★戦争責任を一般国民に押し付ける安倍70年談話ー(植草一秀氏)

11月1日、東京千代田区にある日比谷公会堂で、

憲法改悪反対!
歴史認識を明確にし、
「平和政策」を実現する11・1大集会

がJR東日本労組主催で開催された。

会場には2000名を超える関係者が終結し、大盛況裏に集会が挙行された。

2002年11月1日、「えん罪JR浦和電車区事件」が発生してから13年の時間が経過した。

故・後藤昌次郎弁護士は、

「国家にしかできない犯罪。

それが戦争と冤罪である」

という言葉を遺された。

不当逮捕された7人の組合員は344日の長期にわたり勾留された。

344日の勾留期間を忘れぬため、そして、不当な弾圧を行う世の中に対して、

平和・人権・民主主義を守り、明るい未来をつくるために、

344を漢字に読み替えて、(3=み=美、4=よ=世、4=し=志)美世志会が結成されて、

毎年11月1日に大集会が開催されてきた。

2015年の11月1日は、この思いを継承しつつ、

新たに、未来に向けての活動として、

平和、いのち、自由、そして人権と民主主義生を守るための集会が開催されたのである。

集会のオープニングに、JR東日本労組青年部合唱隊による詩の朗読と合唱が演じられた。

合唱曲は「リメンバー」

「平和・いのち・自由」

を守る大切さが胸に染みわたる素晴らしい合唱だった。

「リメンバー」

は、作詞:なかにし礼、作曲:鈴木キサブローによる合唱曲である。

なかにし礼さんのオフィシャルウェブサイトに、この楽曲についての記述がある。

http://www.nakanishi-rei.com/

佐藤しのぶさんと共に核兵器反対の歌「リメンバー」記者発表

「2013年11月12日午後、東京・内幸町の日本記者クラブで記者会見し、

核兵器に反対する歌「リメンバー」を披露しました。

会見の中で佐藤さんは「リメンバー」を高らかに歌い「世界中の人に歌ってほしい」と語りました。

日本記者クラブで歌の発表・披露が行われるのはこれまでになかった画期的なことです。

多くの報道関係者が訪れ、会見は大好評のうちに終わりました。」

https://www.youtube.com/watch?v=NLaES2Q7UMw

その歌詞を紹介する。

『リメンバー』

この地球を宇宙から眺めたら

美しい青い星だ

国境は引かれていない

今もどこかで 戦争は続いている

悲しみと山のような

屍(しかばね)が折り重なって

戦争と核兵器のない

平和の実現を願うものは集まれ!

リメンバーヒロシマナガサキ

過ちは繰り返さない

リメンバーヒロシマナガサキ

人間に叡智(えいち)と愛があるなら

遠くとも核なき世界を

めざして手をつなぎ

みんな歩き始めよう!

リメンバーヒロシマナガサキ

沈黙にさよならしよう

リメンバーヒロシマナガサキ

行動と勇気で生まれかわろう

10月8日の【オールジャパン平和と共生】総決起集会で鳩山友紀夫元首相は次のように述べた。

「安倍政権の普通の国は、どうも「戦争のできる普通の国」ということなのだと見える。

しかし、私は「戦争のできる普通の国」になるくらいだったら、

「戦争のできないめずらしい国」であり続けるべきだと思う」

「武力で平和をつくる、これは絶対に不可能、

憎悪の連鎖を生むからだ」

私たちは、この思いを共有して「平和と共生」の社会を実現してゆかなければならない。

https://www.alljapan25.com/

集会では、琉球大学名誉教授の高嶋伸欣氏が講演をされた。

演題は

「鉄道現場から

世界とりわけ東アジアとの共生に向けた取り組みを考える」
  
サブタイトルは、

「-近隣諸国との緊張を高める安倍政権の歴史認識の先にあるものを衝く-」

安倍首相は敗戦70年に際して談話を発表したが、そのなかで、

「日本では、戦後生まれの世代が、今や、人口の八割を超えています。

あの戦争には何ら関わりのない、私たちの子や孫、そしてその先の世代の子どもたちに、

謝罪を続ける宿命を背負わせてはなりません。」

と述べた。

高島氏は、産経新聞などは、この部分を絶賛して、

販促用の新聞見本にこれを賛美する産経新聞本紙の記事を使っているが、

この記述は謝罪の責任を国民に押し付けようとするものだと批判した。

山梨学院大学の小菅信子教授は著書

『戦後和解─日本は〈過去〉から解き放たれるのか』(中公新書)

