★朴大統領を罵倒した武藤正敏前駐韓国日本大使の衝撃-(天木直人氏)

発売中の週刊現代6月20日号に

前駐韓国日本大使である武藤正敏氏の独占インタビュー記事が大きく掲載されている。

 その内容は異常で衝撃的だ。

 なにしろ現在の日韓関係の悪化のすべての原因は、朴大統領の頑な態度にあるというのだ。

 その2時間に及ぶインタビュー記事は次の言葉で締めくくられている。

 「・・・条件なしに、安倍首相との首脳会談を行うこと。

50周年を機に日韓関係を改善させるには、それしか方法はありません。」

 驚くべき言葉だ。

 日本の責任は何ひとつないというのだ。

 この衝撃的なインタビュー記事で明かされた武藤大使の考えは、

すでに彼が最近出版した「日韓対立の真相」(悟空出版)で明かされている。

 ついこの前まで韓国駐在の日本国特命全権大使の任にあった人物が、

ここまで任国の現職大統領を罵倒するのは異常で衝撃的だ。

 果たして彼がこのような本を出版し、

その上週刊誌のインタビューに応じてさらに激しく朴大統領を罵倒する背景には、一体何があるのだろうか。

 私はこの週刊現代のインタビュー記事が出てからの数日間、内外の反応を見極めようと注視した。

 不思議な事に韓国政府の反応が無い。

 韓国国民も騒がない。

 日本政府もメディアも沈黙を守っている。

 武藤大使の言っている事は、安倍首相の考えをそのまま代弁しているかのごとくだ。

 さては安倍大使のお墨付きを得た上での、朴大統領に対するけん制なのか。

 そして韓国側の反応を試しているのか。

 韓国がそれに対し、直ちに反応を示していないのは、ついこの前まで大使をし、

日韓関係改善に尽力してきた武藤大使に裏切られた衝撃で、

どのように対応していいのか戸惑っているからなのか。

 武藤大使は温厚な人柄で、韓国に対しては友好的であったはずだ。

 あるいは、もっと穿った見方をすれば、

この武藤大使の朴批判ですべてを打ち止めにして、

日韓関係改善のきっかけにすると言う両国政府の高等戦術があるのか。

 そういえば、きょう6月13日の各紙が報じている。

 朴大統領は11日、ソウルで米紙ワシントンポストのインタビューに応じ、

慰安婦問題をめぐる日本との交渉は「相当の進展があった。

今は最終段階にある。我々は意味のある国交正常化50年式典を期待できると思う」と述べたと。

 いや、そんなことはない。

 武藤大使は私より3年後輩であり、駆け出しの頃の仕事仲間だったからよく知っている。

 私が外務省で最初に手掛けた大仕事が日韓経済問題だった。

 まさしく日韓国交正常化の置き土産で合意した経済協力(賠償)の資金が、

両国政府の闇金になっているという疑惑が日本の国会で大問題になった時、

韓国で研修を終えて実務についたばかりの武藤君と、

本省で対韓経済協力を担当していた私との間で、毎日のようにやり取りをした仲だ。

 その時の武藤君は、人は温厚でいいのだが、思い込みが強く、軽率なところがあった。

 なんど命令しても思うような対応をしてくれなかった。

 今度の出版本やインタビュー記事は、案外、彼の独断で行ったものではないのか。

 日韓両政府は、その対応に頭を痛めているのではないか。

 このまま日韓両政府が沈黙を続けるなら、

お互いに、この武藤発言を黙殺したいということではないのかと思う。

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