aomidoro3

赤かっぱ · @aomidoro3

25th Oct 2014 from TwitLonger

@sailorsousakuTL リノリウム とりあえずまとめたかったいおふみ やりたい放題ごめんなさい



 思えばすべてが軽率だったんだ。

「ぅがっ…。ひゅっ…ひゅぅっ…」

 居場所を求めて、ふらふら引き寄せられるように部員募集のチラシを見つけたのは、もう二か月前になるんだろうか。

(おや、オカルト研究部にご用ですか?オカ研はいつでも活きの良い実験た…こほん。若き真理の探究者をお待ちしています!)

 そう言われて骨ばった手に肩を掴まれ微笑まれたのが、まだたった二か月前という事実に思わず笑ってしまう。あのとき確かに温もりをくれた手に付けられた、鈍い痛みに腹部を押さえた。いったいどこに響いているのか、じくじくとした痛みは呼吸を抑制しているようだ。なんとなく落ち着いてきた呼吸が、黴臭い埃を吸い込んでしまってまたひどくむせこんでしまう。すっかり慣れた低酸素特有の浮遊感を目を閉じてやり過ごす。

(ねえ×××××。いつでも、ここに来ていいんだからね?)

 優しい言葉がよみがえる。でもその人の隣にはもう誰かがいて、その人のためにぼくが近寄らないほうがいいなんてことは、いくら察しの悪いぼくでもわかってしまって。
 ひとりじゃ立てないぼくには、どんなものでもいいから支えが必要だった。そんな甘えが、こんな結果を導いてしまった。

「こんなところでかくれんぼですか?死に損ない」

 乱れてた呼吸が自然と止まる。目を開けて声の主を見る前に、胸に強い衝撃があって冷たいリノリウムの床に押し倒されていた。

「なにを思って体育倉庫なんかに入っちゃったんですかねぇ。私はいつでもどこでもあなたを見つけてあげられますよ?それともそれを試したんですか?」

 ぐぐっと胸に伸し掛かる体重が増やされる。肺が膨らまなくて息が苦しい。でも、抵抗なんてできない。
 しては、いけない。

 どうにか目を開いて、ぼくの体を踏む彼女を見やる。手と同様に骨ばった素足でぼく心臓を押さえている前髪の長い彼女。板野文佳。オカルト研究部の部長。
 いつも胡散臭い微笑みを絶やさない彼女は、ぼくの前では温度さえ下げそうな無表情だ。そして頑なに隠している左眼は、

「でも、今回のお遊びは楽しかったですよ?思わずちょっと本気で探しちゃいました。あなたでも、いつもいるものが視界から消えると落ち着かないものなんですねぇ」

 事の始まりに見てしまった時と同じく、ぽっかりと何もない。そう、あの日軽率に、珍しく部室で居眠りをしているこの髪をめくってしまわなければ、こんな関係は始まらなかったんだ。
 いつまでも一人、それ以上を望まずに済んだのに。
 その何もない左眼で、ぼくだけ見てくれると知ってしまわなければ。

「っていうか、あなた昨日病院の日だったのでしょう?そんなに脆い体なのになにサボってるんですか。そんな簡単に死なれてしまっては困ります。今からでも間に合うんでしょう?行きますよ」

 彼女のためのおもちゃとして、長く使えるようにメンテナンスを受けている。それでもよかった。彼女はぼくを見てくれる。他のだれのことも見ていない、その左眼で。

「次はどんな風に楽しませてくれるのか、期待せずに待ってますよ。雨沢さん」

 首に掛かる不可視の真綿が締まる音がする。
 記憶よりも冷たい、相変わらず骨ばった手に引かれて、リノリウムの体育倉庫から出た。

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