★「景気が良くなる」という目先の利益に騙される愚ー(田中良紹氏)

新国立競技場の建設計画を巡る杜撰さが色々と明るみに出てきた。

7日に開かれた第三者検証委員会に提出された資料によると、

事業主体のJSC(日本スポーツ振興センター)が当初1300億円としていた工事費は、

オリンピック招致が決まる前から設計業者に3000億円超と見積もられ、

しかしそれでも招致活動は続けられた。

そしてIOC総会に乗り込んだ安倍総理は

「どこの競技場とも似ていない真新しいスタジアム」と

「確かな財政措置」を売りにオリンピック招致を勝ち取った。

ところが3000億円という数字が公表されると世論の批判が高まる。

そこでJSCは1300億円に近い「見せかけ」の数字を作るようになる。

今年の初めにゼネコンからも3000億円超と見積もられると、

JSCはそれとは別に2100億円の数字を作って文科省に報告していた。

おそらく「見せかけ」の数字で誤魔化しておけば

あとはどうにでもなると高をくくっていたのだろう。

森元総理が言うように

「日本国民は日露戦争勝利以来の喜びようだった」と考えているから、

ぎりぎりになって「オリンピックのため」と言えばどんな数字でも

国民は受け入れると思っていたのである。

まさか白紙撤回など考えてもいなかった。

従って白紙撤回にならなければこうした資料が公表される事もなく、

おそらく国民は3000億円の建設費で新国立競技場を造る計画に

同意させられていたはずである。随分と舐められた話だが、

しかし白紙撤回がなければ「見せかけ」の数字を使いながら、

最後は押し切る気でいたであろうとフーテンは考える。

安倍総理の拙劣というか傲慢な国会運営のおかげで、

初めて国民は安保法案に疑問を抱き、

関心を持ち始めるとますます疑問が湧いてきて、

それが「景気が良くなるなら安倍政権で良い」と考えてきた思考を変えさせた。

そして安倍政権に対する国民の支持率が下がらなければ白紙撤回は全くなかった。

フーテンは東京オリンピック招致が決まって日本中が浮かれた2013年9月とは

一体何だったんだろうと今更ながら考える。

あの時フーテンは「日本はやるべき順番を間違えていないか」というブログを書いて、

日本が最優先にすべき課題は大震災からの復興と原発事故の収束で、

そのために使う金をオリンピックに回すべきではないと主張した。

しかしフーテンのように考える人間は少数で、

大方の日本人は「これで景気が良くなる」、「アベノミクス第四の矢だ」、

「デフレから脱却出来る」と喜んでいた。

目先の景気に執着すると将来の損失に気付かない。

森氏の言う「日露戦争勝利以来の喜び」はその典型ではなかったかとフーテンは思うのである。

大震災からの復興に全力を挙げるべき時にオリンピックを招致すれば、

それがさらなる人手不足と資材の高騰を招き、

建設予算をいたずらに膨らませる事になる。

それは復興にとってもオリンピックにとってもマイナスの効果をもたらす。

それが3000億円という新国立競技場の想定を超えた見積もりにはっきり表れた。

本来は復興が終わるまでオリンピックを行わないのが一番よかった。

それを復興のための公共事業は景気を良くする、

オリンピックも景気を良くすると考えて逆に経費の高騰を招き、

被災地にもオリンピック事業にもマイナスを与えた。

愚かな考えであったとフーテンは思う。

森氏は「オリンピックの総費用は2兆円」と発言し、

フーテンはそれなら1%に当たる200億円がキックバックされる可能性があると

ブログに書いた。その中枢に森氏が会長として存在している訳だが、

森氏については昨年2月にアメリカのニュースサイト「デイリー・ビースト」が

「東京オリンピックはヤクザオリンピック」という記事を掲載した。

記事には日本オリンピック委員会副会長の田中英寿氏が暴力団と

関係を持っている事と森元総理も暴力団との関係が

メディアで報道された事があると指摘したうえで、

建設業界の利益の5%は暴力団に流れており、

田中氏や森氏が口利き役を果たすかもしれないという

日本の警察関係者の話を紹介していた。

この記事をフーテンはアメリカからの日本に対する警告と受け止めた。

バブルの時代に日本の金融機関がヤクザの餌食となり、

無利子で融資させた金でヤクザがアメリカの土地を買い漁った事がある。

アメリカはヤクザの入国を禁止するなど厳しい対応を採り、

ヤクザのために膨れ上がった銀行の不良資産を整理するよう

年次改革要望書で要求してきた。

その要求に応えたのは小泉純一郎政権だったが、

森元総理と安倍総理が猪瀬前東京都知事を追い落として

舛添要一氏を東京都知事に担ぎ、

舛添氏の出馬表明と森元総理の東京五輪組織委会長就任が重なる日に、

小泉氏は細川護煕氏の東京都知事選出馬の記者会見を共同で行った。

その日を選んだのは小泉氏で、

おかげで舛添氏の出馬と森氏の会長就任のニュースは影が薄れた。

フーテンはそれを「森、小泉、安倍のバトルロイヤル」というブログに書いたが、

今回の新国立競技場建設計画の白紙撤回を巡る動きには、

姿こそ見えないがそのバトルロイヤルの延長戦の臭いがする。

いずれにしても国民が「見せかけ」の予算に騙される事がなくてよかった。

できれば「景気が良くなる」という目先の利益に騙されなくなればもっと良い。

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