投資家対国家紛争解決(ISDS)Q&A(仮訳)(ホワイトハウスブログより) #TPP


投資家対国家紛争解決(ISDS)Q&A

Jeffrey Zients
February 26, 2015 03:00 PM EST

ウォレン上院議員がTPP協定の中の一つの要素であるISD条項に関しいくつかの重要な疑問を提示した。

問いには良い答えが存在する。
我々の貿易協定に含まれる投資条項は海外で活動するアメリカの個人および事業に、合衆国内で米国および外国の投資家に対して与える保護と同じ保護を与えるものだ。
ISD条項は仲裁手続きのことで、世界中で行われる日々の事業や、自治体、そして個人の市民が似たような手続きを使っており、中立的で法律に基づいた方法で紛争を解決し、開発と法治主義、そして世界のよい統治を推進するためにを促すために重要な役割を果たしてきたものだ。ISD条項は米国の主権を損ねたり、米国の法律を変えたり、多国籍企業に対して何か新しく実質的権利を認めるようなものではない。
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実際には、ISD条項は法律や規制を変えろと要求しない。
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ISD条項はお粗末な協定文の書きぶりによる法的な訴訟が起こることが原因で批判されてきた。我が国も同様な懸念は共有しており、新しく、より高度な基準と強いセーフガード、そしてより透明性の高い条項が必要であることに賛同している。TPPや他の協定を通じて、我々が取り入れようとしているものが正にそれだ。
頻繁に取りざたされるが、正確ではない苦情に、ISD条項は企業が労働基準や環境基準を弱める権利を与えるものだというものがある。そして例えば、貿易協定の結果、アメリカが最低賃金を下げなければいけなくなると示唆している。
実際には、ISD条項で法律や規制を変えることを要求することはできない。より広範囲に見ると、TPPの結果、ほとんどの参加国で労働者と環境の保護の水準が現在より高くなるだろう。もしTPPが議会を通過すれば、米国の労働組合やその他利益団体が、労働に関する約束を誠実に守らない我が国や他のTPP参加国の政府に対し、請願による働きかけをすることが許されるようになる。同じことが環境に関する約束に強制力を持つと言える。
同様に、TPPの投資条項はアメリカの投資家を差別や正義の否定などから保護するように設計されている。
我々の憲法の下、政府は個人の財産に影響があるとしても、公共の利益のために規制をかける広範な力を持つ。しかし政府がそうした市民の財産を取り上げるに当たっては、それが家であろうとビジネスであろうと、補償を提供することが求められる。これは合衆国憲法を反映した核となる原則であり、国際法や多くの国の司法システムでも認められている。
残念ながら、他国の法廷では必ずしもこの原則が尊重されているわけではなく、アメリカの投資家が海外でしばしば偏見や差別などの高いリスクに直面することがある。そのため政府は数世紀もの間、そうした紛争を解決するために国際仲裁に頼ってきた。
かつて米国は海外における我が国の経済的利益を守るために軍事力を派遣する砲艦外交を行ってきた。先人が、代わりに中立的な仲裁人に頼る方が良いという決断をしたのだ。
過去150年に渡り、180の国々が3,000以上の投資家を保護する条項のある協定を結んでおり、その多くが中立な仲裁人を採用している。欧州の国々は1,400ものこうした協定を結んでいる。米国は40の協定に関与している。
数千にもなるこれらの協定の基準はかなり広い差があり、あるものは政府が規制をかける権利を強く守り、あるものはそうではない。アメリカは最先端の更新を行い、更新することでより良いものにしてきた。規制をかける権利を保護し、過去の協定から学んだ教訓を取り入れ、我々の協定が考え得る最高の基準を持つことを担保してきた。TPPはその努力に基づき、以下の内容を取り入れることで、これまでのものを超えるものとなった。

 より高い基準:TPPは政府が健康・安全・環境を含む公共の利益に関し規制する権利を持つことを完全に明確にし、投資家がどのような被害であれば補償を求めることができるかを綿密に定義づける。
 セーフガードの導入:TPPは無分別な申立てを素早く免訴し、申立人に費用を請求することで、こうした訴訟を思いとどまらせることができる。これにより政府はのある方向性を仲裁人に与え、金融サービスに関しては追加の選別フィルターを設けることができる。
 法の抜け穴をふさぐ:例えば、TPPは協定による投資保護をペーパーカンパニーなどが利用することを防ぐだろう。
 透明性の創出:TPP協定の全ての仲裁手続きは公開され、労働組合や市民グループなどを含む当事者以外が裁判の結果に関する概要に関する声明を出すことができる。

