★安保法制案の国会審議をまともに報じないメディアの責任-(天木直人氏)

わずか二日間の国会審議であったのに、もう審議ストップだ。

 その直接の原因は外務官僚の言いなりになって迷走答弁を繰り返す岸田外相だ。

 しかし本当の原因はそれではない。

 もはや安倍政権の答弁は完全に行き詰ったのである。

 もし野党が本気で安保法案を廃案に追い詰めるのなら、直ちに国会再開を求めるべきだ。

 馬鹿のひとつ覚えのように、安倍首相の集団的自衛権行使容認の矛盾を追及すれば、

安倍政権はかなり深刻な状況になる。

 それは安保法制案の衆院特別委員会が開かれた後の最初の日曜日である、

きのうのテレビの政治番組を観ても分かる。

 NHKの政治討論は三流議員が出演しておしゃべりを繰り返していたが、議論が空回りしていた。

 それも織り込み済みのような緊張感のない番組だった。

 お笑いだったのはTBSの時事放談だ。

 高村正彦と藤井久裕という現・元自民党の重鎮が出て、話し合っていた。

 おどろくべきは藤井久裕の発言だ。すべては個別自衛権で説明できるのに、

無理をして集団自衛権行使容認の為に安保法制案をつくっている。

それが矛盾している事は高村さんも知っているはずだと本音を語り、

それに対して高村氏はぐうの音もでなかった。

 それでも、まだ安保法制案の成立は無理筋だ、という大勢にはなっていない。

 なぜか。

 その最大の理由は大手メディアが安保法制案の国会審議を正しく報じないからだ。

 それを見事に象徴していたのが5月30日の読売、産経、日経の社説であった。

 すなわち読売は「専守防衛の本質はかわらない」と安倍首相の答弁を繰り返し、安倍政権を擁護していた。

 何を矛盾したことを言ってるんだ。

 専守防衛の本質が変わらないというのなら、安保法制改革法案など不要であるはずだ。

 産経新聞は「抑止力をそぐ議論に陥るな」と書いていた。

 何をふざけた事を書いているんだ。

 安倍首相の覚悟のなさこそ、抑止力をそぐ最大の原因だろう。

 日経新聞は「安保は感情論でなく理詰めで論議せよ」と書いている。

 お笑いだ。

 感情論で議論しているのは安倍首相の方ではないのか。

 大手メディアが、もはや安保法制案は無理だと言い始める時が来るだろうか。

 私はそうは思わない。

 日米同盟はまだ揺らがない。

 ここまで安保法制案の矛盾が露呈しても、強行採決で成立するだろう。

 政治が動くとすればその後だ。

 来年の参院選は、おそらく衆参同時選挙となって、日本の政治の戦後史の大きな分水嶺となるだろう。

 どうしようもないつまらない政治状況が当分続くような気がする。

 しかし、それは嵐の前の静けさかもしれない。

 政治の世界は一寸先は闇である。

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