★日米をTPP合意に向かわせた陰の主役は中国だと書いた読売ー(天木直人氏)

きょう10月10日の読売新聞が今度のTPP合意に至る日米間交渉の曲折ぶりを検証している。

 それを読むと日本の迷走振りは当然として、米国もまた最終段階で譲歩した事がわかる。

 すなわち菅直人民主党政権がTPP参加を表明したものの、

国内の反発にあって民主党政権下では参加表明には至らなかった。

 日本が遅れてTPP交渉に参加表明したのは安倍政権になった2013年3月だった。

 それでも、国内の反対に配慮して、当初はコメや牛肉、豚肉など重要品目の関税は

死守する構えで臨んだ。

 その後度重なる日米二国間協議で譲歩を繰り返し、最後は大筋合意実現に奔走した。

 一方の米国も、当初はTPPは完全なる貿易自由化だと主張した。

 その原則を損ねる悪しき協定など、無い方がいい、とまで言っていた。

 それが大筋合意の実現の為に最後は妥協して、国内の反発を招く事になった。

 ここまでは、既に報じられていることだ。

 問題は、なぜ日米がTPP決裂を避けて大筋合意を優先させたかだ。

 それを読売新聞はこう書いている。

 TPPがまとまらなければ中国がアジアインフラ投資銀行(AIIB)をテコに

アジア太平洋地域を席巻するからだと。

 すなわち日米を最終合意に突き動かした陰の主役は中国だというわけだ。

 その事は、オバマ大統領が大筋合意直後の記者会見(10月5日)で、

「世界経済のルールを中国のような国に書かせるわけにはいかない。

我々がルールを書く」と語り、安倍首相がそれに追従する発言をした事でわかる。

 読売新聞の記事で私が注目したのは、

この中国に対する敵対心をもっとも強く抱いてTPP大筋合意を望んだのは、安倍首相だったということだ。

 すなわち安倍首相が最後に甘利大臣に命じたことは、

「米国が降りられるような姿勢をつくれ」であったといい、

安倍首相がバイデン米副大統領に繰り返し伝えた事は、

「もう後戻りは出来ない」ということだったという。

 TPP大筋合意に最もこだわったのは、中国に競争心を抱く安倍首相だったのだ。

 それを習近平の中国が知らないはずがない。

 安倍首相が日本の首相でいる限り、

習近平の中国と本物の良好な日中関係を築くことは不可能であるという事である。

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