成人男性の女装コスプレ写真にまつわる問題と児童ポルノ法が内包する問題について


以下の2つのまとめ

誤解されやすい児童ポルノではなく【児童性虐待記録物】と呼ぶべき -
http://togetter.com/li/677618
【成人男性による女装写真は児童ポルノなのか?】
http://togetter.com/li/677674

から派生して、私の言った幾つかの部分が問題になってるっぽいから、この際長文で解説しとこう。

先ず『成人男性の女装コスプレ写真が児童ポルノと認定されるか』ではあるが、まとめに記載の写真の表現においては
【被写体が確実に成人男性である事を客観的に証明出来なければ、外形基準によって児童ポルノ(一号ポルノ)と認定される可能性が高い】
と言える。


※一号ポルノとは【児童買春、児童ポルノに係る行為等の処罰及び児童の保護等に関する法律】の第二条三項の一号に規定された児童ポルノである。

第二条
 3
  一 児童を相手方とする又は児童による性交又は性交類似行為に係る児童の姿態
  二 他人が児童の性器等を触る行為又は児童が他人の性器等を触る行為に係る児童の姿態であって性欲を興奮させ又は刺激するもの
  三 衣服の全部または一部を着けない児童の姿態であって、殊更に児童の性的な部位(性器等若しくはその周辺部、臀部又は胸部をいう。)が露出され又は強調されているものであり、かつ、性欲を興奮させまたは刺激するもの

※児童ポルノというと俗に『三号ポルノ』のみが話題になりがちだが、一号二号も忘れてはならない。


第一の問題は、児童ポルノか否かの判定は飽く迄も『警察や裁判所という第三者機関が行なう』という点にある。
この時点で『第三者機関』は、『映像として写っている絵面の状況から判断する』事になる。
(つまり飽く迄も『見た目』=『外形的な基準』で判断する)
『絵面の外の状況』は考慮するに値しない。
何故ならば『写っている範囲では着衣の状態の児童』ならば、例え画面外では裸体であろうとも『証明が不可能』だからだ。
仮にそんな『画面外の事情を考慮して』となってしまえば、同じ写真であっても児童ポルノに該当したりしなかったりするという事例が発生してしまう。
例えば女児がスカートを履いている写真がある。果たしてその写真だけで、この女児がスカートの下に下着をつけているかどうかが解るだろうか?
その写真の背景に仮に、隠微な雰囲気が漂う小物などが置かれていたとしても『スカートの下に下着を着用しているかは解らない』のだ。
この女児がスカートの下に下着をつけていた場合、コレは明らかな冤罪となる。
而も、その冤罪を証明可能なのは当の撮影に立ち会った者のみとなってしまう為、警察は幾らでも嫌疑を持てる事となる。
コレはあまりにもマズイ。
だからこそ、児童ポルノに該当するか否かは飽く迄も『写っている絵面(外形的基準)』のみが問題となる。

高松高裁で行なわれた児童の性的虐待についての裁判で『【着衣の女児の頭部に射精した写真】は三号ポルノではない』としたのも上記の理由だ。
裁判を進めていく中で、当時の女児は『下半身が裸であった』事が判明したが、写真の範囲(つまり上半身)は『着衣だった』ので『三号ではない』とされた。
だが勘違いをしないで欲しい。
『三号ではない』とされただけで、この写真は『一号ポルノに該当する可能性がある』とされており、またこの撮影自体も『児童ポルノを製造した』とされている。
つまり、『児童ポルノだけれど、三号ポルノには該当しない』とされただけなのだ。