で第27回石橋湛山(たんざん)賞を受賞した。
  
著書は歴史を忘却せずに和解を実現することの重要性を説いたものである。

小菅氏は第二次世界大戦後のドイツと日本の戦後平和構築の方法をこう指摘する。

「敗戦国の国民を、戦争指導者や加害者と、

彼らに騙(だま)されて戦争協力した一般国民とに分けて、

その一般国民と、戦勝国の国民や被害者・戦争犠牲者との間の関係を修復して、

最終的に和解へと導いていこうとする方法」

であったと。
  
小菅氏は石橋湛山賞の受賞講演で石橋湛山元首相の言葉を紹介した。

「ナショナリズムをどういうふうにしてプラスの方向に向けるかが重要ですね。

これは結局人間自身の問題です。

つまり体制とか組織とかいうけれど、つきつめていえば人間の問題だ。

人間が人間自身と取り組む、これが一番重要ではないですか」

『湛山座談』

小菅氏の指摘を正確に理解することが必要である。

第二次大戦後のドイツと日本の平和構築は、

「敗戦国の国民を、戦争指導者や加害者と、

彼らに騙(だま)されて戦争協力した一般国民とに分けて、

その一般国民と、戦勝国の国民や被害者・戦争犠牲者との間の関係を修復して、

最終的に和解へと導いていこうとする方法」

によってもたらされてきた。

謝罪するのは敗戦国の国民ではない。

戦争指導者、加害者の所在、責任を明らかにして、国家がその責任を代表して謝罪を行うものなのだ。

国民に謝罪の責任を押し付けて、その責任を免責しようとするなどと言うことは、

筋違いも甚だしいし、こうした意味で謝罪の打ち切りを賛美する産経新聞などの姿勢も

筋の通らないものである。

話は脇に逸れるが、11月1日夜のフジテレビ番組「Mr.サンデー」で、

産経新聞記者が韓国で名誉棄損の罪を問われる裁判を受けていることについて、

耳を疑う発言を示した。

「朴槿恵大統領はこの裁判に影響力を与える立場にあるのだから、

日韓関係のために何らかの行動を示すべきだ」

という主旨の発言を示したのだ。

木村氏が

「大統領が裁判の結果に影響を与え得る」

と考えているとするなら、これは、ポツダム宣言を読んだことがないとか、

立憲主義を法学部で学んだことがない、などに匹敵する

「反知性主義」

のお仲間であることを意味する。

民主主義を支える基本のひとつに「権力の分立」がある。

政治権力そのものである「行政権」のトップであっても、司法権への介入を認めない。

これが近代民主主義国家の基本である。

日本の場合、政治権力が憲法を破壊し、裁判にも常に介入するから、

三権分立は成立しておらず、立憲主義も民主主義も実現していないが、

木村氏は他国についても同じ土俵の上にあると勘違いしている。

民主主義、立憲主義が、土足で踏みにじられる現実が広がっているが、

この暴政に抗し、この暴政を排除できるのは、主権者だけである。

戦争が「必然」によっておこることはない。

戦争は「必要」によって創作されているのだ。

軍産複合体は、資本の利益を極大化するために、

必要のない戦争、意味のない戦争を人為的に創り出している。

そして、戦争で犠牲になるのは、常に、末端の兵士と戦場の罪なき市民である。

戦争は国と国の間で行われるものではない。

戦争は安全な場に身を置く戦争犯罪者と戦場の兵士、戦場の市民との間で行われるものだ。

映画『父親たちの星条旗』のクリント・イーストウッド監督は、

「ずっと前から、そして今も、人々は政治家のために殺されている」

と述べた。

沢木耕太郎氏はイーストウッド監督が映画のなかで訴えようとした真のメッセージは、

「戦争を美しく語る者を信用するな。彼らは決まって戦場にいなかった者なのだから」

であると指摘する。

ナガサキで被爆し、妻を失い、自分も死に追いやられた永井隆博士は、

「戦争に勝ちも負けもない。あるのは滅びだけである」

の言葉を遺された。

私たちは二度と戦争を引き起こさないため、平和憲法を守ってゆかねばならない。

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