★10代、20代の人へ。
残念ながらこの国の大手メディアは重要な問題になればなるほど、
歪んだ報道をする国になってることを知る必要があります。ー(孫崎享氏)

皆さんは中学生や、高校生の頃、先生方などから、

「社会に目を開いた人間になろう。

そのためには少なくとも毎日テレビのニュースの時間は見なさい。

できるだけ毎日、新聞に目を通しなさい」という助言を受けてきたと思います。

 それはあくまでも、日本のメディアがほぼ公正に事実関係を報道している

という前提の下です。

 もし、その前提が存在しない時には、逆に大きな害を与えます。

 第二次大戦に突入する際には、日本の新聞は軍部を礼賛し、

危険な道へ進むのを絶賛し、日本の国論を戦争へと導いていきました。

 新聞が、正しいことを伝えなくなったとき、

権力の単なる宣伝機関になった時、それは益を与えるよりは害を与えるのです。

 そして多分、日本は、今、その段階に入ってきているのです。

 この異常さを最初に示したのは福島原発事故でした。

 福島原発事故が起こりました。大量の放射線が出ました。

その時、大手メディアのとる対応には2つの可能性がありました。

①現場を徹底的に取材すること、

②現場から逃げること、

 メディアの役割を考える時、

通常は①の選択をします。 

しかし、大手メディアは全て、

自社の記者に「現場から去れ」と指示を出しました。

放射線の流出が大きく、「現場にはとてもとどまれる状況にない」と判断したからです。

 では新聞の紙面などはどうだったでしょうか。「直ちに健康に害はない」

 「直ちに健康に害はない」は100%間違っているとは言えませんが、

「相当期間の滞在は危険である」という事実を隠す報道をしました。詭弁です。

 今、日本では、自衛隊の海外派遣を制度化する安保関連法案が国会で審議され、

採決される状況です。

 私は日本という国が「民主主義国家であるのか」

「法治国家」かが問われていると思っています。

「民主主義国家」の点では、国会議員は国民の投票で選ばれますが、

それは国民の意思を代弁するという前提に立っています。

選挙でえらばれたら、その日から国民の意思との節点はなくなり、

好きなことをしていいというものではありません。

今、国民の過半数が集団的自衛権に反対、

安全保障関連法案の今国会で成立させることに反対していますが、

こうした国民の声への配慮はありません。

「法治国家」であるかの点についてはさらに深刻です。

多くの専門家が違憲との判断をしています。

1. 内閣では、内閣法制局が、法律を国会に提出する前に、

憲法に違反していないか、過去の法律との整合性はどうなるか、審査しています。

憲法判断の最も重要な機関です。

その内閣法制局の大森、宮崎、坂田(少なくとも一時期)、角田という

4名の元内閣法制局長官が違憲ないし深刻な疑問の発言をしています

2. 山口繁・元最高裁長官「集団的自衛権の行使を認める立法は、違憲」と発言をしています

3. 憲法学者の約95%が違憲としています(長谷部早稲田大学教授の解説)。

 これらの違憲との解釈に、政府は説明する材料は持っていません。

 こうした状況下、学生の組織シールズの呼びかけを中心に、

反対の声を知らせるために、8月30日国会包囲の大デモが展開されました。

私も現場を見ましたが、10万人程度は参加しているであろうなという状況でした。

 これに対して、8月30日、NHKの午後7時のニュースは、

デモ参加者人数を「主催者発表12万人、警察発表3万人」と報じました。

この警察発表3万人という数字は実態の感覚とあまりにも異なりました。

 このような報道がある際には、人々は「主催者は大目に言うであろう。

警察は嘘までつかないであろう」と思うと思います。

かなりの人々はそのような判断をしました。

しかし、この報道にはからくりがあることが判明明しました。

実態を9月10日TBSニュースが報じました。

「国会では、先月末に国会前で行われた安保関連法案反対デモに参加した人の

人数をめぐる質疑が行われ、

警察側は“あくまでも特定エリアの一時点の人数だった”と説明しました。

“その3万3千人の根拠。どういう方法で3万3千人と判断したのか”
(民主・藤田幸久参院議員)

“警察としては全体の参加者の数を発表する立場にはございませんで、

あくまでも警察活動に必要な範囲で特定のエリアの一時点における人数の把握に

努めておりまして、それぞれの現場に応じた方法で人数の把握をしたということです”」
(警察庁・斉藤実審議官)

 12万人程度が参加したとなると、

1960年の安保騒動以来の大人数が国会周辺でデモしたことになります。

大変な政治的、社会的出来事ですが、

大手新聞は社説でその意義を論ずることはしませんでした。

 何故このような報道をしたのでしょうか。

 安倍政権にマイナスになるからです。

今や大手マスコミは

「時の政権にマイナスになるから、国民を誤解するように誘導し、

その重要性を過小評価する」ようにしています。

 こうしてみていきますと、日本の政治の問題で重要になればなるほど、

日本の大手メディアは歪んだ報道をしていることが解ります。

 ではどうしたらよいでしょうか。

 自分で判断する能力をつけることです。

 何かの出来事があったとしましょう。

 プラス評価とマイナス評価の根拠を列挙して対比してみてください。

この比較で「どちらの方が説得力があるか」を自分で試みてみるのです。

 幸い、ソーシャル・メディアが発達していますから、事実関係はどこかに出ています。

 その事実関係をプラス評価とマイナス評価に分けて比較する。

この訓練をぜひとも心がけて下さい。自ら判断を行うのです。

そうしているうちに、「この人は信頼できる発言をする人だな」と言う人が解ってきます。

 日本は今、「大手マスコミを信じていると、

間違った方向に連れて行かれる」時代に入っています。

 自ら考え判断しなければならない時代に入っているのです。

Reply · Report Post