aomidoro3

赤かっぱ · @aomidoro3

10th Oct 2014 from TwitLonger

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「う、うわぁ…」

 美南は絶望していた。この、圧倒的な差に。

「なにしたらここまで育つんだろう…。なのにアンダーはぴったりって…。泣きたい…」

 美南が当てているのは、紫歩のブラジャーだった。薄紫色の、華美ではないが可愛らしい程度にあしらわれたささやかなフリルの、ごく一般的なブラジャー。それをこっそり当ててみた美南は、その胸部のぶかぶか加減に絶望していた。あまりにもぶかぶか。自分で下を見たら、浮いた布との隙間から自分の胸が見えている。ブラジャーとしての役割を果たしていない。

「絶望ってこんなに近くにあるのね…」
「美南っ」
「きゃっ!?紫歩!?」

 そんな風に美南が落ち込んでいると、背中に仄かな温もりと柔らかい感触。風呂に入っていた紫歩が上がってきたのだろう。これから寝るために、紫歩は薄いパジャマを着ていて、背中から伝わる感触を察するにつけていなかった。
 そして自分は、上半身裸で紫歩のブラジャーを付けていて…。

「…なにしてるの?」
「いや、その、これは…」

 言い訳のできない地獄に思考が止まる。座っている美南に飛びついたために、紫歩は美南を後ろから、そして若干斜め上から見下ろしているわけで。

「あら絶景」
「~~~っ!」

 ぼわっと湧いた羞恥心が一気に体温を上げて、思わず胸を隠す。後ろから、残念という声が聞こえた。

「可愛いことしてるのね?」
「そ、その…ちょっと興味があっただけで…」
「試してみてどう?」
「大きい…わね…」

 紫歩は抱き着いたまま離れない。上のパジャマを脱いでしまっている以上、隠すものは自分の手しかないわけで。

「その、もういいから、脱ぐから離して…」
「えぇ?こんなに美南がかわいいのに?」
「恥ずかしいの…」

 思わず美南が俯くと、紫歩はひひっといつものように笑った。笑って、美南の手ごと抱きしめた。

「気にすることないって言ってるのに、かわいい」
「…仕方ないでしょう。気になっちゃうんだもの」
「前にも言ったけど、私前まで自分の体って嫌いだった。でも美南が好きって言ってくれたから、好きになれたの」

 そしてもう一度、ぎゅうっと強くだきしめられる。

「美南。あなたの薄いのに確かに柔らかい体が好き。抱きしめると暖かくて、心臓の音が聞こえると安心するの。今までこんなに近くに人がいて、安心なんてしたことなかったのに。あなたなら落ち着いていられる。深く眠れる。どんな私でも受け止めてくれる、あなたが大好きよ」

 そんなことを、耳元で言うものだから。

「ひひっ。ちょっとかっこよすぎたかしら?」
「ほんとよもう…。勘弁してちょうだい…」

 今度は真っ赤な顔を見られたくなくて、俯いてしまうじゃないか。

 確実に耳どころか首まで赤くなっているだろうことに、紫歩が気付いていませんようになんて。無理な願いをするしかない。

「さて…そろそろ寝よう?なんて雰囲気じゃなくなっちゃったわね」
「そうね。全く」
「じゃあ…」

 不意に紫歩の温もりが背中から離れた、と思ったとたん。
 美南は体を少し強めに押された。驚いてしまって、そのまま前向きに倒れこんでしまって、現状が飲み込めていない美南の背中のくぼみに温かく湿ったものが触れる。

「ひっ!?な、なにを…」
「私の胸を覆ってたもので美南の胸が覆われてるって、なんだか興奮しない?」

 そんなことを言われてしまえば、否が応にも想像してしまう。間接的に胸が触れあっている情景を。

「ねぇ。気になるなら私が大きくしてあげる」
「えぇ!?」
「こういうことすると女性ホルモンが高まってって言うじゃない?」
「それには科学的根拠はない…むぐっ」

 体を優しくひっくり返される。そして、うるさいと言わんばかりに問答無用に唇を塞がれる。優しいのに、重い。

「じゃあこうしましょう」
「え…?」

「私がどれだけ美南のことを好きか、証明してあげる」

 その笑顔が眩しすぎて憎たらしい。

「お手柔らかに、お願いします…」

 ピッという電子音で真っ暗になった部屋に、柔らかい月の明かりが差し込んでいた。


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