内に臨時国会が召集されなければならない」

と書いたのだ。

すべての者の目が点になる。

このような史上最低最悪の政権は、一秒でも早く、退場させなければならない。

現行憲法が定める

「臨時会招集を決定しなければならない」

の意味は、自民党憲法改定草案にかかれたようなものであると解釈できる。

「時期についての規定がない」

を理由に挙げるが、

「時期についての規定がない」

なら、永遠に招集しなくてよいということになるのか。

「通常国会を年明けの1月4日に召集するからいい」

などというのは、反論にならない。

憲法第五十三条は、

「臨時会の招集を決定しなければならない」

と定めているのだ。

内閣には、とてつもない巨大な権限、権力が付与される。

統治の仕組みは国によって異なるが、そのような国際比較においても、

日本の議院内閣制によって作られる内閣は巨大な権力を有する。

米国の大統領制が

「権力の抑制」

を特徴とするのに対して、

日本の議院内閣制は、

「権力の創出」

に特徴があると言われる。

米国では大統領選出と、議会の議員選出が別々に行われる。

したがって、議会の構成と大統領の政治的立脚点が一致する保証がない。

これに対して、日本の議院内閣制では、

議会の多数派勢力から内閣総理大臣が指名されるから、

議会多数派勢力と政権の政治的立脚点が基本的に一致する。

さらに、日本の場合、内閣が裁判所の人事権を保持するから、

内閣が裁判所も支配し得る構造になっている。

内閣総理大臣には、恐るべき巨大な権力が付与されているのだ。

そうであれば、なおさら、憲法が権力の暴走を防ぐという、最後の砦の部分が大事になる。

憲法に反する法律は効力を持たない。

日本国憲法第九十八条 

この憲法は、国の最高法規であつて、
その条規に反する法律、命令、詔勅及び国務に関するその他の行為の全部又は一部は、その効力を有しない。

と明記されているのだ。

戦争法制定に対する主権者の激しい怒りが爆発したのは当然のことである。

しかし、安倍暴政は、憲法の制止をも無視して、抑制の利かない暴走車と化している。

日本国憲法は国会を国権の最高機関と位置付けている(第四十一条)。

現在の国会は、選挙制度、選挙の際の立候補の状況から、

少ない民意を反映する議員が多数になるという

「著しいねじれ」

の状況を示している。

この「ねじれ」を早期に解消しなければならないが、

それまでは、多数の民意を代表する少数の議員に精一杯活動してもらわねばならぬ。

しかし、国会が召集されなければ、こうした議員が活動する場がない。

自民党は、憲法改定案で、

「最高法規」

という章を消した。

そして、憲法の意味をもっとも分かりやすく明記し、

「人類の多年にわたる自由獲得の努力の成果」

「現在及び将来の国民に対し、侵すことのできない永久の権利」

などの、最重要の表現が盛り込まれた

第九十七条を、丸ごと削除した。

そして、

「天皇又は摂政及び国務大臣、国会議員、裁判官その他の公務員」

に対して、

「この憲法を尊重し擁護する義務を負ふ」

と定めた第九十九条を次のように変えた。

(憲法尊重擁護義務)
第百二条 全て国民は、この憲法を尊重しなければならない。

インド人も、日本人も、みんなびっくりだ。

権力者に対して憲法尊重擁護義務を課していたのを、

憲法を尊重しなければならないのは、

「国民だ」

と変えているのだ。

第2項に、

「国会議員、国務大臣、裁判官その他の公務員は、この憲法を擁護する義務を負う」

という文言を置いてはいるが、権力の暴走を防ぐための憲法という「立憲主義」の精神が破壊されている。

改定案が国民に憲法尊重義務を課しているのは、

「大日本帝国憲法上諭」に、

臣民ハ此ノ憲法ニ対シ永遠ニ従順ノ義務ヲ負フヘシ

とあることに倣うものだ。

憲法の規定で臨時国会召集を決定しなければならない安倍政権が、

臨時国会召集を決定しないことを、日本の主権者は絶対に許してはならない。

主権者の力で、この政権を必ず退場させなければならない。

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