aomidoro3

赤かっぱ · @aomidoro3

13th Nov 2014 from TwitLonger

@asng25 @sailorsousakuTL 反省文あさいおお納めください



 いつも冷たい体が、今だけでも熱いのが救いのように感じた。



「ん…。っふ…」
「ちゅっ、はぁ…。あむっ…」

 寒いはずの狭いワンルーム。いつもは布団をかぶったってなんとなく寒さの残る部屋なのに、触れ合う体はお互いの温度差がないくらいに熱く、詰まったようにこまめに吐き出される溜息のような吐息はやたらと湿度が高い。
 薄いカーテンから差し込む弱い月明かりしかない暗闇で、とっくに慣れた瞳はしっかりとお互いの姿を認識していた。

「あぐっ…。雨沢…全然太らないね…」
「んんっ!そんな…簡単に太れたら…苦労せぇへん…っ」

 平たくて少し短い舌が、骨のくっきり浮き出た胸部を這う。一瞬唾液でぬれて乾いたそこを冬の外気が責めたてるが、そんなの関係ないほどに、組み敷かれている雨沢伊織の体は熱い。少しだけ感触の違う手術痕を丹念に舐めあげ、肋骨の一本一本を確かめるように触れ、舐られた体はもうどうしようもなく火照っていて、伊織はただ受け入れることしかできていない。
 そんな伊織の骨ばった体を味わっているのは、骨の数を触れながら数えては嬉しそうにしている草薙朝美。実験そしているときと似ているようで少し違うぎらついた瞳は、目の前の伊織しか映してはいなかった。骨格の好きな朝美にとって、触る前に見て分かるほど痩せた伊織の体は、恋人というひいき目を抜きにしても美しいと感じえるものらしい。

「朝美は…」
「ぺろっ…ん?」
「ぼくの骨、好きやなぁ」

 熱くなりすぎたせいかぼんやりしている瞳が、ゆらゆらしながら朝美を見やる。水槽を通した太陽の光にみたいに揺れる瞳は、そのまま朝美の心臓を揺らす。

「好き…。でも、骨だけじゃない」
「うん…」
「雨沢が…伊織ががんばったこの手術の痕も、ちょっとわかりにくい胸のふくらみも、猫背気味で丸い背中も、全部好き」
「う…んっ」

 つるつると言葉のままに指が体をなぞっていく。ぎりぎりまで高ぶった体はその幽かな刺激にもびくびくと反応してしまう。そのたびに骨が浮き出る角度が変わる。その芸術的とも感じられる体をもっと味わいたい。そして、そのたびに変わる伊織の反応、声、表情。全部みたい。全部知りたい。

「ねぇ…伊織」
「はぁ…はぁ…っ。なに…?」
「足も…舐めていい?」
「あし…足?足!?」
「アキレス腱、きれいに浮き出てる。ああでもやっぱり、筋肉量は少ないんだね。がぶっ」
「あ、あかんそこきたな…っ痛!」
「運動してないからかな…膝も綺麗」
「いぁっ!んん…!」
「伊織、全部見せてよ。ねぇ、いいでしょう?」

 いいでしょう?なんて聞きながら、すでに伊織の右足のふくらはぎを甘噛みしている朝美はやめる気なんてさらさら無いようにしか見えない。それでも一応聞いてくれるのは、朝美にとっての伊織に触れるルールらしい。かつて、解剖させろと廊下で誘拐された身としては冗談にしか聞こえないけれど、恋人になったんだからと真っ赤な顔で宣言してくれたことを今でも思い出す。思い出して、許してしまうのだから朝美はずるい。

「…ええよ。わかった…。でも、」

 優しくしてな。という声は、伊織自らの嬌声で掻き消えてしまった。

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