@sailorsousakuTL #軽率に紺さま(ついでに鴨)に報復したい修学旅行二日目の夜のアレ。


鴨美南さんのこれhttp://www.twitlonger.com/show/n_1sdkgi8 と
紺様のこれhttps://twitter.com/arroz_arco/status/530021541052837889/photo/1
を受けての小話。





 ごそ、と間近で誰かが身動ぐ気配に眠りの裡にあった意識が浮上した。
「――…」
 片目だけそっと薄く開けば、薄闇の中に見慣れた顔がある。
 ……まあ、そうじゃないかなとは思ってたけど。
 どうにもやっぱり、寝付けないで居るらしい――美南は昔から、一緒に行った家族旅行や小中の修学旅行でもそう、環境や枕が変わると眠れない神経質さを持っていた。普段の傲岸不遜大胆不敵さはどこ行ったと言ってやりたくもなるけど、こればかりは生来のものだし、仕方ないっちゃ仕方ない。
 とはいえ昨夜のホテルでも眠れなかったらしいのに、今日もこんな調子じゃ起きてからが大変だろう。せっかくの修学旅行、寝不足で倒れましただんて目も当てられない――それに、だ。
 なによりこんな調子でいられちゃ、一緒の布団で寝る羽目になったあたしまで熟睡できない。
 耳を澄ませば部屋にいる他のメンバーの健やかな寝息が聞こえてくる。例外は目の前で向かい合うようにしているこの手の掛かる腐れ縁の幼馴染みだけ。
 ……ったくもう、本当に手の掛かる。
 はあ、と溜息を零す。と、ようやく美南はあたしが起きていることに気づいたようだった。
「――っ」
 小さく息を呑む気配と、それから視線で『ごめんね、起こした?』と伺ってくるのに、あたしは声に出さずに『ちょっと頭浮かせろ』と唇だけを動かす。
『は? ――何を』
『あーもう、まどろっこしいな。いいから早くしろって』
 こっちは中途半端に起きちゃったせいで眠いんだっての。
 もう一度視線で促すと訝しげな顔をしながらも少しだけ美南が枕に預けていた頭を浮かす――その、空いたスペースに左腕を潜り込ませて、そのまま後頭部を抱え込むように少しだけ引き寄せる。
『――ッ!? ちょ、みか、な、なに』
 流石に狼狽えた美南の小さな声が聞こえるけど黙殺する。
『あのなあ。寝不足で明日倒れられても困るんだよ――だから、一つ貸しな』
 言いながら右腕で背中をとんとんと軽く叩いてやると強張っていた体から力が抜けていくのがわかる。
 二人分の体温を吸収した布団はただただあったかくて、とろとろとまた瞼が重くなってくる。
『……ん、じゃあ、お願いしよ、かな』
『おー』
 観念したように小さく溜息を吐いた美南が自分で頭の位置を微調整して――久しぶりに左腕に掛かる重さにまた声に出さずに笑う。
 さっきまでの眉間に皺が寄った顔じゃなく、健やかに穏やかな寝息を立て始める昔とちっとも変わらない寝顔を最後に見届けて、あたしも瞼を閉じた。

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