★外務省という官僚組織を壊してしまった安倍首相ー(天木直人氏)

かつて民主党が政権を取った直後、

仙谷という官房長官が各省庁の次官職を廃止すると宣言したことがあった。

 結局、官僚たちの反発にあって、次官職の廃止ではなく、

次官会議の廃止と言う形で腰砕けに終わったが、

もしあの時、次官職が廃止されていたなら、官僚組織は崩壊し、

官僚たちは民主党政権にすり寄ったに違いない。

 それほど官僚組織にとって次官職は影響力を持っているのだ。

 なぜなら人事権を握っているからである。

 この次官の人事権こそ官僚組織の秩序の源だった。

 次官は官僚組織の利権を代弁し、時の政権に面従腹背し、官僚たちは次官の下に結集する。

 その官僚組織のトップを争う局長級の幹部たちは、首相や外務大臣ではなく、人事権を握る次官に従う。

 これが官僚組織の掟だ。

 ところが、安倍政権になって、見事にこの掟が壊れた。

 谷内正太郎元次官と斎木昭隆現次官を重用し、思いのままに外交を私物化したからだ。

 ここまでは、これまで私が何度も書いてきたことだ。

 しかし、11月10日発売の月刊文芸春秋の官僚人事ゴシップ欄である

霞が関コンフィデンシャルを読んで驚いた。

 斎木次官が来年夏まで続投し、その後は一気に人事がすべて若返るというのだ。

 これまで巷間しばしば伝えられた来た、次期次官を含めたた外務省幹部人事がすべてふっとび、

外務省の常識が通用しない人事が行われるという。

 もと外務官僚である私には、この記事がどれほど衝撃的な記事か、よくわかる。

 これまでの外務省の人事は、内部の出世争いによる派閥人事はあったが、

それでも次官が決まれば、外務官僚の間で暗黙の了解と秩序が保たれた。

 そして、その次官は、派閥人事を行う一方で、

自らの人事権をなんとか組織の為に使うことに腐心した。

 それが官僚組織の掟だった。

 ところが斎木次官の去った後の外務省は、

もはや誰も次期次官の予想がつかなくなったのだ。

 次官が外務官僚を掌握するという時代は終わり、

局長たちがみな次官ではなく政権を向いて動くことになる。

 次官の権限と権威が吹っ飛び、次官はただの幹部のひとりとなる。

 たまたま次官に政治任用されただけの者だと皆が思うようになる。

 外務官僚たちが外務省組織の組織防衛の為に動くのではなく、

自らの保身のためにバラバラに動くようになる。

 私が外務省は崩壊したという理由がそこにある。

 もちろん安倍・菅政権が代われば、また元に戻るだろう。

 しかし、いったん崩れた外務省組織の人事が正常に戻るまでには、

少なくとも10年以上はかかるだろう。

 安倍政権は民主党政権が出来なかった官僚組織を崩壊させた。

 しかも次官ポストの廃止ではなく、次官ポストを最大限に活用し、私物化して崩壊させたのである。

 官僚組織や外務省が壊れることは歓迎だ。

 しかし、それが安倍・菅政権の人事権濫用でつぶれるのなら国益に反する。

 谷内と斎木の責任は大きい。

Reply · Report Post