(紛争解決手続きを持つ)これらの協定を結んでから30年、米国に、対する判決は13件。対照的に、同じ期間で我々の国内の手続きで、個人や企業が連邦政府、州政府、地方自治体に対して米国の法律に基づき米国の法廷に持ち込まれた訴訟は数万件にもなる。
米国の強いセーフガードに対する態度により、我が国は投資家対国家紛争解決手続き(ISDS)で一度も負けたことがない。
そして我々は協定毎にこの基準を上げ続けているため、投資のレベルは増加しているにもかかわらず、近年ISDSの申立ての数は減っている。
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TPPを通して我々は新しい基準、より強いセーフガード、そしてより良い透明性条項を導入することができる。
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真実は、申立人が我々が結ぶ協定で勝利することは難しいため、もし彼らが法的申立てをしようとする場合、国内の法廷に持ち込む傾向があるということだ。
ウォレン議員が提示した個別のケースは、ほとんどが米国が交わした協定ではなく、異なる基準に基づいたものだが、それぞれにおいて教訓となるものだ:
 ウォレン議員の論説で挙げられた唯一の米国のケースは、ガソリン添加物に、カナダの企業だけが生産する化学物質の使用を禁止するという規制が敷かれたものだ。仲裁委員会は政府寄りの立場を取り、政府が外国投資家に対して責任を負わせることも含め、公共の目的のための規制を行う権利を重要視し、投資家は環境や健康に関する規制を変えることを望んではいけないと指摘した。
 フランス‐エジプトのケースは2つの点で教訓となる。まず、我々はこの内容について良く分かっていない。なぜなら事実と概要が公開されていないからだ。我々の提案により、この問題に透明性が生まれる。次にこのケースから分かることは、最低賃金が引き上げられたという事実があるが、むしろ政府に対する申し立ては、約束した操業費用の負担割合を守らなかったことに対するものだ。
 スウェーデンのドイツに対する裁判も教訓となる。ここでも、裁判の詳細は公開されておらず、ここは米国の協定に沿ったものとは異なっている。しかし、手に入る情報で分かるのは、論点はドイツが国のエネルギー政策を原子力発電から変更することができるかどうかではなく、ドイツが方針を変えることで、現在の事業を廃止するための補償が必要かどうかであるようだ。これらの問題に関するドイツの電力会社による申し立ては、ドイツの国内法廷でドイツの法律よって公判が維持された。このケースも教訓となる。なぜならスウェーデンの会社が申立てをドイツ国内の法廷と、中立な仲裁人を通すものと両方行ったからだ。我々はこうした(有利な裁判所で訴訟を提起するための)法廷地あさりを防ぐための改革を行おうとしている。
 オランダの銀行によるチェコ政府への訴訟は、我々がTPPで提案しているものとは異なる基準の投資協定だ。我々のやり方は、より厳しく中でも金融システムを守るための健全な政策を摂る権利を確保するものだ。ウォレン上院議員は訴訟を裁く仲裁人が政府に反対する偏向があるとして彼らの誠実さについても疑問を呈した。実際は、ISDS委員会は被告である政府側に立つ頻度の方が高い。例えば米国政府はかつて全てのケースで訴訟に勝ってきた。
TPPで採用される仲裁のルールは仲裁人に独立性を求め、利益相反や変更が認められる場合には資格はく奪の申し立てをすることもできる。また、訴えられた政府側がどの仲裁人が取り扱うかを決定する中心的な役割を担うことになる。
我々はウォレン上院議員が提起した懸念の多くを共有している。しかし、我々が彼女の言う、基本的な法律に関するルールと保護を設定して後は市場に任せるべきという主張には賛同しない。それでは過去に上手くいかなかったし、政府には果たすべき役割があるからだ。
我々は他の国の間で交わされている3,000以上にもなる協定を変えることはできない。TPPがあろうとなかろうと、それらの協定のほとんどは存在し続けるだろう。しかしTPPを通して、我々は新しい、より高い基準の強いセーフガードとより良い透明性条項を組み込むことできるのだ。
これがまさに我々が行っていることである。

ジェフ・ズィエンツは国家経済会議議長である。
(了)

原文(英語):http://www.whitehouse.gov/blog/2015/02/26/investor-state-dispute-settlement-isds-questions-and-answers

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