業界に若手が少ないと嘆く前に反省するべき


今、染色業界の制作系の中心の年代の人たち、それは60〜80歳代なのですが、その方々とお話をすると、いつも疑問が浮かぶのです。

「昔は良かった、伝統を大事にしない社会が問題だ、若手がいない、最近の若手は堪え性がない。。その他」

「だから、君たち世代が頑張れ」(私は今50歳です)

あー、いえ、あれですよ、今も昔も、若者はそう変わっていませんよ。皆さんだって、若い時は同じようなもんだったはずです。私だってそうだった。

景気の良い時代は、不安定な若者を育てる余裕があるほどに、業界が大きかったし、また、のんびりしていた。今ほど完成度の高い仕事も望まれなかったし、とにかく、みんなで稼ぐことが出来た、弟子は別にシステムをつくって育てようとしなくても、なんとなく10年工房にいれば、仕事をある程度出来るようになって、独立すると、問屋さんから仕事がもらえた。

ようするに「今を批判する先達たちは、ご自分たちは全てを与えられていた」わけです。
なのに、ご自分は弟子を取らず、業界や、日本文化から与えられたものを後進に受け渡さずに、ご自分で全て消費してしまった。

そして、全て食べつくしてしまったら、今度は自分たちより若い世代に「あれをやれ、これをやれ」とおっしゃるわけです。

それでいて、他人のものは欲しくなり、自分では弟子をとらず好き勝手やって散々消費したのに、他人を弟子扱いしたり、他人の弟子を自分の弟子だと吹聴したりする。育てる負担は抱えたくないが、手下を持って偉ぶりたい。。。

そういう人たちが多すぎます。

「なぜ、ギョーカイがこういうことになっちゃったのか」

それって、自分たちで何とか出来なかったから。

という発想が全くないんですよね。

常に、何か「職人は被害者だ」みたいな意識がある。

しかし、自分たちは、しっかり家も残し、家族を養い終わり、年金も受給している世代です。
自分たちは先達から全てをもらい、自分たちで全てを消費してしまい、後進に自分たちが受け取ったものを受け渡さなかった罪の自覚がない。

それでいて気位だけは異常に高く、若手世代に文句ばかり言う。
これで業界が成長するわけがないわけで。

だから結局、真実は、業界が縮小しているのは、業界人のせい、と言えるんです。

規模は小さくなっても、存続可能なシステムややり方は、もっと手前に動けばどうにかなったはずなんです。

それをやらなかった。

その自覚はどうもお持ちではないようです。

今、中年や若手になんかやれ、と言われて、中年や若手の業界人は、どうすれば良いか、というか、そもそも、人材がいないのです。

若手がいない。

だって、前世代が、育てる負担を嫌って若手を入れなかったし、育てようともしなかったから。これは今の中堅や若手のせいじゃないですよ。これは明らかに、前世代のせいです。

だから、基本的には、うまく終わらせる手はずを整える時期だと、個人的には考えています。
ただし、それは全てが終わる、という意味ではなく「次を産むために、今を終わらせなければならない」という意味です。

以前機能していたものでも、今はその役割を終えたもの、それを延命させることは、むしろ害です。

新生が必要な時期に来ている、私の世代は次を産むための肥やしの役割でしょう。
そういう役回りも必要です。


Reply · Report Post