#掛算 筑波大附属小「算数授業研究論究 分数を究める」の、前田一誠氏(広島大附属小)の文章が、ものすごくすさまじいです。

東洋館出版社 算数授業研究 VOL.92 算数授業論究 2014(平成26)年 論究VI 分数を究める
企画・編集 筑波大学附属小学校 算数研究部
p.34~35 分数における子どものつまずき① 割合分数と量分数の意味の混同
「意味の混同はどのように起きているのか」
広島大学附属小学校教諭 前田一誠


 p.34~35の文章を全て引用します。とにかく独特の書き方で読みずらいのです。断片的に引用しているから、何を言っているのか分からないような文章になっているのではありません。

> だいきくんは、2Lあるジュースの1/4を飲みました。
> ゆりさんは、1/4L入りのジュースを2本飲みました。
>
>  この2人が飲んだジュースの量は同じなのだが、子どもは、だいきくんとゆりさんの場面や「1/4」という分数をどのように表すのだろうか。
>  分数の意味は、分数それ自身が、割合の意味を含んでいる。このことに注意が必要だ。だから、子どもは、割合分数と量分数の意味を混同してしまう。
>
> 1.割合分数と量分数
>  量分数とは、「1Lの水を3等分したときの1つ分の体積を1/3Lと表す」とか「1mのテープを3等分した2つ分の長さを2/3mと表す」といったようなものである。1/3Lや2/3mのように、ある単位を用いて測った量の大きさを表す分数を量分数という。目に見えて、実際に存在する量を表したものである。
>  量分数とよく似ているのだが、「1Lの1/3」や「1mの2/3」のような分数の使い方が他方である。この1/3や2/3のように、ある量の割合としてみられる分数のことを割合分数という。割合分数は、比の第2用法の形式で言えば、(基準量)×(割合分数)=(比較量)で、2量の関係を表したものである。割合分数は、目には見えないもので、実際には存在していない。
>  量分数が量の絶対的な大きさを表すのに対して、割合分数は量の相対的な大きさ、すなわち、もとにする量に対する割合を表しているとも言い換えられる。


 どうやら、「だいきくんの場面」というは割合を使う場面だから、(基準量)×(割合分数)=(比較量)のパターンにあてはめて 2×(1/4)=1/2 とすることで、もともとあったジュースの体積に対する、だいきくんが飲んだジュースの割合を表現しないといけないらしい。これは、小学校2年生のときの「かけ算の順序問題」と同じ発想である。「~~を表現するのが目的だから、式は~~のように書かなければ…」という発想。


> 2.割合分数の理解過程
>  割合分数は、量分数の理解があって始めて明らかにすることができる。そのため、割合分数と量分数の意味を混同させないようにするには、1Lの1/3、1mの2/3という表現をもとに、割合分数を理解していく過程が重要だと考える。
>  ここで、「1Lの1/3」、「1mの2/3」という表現について、もう少し述べることにする。
>  たとえば、「AはBの2/3である」という表現の中の2/3は、Aという量の、Bという量に対する割合(つまり相対的大きさ)を表している。したがって、この場合、Bを基準量、すなわち、基準の「1」とみた場合のAという量の相対的な大きさで、「Bの2/3がA」「AがBの2/3倍」と同じである。
>  しかし、「2/3倍」と「割合が2/3である」とでは、微妙な違いがある。
>  「AがBの2/3倍である」というときには、Bの大きさ(量)に意識が向いていることが多く、Bを3つに分けた2つ分に分割操作しながら、分数の大きさを考えている。これに対して、「AのBに対する割合が2/3である」というときには、AとBの絶対的な大きさではなく、それらの相対的な大きさの関係だけに意識が向いている傾向にあるのではないだろうか。断定はできないものの、1Lの1/3とか、1mの2/3とかいう例は、割合というよりは、倍の立場でみていて、「AはBの2/3である」における「Bの2/3」は倍の立場ともいえるが、Bを1とみたときの割合ともみることができる。このように、割合分数のとらえ方にも微妙な違いがある。


 「Aは、Bを3つに分けた2つ分」と「Bを1とみると、Aは2/3」は、同じことを言っているとしか思えない。しかし、前田氏によれば、3つに分けた2つ分と考えるときにはBの大きさを意識しているが、Bの2/3というときには、Bの大きさは意識していないらしい。わけのわからない屁理屈をこねて、勝手な決めつけをするところも、小学校2年生のときの「かけ算の順序問題」と同じ。


> 3.割合分数の指導上の留意点
>  1Lの1/3や、1mの2/3は、それぞれ「1Lを3等分した1つ分」とか「1mを3等分した2つ分」といった操作を表しているとみることができる。このように捜査の結果として得られる分数を操作分数(あるいは「の」つき分数)という。
>  この操作分数という名前の由来は、たとえば「15Lの2/3を求めよ」という場合に、これを15×(2/3)の計算で求めようとしないで、「15Lを3等分してその2つ分をとる」ということにある。
>  「15Lの2/3」を求めるには、分数の意味からみても、15L÷3×2と考えるのが自然であろう。15L×(2/3)と考えることには多少の抵抗があるのではないだろうか。
>  割合分数として2量の倍関係(割合)を分数で表すこととそれを求める計算とは、教師は区別しておく必要がある。例えば、4Lの牛乳と12Lの牛乳を比較して12Lの牛乳は4Lの牛乳の3倍であると判断するのは倍関係(割合)の見方だ。そして、4Lの3倍を求めるのに4L×3の計算をしなくても、4L+4L+4Lと計算してもよい。同じように10Lが15Lの2/3に当たると考えることは倍関係(割合)の見方であるが、15Lの2/3を求めるのに、15L÷3×2として求めてもよいのである。割合分数を指導するあたっては、求答ばかりさせていると、どうしても、操作にばかり意識が向いてしまい、割合分数を理解させることに支障を来す。
>  以上を踏まえて、割合分数を指導するにあたっては、以下の2点に留意して指導することが必要だと考える。
> ① 低学年の段階から、倍関係を表す数に留意して指導しておくこと。
> ② 整数、小数の乗法のときと同じように、分数を見ることができるように指導すること。
> ③ 「割合分数」(*文章中の言葉・表示を含む)と「(式中の)×分数」と図を結びつけさせる活動を組み込み、割合分数が2量の関係を表したもので、目には見えないもので、実際に存在していないものであることをとらえさせる。


 【割合分数として2量の倍関係(割合)を分数で表すこととそれを求める計算とは、教師は区別しておく必要がある。】
 【求答ばかりさせていると、どうしても、操作にばかり意識が向いてしまい、割合分数を理解させることに支障を来す】
 【「割合分数」(*文章中の言葉・表示を含む)と「(式中の)×分数」と図を結びつけさせる活動】
 これも、小学校2年生のときの「かけ算の順序問題」のときと同じ発想である。このような考え方が極端な方向に走ると、「15Lの2/3を15÷3×2で求めてもいいけど、式を書く欄には15×(2/3)と書かないと駄目」という話になってしまうのではないか。

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