そして、そこから導き出せる第二の問題。
それは『画面外で何をしてようと、写っている画面で問題がなければ児童ポルノにはならない』という事だ。
画面外で何をしていようが、それが写っていないならば問題がない。
アイドルのIVなどで少し昔にあった事だが、『扇情的な表情』を撮るために『画面外で性交をしていた(所謂ハメ撮り)』という事例があった。
無論、その状況は一切画面に映る事が無かった(映ったらAVになってしまう)ために誰にも気付かれず、後日モデルが告白するまで発覚しなかった。
ある訳が無いと信じたいが、JrアイドルのIVでこんな事例が全く起こり得ないとは断言出来ない。
そして、現在の児童ポルノ法ではこの様な事例があったとしても(現行犯以外では)取り締まることも出来ないのが現状だ。
ハッキリ言ってしまえば、『見えない場所でなら何をされたとしてもお手上げ』なのだ。


そして、私はこの掲載写真について
 【児童がモデルだったなら一号ポルノになる】
と発言した。SM=緊縛が『性交類似行為』だという理由でだ。
確かに成人ならばSM写真は『性交類似行為』にはならないだろう。
然し、児童がモデルの場合には話が異なる。
先ず【児童福祉法】の三四条一項六号では『児童に淫行をさせる行為』を禁止している。

第三四条 何人も次に掲げる行為をしてはならない
  六 児童に淫行をさせる行為

そして、この『淫行』とは最高裁判例によれば

【性交(SEX)】
【男女間の性交の姿態を模して行う手淫、素股その他の性交類似行為】
【同性愛的異常性欲満足の対象として手淫その他の異常性行為】
【男色行為】

などが含まれるが、この事例は対象が児童の場合になるので【青少年健全育成条例】をも視野に入れるべきだろう。
【青少年健全育成条例】では、性交/性交類似行為を指す『みだらな性行為』、それ以外の『わいせつな行為』と分かれていたが、『わいせつな行為』が『みだらな性行為』を含有する関係にあるとの判決が出たので、青少年や児童においては

【いたずらに性欲を興奮又は刺激させ、かつ、普通人の正常な性的羞恥心を害し、善良な性的道義観念に反する行為】(前述判例より)

を『わいせつな行為』としてしまっても良いのだろう。
さて、こうなるとその【いたずらに性欲を興奮又は刺激させ~善良な性的道義観念に反する行為】とは何か。
ここでは【風俗営業等の規制及び業務の適正化等に関する法律等の解釈運用基準】(http://www.npa.go.jp/pdc/notification/seian/hoan/hoan20140327-2.pdf)を見てみよう。
この中の『第7 映像送信型性風俗特殊営業の定義について』においてに非常に興味深いことが書いてある。

青少年保護育成条例等を制定している都道府県においては、著しく性的感情を刺激し、少年の健全な育成を阻害するおそれのある図書を有害図書として個別に知事が指定し、その販売等を規制しているが、多くの条例においては、更に一定の図書を包括的に有害図書とする制度を設けており、その基準として、図書については、全体の2割が次の内容であることを規定している例が多くみられる。
そこで、一般的には、客に見せる映像の中に次の映像がおおむね2割以上含まれている場合には、「性的好奇心をそそるため」のものであると評価することができると解される。
(中略)
② 性的な行為を表す場面で、次に掲げるもの 
 (iv) 変態性欲に基づく性行為

この箇所に注目をし、仮に児童がモデルであるならば、成人よりも更に厳しい範囲で『わいせつな行為』が規定されるものと思われる。
仮に『性交類似行為とまでは言えない』としても、ほぼ同類項ではないかと思われる。


更に言うならば、前述の【児童福祉法】における『淫行をさせる行為』とは最高裁判例によれば

【児童に淫行を強制する行為のみならず、児童に対し、直接であると間接であると物的であると精神的であるとを問わず、事実上の影響力を及ぼして児童が淫行することに原因を与えあるいはこれを助長する行為をも包含するものと解される】

とされる。
よって、仮に『児童そのものが興味を抱いて緊縛の姿態を撮影した』としても、その姿を撮影するという『事実上の影響力を及ぼしている』のだから『淫行をさせる行為』となる。
そして、これは即ち一号ポルノの【児童を相手方とする又は児童による性交又は性交類似行為に係る児童の姿態】と言っても良いと思われるのだ。

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