★核兵器廃絶決議案採択に見る日本のダブルスタンダードー(天木直人氏)

きょう11月4日の読売新聞が、ニューヨーク発水野哲也記者の記事として、

核廃絶決議案の採択について次のように報じていた。

 「国連総会で軍縮を扱う第一委員会は2日、

日本が提出した核軍縮決議案『核兵器の全面廃絶に向けた新たな決意の下での共同行動』を、

156か国の賛成多数で採択した。

中国、ロシア、北朝鮮が反対し、米英仏の核保有国を含む17カ国が棄権した・・・」

 その読売新聞の記事には日本の事については何も触れていないが、

決議案を提出したのだから日本は当然賛成した156か国の中に入っているのだろう。

 ところが、この読売新聞の記事は何も言及していないが、採択されたのはこれだけではない。

 オーストラリアと南アフリカが主導して来た核兵器の法的禁止を目指す二つの決議案が提出され、

それぞれ賛同128か国、124か国で採択されているのだ。

 しかし日本はいずれも棄権している。

 どちらが核廃絶に本気で取り組んでいる決議案か。

 もちろん後者である。

 日本が提出した案は、廃棄時期が明示されておらず、核兵器の非人道性に焦点を当てるものだ。

 毎年提出し、採択されてきた。

 今年ははじめて被爆者たちという表現を使って世界の指導者たちの広島、長崎訪問をうながした。

 これが、いたずらに被害者意識を強調し、

戦争加害者である日本の側面を隠すものだと中国に反発され、

日中間の対立になった事は記憶に新しい。

 その一方で、オーストラリア、南アが提出した決議案は核廃絶の法的枠組みの強化を求める

より具体的な決議案だ。

 これには「核の傘」に守られている日本は棄権している。

 日本のダブルスタンダードを見事に示しているが、この事を報じる記事は皆無だ。

 おまけに日本が提出した決議案さえも、従来は賛成して来た米国などが今度は棄権に回った。

 非人道性が強調され過ぎているからだという。

 中国だけでなく、米国からもあまり被爆国づらを強調するな、というわけだ。

 中国に反発しても米国には文句は言わない。

 これもまた見事なダブルスタンダードだ。

 日本が唯一の被爆国を主張する事は、

このダブルスタンダードを解消しなければ、年々説得力を失っていくばかりだ。

 これもまた外交崩壊である。

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