★読売社説批判③
「安保法案審議 今国会で確実に成立させたい」廃案にすればいいだけの話ー(孫崎享氏)

13日読売は「安保法案審議 今国会で確実に成立させたい」との社説を掲げた。

まず、「違憲」問題について次のように述べている。

「民主党などは、安保法案を「違憲」と決めつけている。しかし、この批判は当たらない。

 法案は、集団的自衛権の行使の要件を、あくまで日本の存立が脅かされ、

国民の権利が根底から覆される明白な危険がある「存立危機事態」に厳しく限定した。

日本周辺有事における米軍艦船の防護などを想定したものである。

 過去の最高裁判決や政府見解の基本的論理を踏襲し、法的安定性も確保されている。

 「違憲」論者は、存立危機事態という極めて限定的かつ重大な危機を脱する目的であっても、

武力行使を否定するのだろうか。」

まず、日本の存立の危機と言う場合には一般に日本が攻撃された時である。

この時には当然自衛隊が対応する。

そして日米安保条約がある。

「第五条 各締約国は、日本国の施政の下にある領域における、

いずれか一方に対する武力攻撃が、

自国の平和及び安全を危うくするものであることを認め、

自国の憲法上の規定及び手続に従つて共通の危険に対処するように行動することを宣言する。」

だから、集団的自衛権で初めて「存立危機事態」への対応が考えられたのではない。

海外派遣に対する制約の中で「存立危機事態」が付けられているだけである。

成文の日本国憲法ですら破る自民党がどうして付帯条件を厳格に守るというのか。

違憲の論を見てみよう。

「過去の最高裁判決や政府見解の基本的論理を踏襲し、法的安定性も確保されている」。

 全く、いい加減な論である。

 過去の最高裁判決は砂川判決をさすが、

この時の論は在日米軍の是非をめぐる論議である。

自衛隊を「他国(米国)防衛」のためにつかうという論議は全くされていない。

 現在、次の人々が違憲とみなしている。

①大森、宮崎、坂田(少なくとも一時期)、角田元内閣法制局長官が違憲ないし疑問の発言

②山口繁・元最高裁長官「集団的自衛権の行使を認める立法は、違憲」

③憲法学者の約95%が違憲。

「過去の最高裁判決や政府見解の基本的論理を踏襲し、

法的安定性も確保されている」という点に関しては、

当時関与した山口繁・元最高裁長官、大森、宮崎角田元内閣法制局長官が

現在の解釈は違憲と述べているのである。

「日本の安保環境の悪化を踏まえれば、

同盟国の米国や友好国の豪州などと防衛協力を強め、

抑止力を高める必要性は増している。」と述べているが、

中国の軍事力強化はあっても尖閣諸島をのぞけば、

日本と中国の軍事紛争は想定できない。

尖閣諸島に関しては、1979年5月31日読売新聞社説にあるように、

「・尖閣諸島の領有権問題は、1972年の時も、

昨年夏の日中平和友好条約の調印の際にも問題になったが、

いわゆる「触れないでおこう」方式で処理されてきた。

つまり、日中双方とも領土主権を主張し、現実に論争が“存在”することを認めながら、

この問題を留保し、将来の解決に待つことで日中政府間の了解がついた。

・それは共同声明や条約上の文書にはなっていないが、

政府対政府のれっきとした“約束こと”であることは間違いない。

約束した以上は、これを順守するのが筋道である。

尖閣諸島問題に関しては慎重に対処し、決して紛争のタネにしてはならない。」

とすれば問題はなんら紛糾しない。

 集団的自衛権の本質は米国戦略に自衛隊を使うことである。

この措置によって日本の安全が高まることはない。

逆に日本国内にテロを呼び込む可能性が高まる。

「民主党は、領域警備法案を維新と共同提出しただけで、

集団的自衛権などの対案は出していない。政府案に反対するだけでは、

「抵抗野党」のそしりを免れない。」というが対案を出さないのは当然だ。

集団的自衛権そもそもが憲法違反だ。

憲法違反のものに対案出せという論理がおかしい。

対案を出すも出さないも、廃案にすればそれですむ話である。

 参考読売社説

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安全保障関連法案の参院審議が、いよいよ大詰めを迎える。

 過去最長の95日間の延長をした通常国会も、27日に閉幕する。

会期中に確実に成立させねばならない。

 特別委員会での法案採決の前提となる中央公聴会が15日に設定された。

与党が来週後半の特別委と本会議の採決・成立を目指すのに対し、

民主など野党6党は、法案の成立阻止に向けて「あらゆる手段を講じる」ことで一致した。

 民主党などは、安保法案を「違憲」と決めつけている。しかし、この批判は当たらない。

 法案は、集団的自衛権の行使の要件を、あくまで日本の存立が脅かされ、

国民の権利が根底から覆される明白な危険がある「存立危機事態」に厳しく限定した。

日本周辺有事における米軍艦船の防護などを想定したものである。

 過去の最高裁判決や政府見解の基本的論理を踏襲し、法的安定性も確保されている。

 「違憲」論者は、存立危機事態という極めて限定的かつ重大な危機を脱する目的であっても、

武力行使を否定するのだろうか。

 日本の安保環境の悪化を踏まえれば、

同盟国の米国や友好国の豪州などと防衛協力を強め、抑止力を高める必要性は増している。

 参院審議は既に、80時間を超した。

審議を尽くし、最後は採決で法案の可否を決するのは、議会制民主主義の基本ルールである。

 疑問なのは民主党の対応だ。

 4月に、将来の集団的自衛権の行使容認に含みを残す党見解をまとめた後、

どんな状況なら容認するかの党内論議を回避し、ひたすら法案反対を唱え続けている。

 非現実的な「徴兵制の復活」への国民の不安をあおるようなパンフレットを作成したことには、

党内からも批判が相次いだ。

 岡田代表は10年以上前から、米艦防護を可能にすることに前向きだったのに、

なぜ反対一辺倒になってしまったのか。

 維新の党と、日本を元気にする会など3党は、

それぞれ政府案の対案や修正案を参院に提出し、与党と協議を重ねている。

 民主党は、領域警備法案を維新と共同提出しただけで、

集団的自衛権などの対案は出していない。

細野政調会長は「安保政策は本来、与野党が対立すべきでない」とし、

対案作成にも前向きだったが、党全体の方針にはならなかった。

 3年以上も政権を担当した野党第1党として、無責任ではないか。

政府案に反対するだけでは、「抵抗野党」のそしりを免れない。

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