★TPP合意。
「企業の利益確保」を原則に、国の法律、裁判、行政を裁くシステムなのに
国民はほとんど知らない。
それを隠し交渉した政府、隠したマスコミ、犯罪的行為だー(孫崎享氏)

5日、TPPについて、米アトランタ閣僚会議で合意された。

その本質的な怖さが国民の間でほとんど、認識されないままの合意である。

TPPは単なる関税交渉ではない。

経済の在り様を、「企業の利益確保が全て」というシステムにするものである。

そのかなめにISD条項(「投資家対国家間の紛争解決条項」)がある。

 昨日ある大学で講義した。約200名位が聞いた。

「ISD条項を知っているか()と問うたが誰も手をあげる人はいなかった。

ISD条項により、間違いなく国家主権を相当程度多国籍企業に譲り渡す。

それを承知で、それを国民に隠して、国は合意した。

大手マスコミはそれを承知で、報道してこなかった。国家的犯罪とすら言える。

この問題には様々な解説がなしうるが、

エリザベス・ワレンの記事が参考になるので、掲載する。

これは本ブログで紹介したものの、再掲載である。

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エリザベス・ワレンは、ヒラリー・クリントンに次いで、

一時民主党の大統領候補の有力候補とされた議員である。

 彼女がワシントンポスト紙二月二五日付でTPPに関し、

「すべての者が反対すべき
TPPの条項(The Trans-Pacific Partnership clause everyone should oppose)を発表している。

 極めて貴重な指摘であり、主要点を列挙する。

・米国はTPP交渉の最終ステージにいる。

 誰がTPPで利益を得るか。

 米国の労働者か。消費者か。小規模企業か。納税か。多国籍企業か。

・ISD条項が問題である。

 「投資家―国家紛争処理条項」という名前は穏健に聞こえるかもしれないが、ごまかされるな。

・ISD条項への合意は一段と多国籍企業に有利になる。.

・もっと悪い。それは米国の主権を損ねる。

・ISD条項は米国法律に挑戦し、米国裁判所の関与なしに巨額を納税者から支払わせることになる。

・どのように機能するか見てみよう。

 米国がしばしばガソリンに添加される有毒化学物質を健康・環境への影響で禁じたとしよう。

もし、外国企業がこの決定に挑戦しようとすれば、通常は米国裁判所で行われる。

しかし、ISD条項では、外国企業は米国の法廷を通り越して、国際仲裁裁判所に訴える。

もし、企業が勝ったとしたら、それは米国の裁判所では審議することはできない。

そして仲裁裁判所は納税者に数百万ドル、さらには何十億ドルも支払わさせる。

,さらにショッキングなことがある。

仲裁裁判所は独立した裁判官を持たない。

高級の企業弁護士がある時は企業の弁護士になり、

ある時は裁判官になるといういききをする。

もしあなたが企業の高級弁護士だったら、

どうして裁判官になった時に、企業に不利な判決を出すか。

・誰がこの裁判所を利用するか。国際投資家である。

・なぜこうした仲裁裁判所を作らなければならないか。

 米国の裁判所が機能しないからか。そうではない。

・確かに発展途上国で司法システムが不十分で心配というケースがある。
投資促進のためISD条項がある。

・もし、対象国が法的制度が整わない発展途上国でない国々がTPP加盟国なら
こうした懸念は正当化できない。

豪州や日本は先進国で、ちゃんとした法制度を持つ。
ISD条項はこれらの国の裁判所も飛び越える。

・ISD条項の利用は国際的に拡大している。

2002年から2002年までISD条項のクレームは100件もない。

しかし、2012年だけで58件ある。

最近では仏企業がエジプトが最低賃金を挙げたと言って訴えた。

スエーデンの企業がドイツに原発を止めたといって訴えた。

オランダの企業がこの企業が一部所有していた銀行を政府が救済しなかったとして訴えた。

米国のフイリップ・モリスがたばこの規制をするウルグアイを訴えることを考えている。

・ISD条項は米国を攻撃しないと言っているが、いつの日か米国に向かう。

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