【シリーズ】ローカル線はなぜ活性化しないのか?/時代遅れの通販が展開されているその実態



いすみ鉄道(千葉県)のグッズ売上が好調です。
運賃収入が9700万円に対して、売店の売上が7200万円という驚異的な数値をはじき出しています。
このビジネスモデルは一見、ローカル線の再生では「斬新」といわれますが、厳しい見方をすれば今までやってこなかったことの方が問題です。
こちらで詳しく紹介しましたが、
http://www.twitlonger.com/show/n_1rv7k1g
大手はみな「鉄道」を中心にどういった複合ビジネスを展開できるのかを考えています。
厳しく言えば、地方ローカル線はこういった複合ビジネスを展開せず、ただ「乗って残そう」と叫んでいるだけになつている所も多数あります。
これでは赤字になるのも無理はありません。

しかし、鉄道の活性化で非常に悪い傾向が「他が成功したから、うちもやれば成功するだろう」型のただの真似です。
ですが、成功した所は単なる偶然でもなく、ちゃんと成功した仕組みがあるものです。
その仕組みを何も学ばず、ただ他が成功した形だけ次々と真似る・・・こういった事を何度繰り返しても活性化しないのです。
実際、いすみの成功例を真似て「鉄道グッズ売れば儲かるのか」と真似たところ、あるいはいすみがやり始める前からやっているのに殆ど売れば、中には予算をかけて作ったグッズも何年も売れず不良在庫となり、鉄道イベントなどで無料配布しているところもあります。
いすみのような運賃収入に肉迫するほどのグッズ売上を誇っている所は殆ど無いでしょう。
ではなぜいすみ鉄道だけ驚異的な売上を誇ったのか、またなぜ他社は殆ど売れないのでしょうか?

冒頭書いたようにローカル線の活性化はとかく他の真似、しかも仕組みではなく表面的に形だけ真似るために失敗する傾向があるように感じます。
今回のグッズ販売はそれが顕著に現れています。
まず、今時の「ネット通販」の標準的な仕組みはなんでしょうか?
ネットで商品検索をしてショッピングカートに入れる、そしてそれを購入手続きします。
そこに届け先の住所氏名など必要事項を入力して、支払はクレジットカードが一般的。
それか銀行振り込み、それも振り込み手数料が安いネット銀行が振込先になっている、あるいは配達時に代金を支払う代引きやコンビニで支払う事も可能というケースも珍しくありません。
そしてこれら多くの場合、24時間ネット環境さえあれば、家の中でも、通勤電車の中でも、富士山山頂でも、海の上からでもどこでも出来ます。
最近は飛行機の中でWiFiが使えるといいますから、機内からでもできるという事です。
これが現代社会では、もはや当たり前です。

いすみ鉄道のグッズ通販はこの世の中の当たり前に、当たり前に対応したから成功したといえます。
ネットから注文、クレジットカード決済、もしくは代引き。
24時間どこからでもそれが出来ます。
しかし、多くのローカル線のグッズ販売で驚くは、その支払方法が「現金書留」「小為替」だという事です。
まず、若い人は現金書留や小為替なんて聞いたことも無い、知らないという人も結構いるはずです。
なんとなく知っていても、どうやって使っていいの分からない人も結構いるでしょう。
そんな未知の支払方法で支払えと言っている時点で、多くのお客様を突き放しているといえます。
あるいは「知っている」「使ったことがある」という人なら、いかに面倒な事かも分かるはずです。
現金書留はポスト投函できませんから、17時までに郵便局の窓口にいくか、それ以降は街に一つある大きな局(集配局)まで出向かないとなりません。
近くにあるのならいいですがないのなら、日中仕事しているしている人はもはや送金不能、仕事を休むか電車などで大きな局の夜間窓口に行かないとなりません。
小為替は郵便局貯金窓口ですから16時まで、夜間窓口はありません。
つまり、これらの送金方法は今では想像を絶するほどとんでもない面倒な送金方法だといえます。
今から30、40年前、銀行振り込みを除けば、現金書留や小為替程度しか送金方法が無い時代なら、それしかないのですから、皆さん普通に利用していた事でしょう。
しかし、これだけ様々な決済方法が発達して、24時間送金できる時代に、こんな17時までに郵便局行け=物が欲しいなら仕事休んでも行って来いというサービスでは、よほどの物好きでなければそこまでして送金して購入しようと思わないでしょう。
つまり、このことから分かるのは「お客が来ない」「売上が上がらない」と言っている所は、こういったお客様のニーズなど無視して、時代錯誤な商売を平気でしていると言う事です。
こんな時代錯誤な商売をしていれば、お客様に見放されて当然です。
いすみ鉄道は早々にこのことに気付いて、グッズ販売を開始した初期の頃からカード決済なども普通にやっています。
つまり、今の時代にただただ当たり前の事をしているだけなので。

しかし、ここでおきがちなのは「他が成功したからうちもやる」と、真似てグッズ販売に手を出したところは多いでしょう。
ですが、こういう所は表面の形だけ真似て仕組みを真似ない、仕組みに目が行かない特徴があります。
そのためグッズを作って儲かったと聞けば、グッズを作っただけで売る事を全く考えていません。
まず、「グッズを通販する」と聞いたのなら、どういったグッズを作れば売れるのかを考えるべきです。
そして、どういった通販サイトがあり、どういったサービスをするのが標準なのか、それらをリサーチするべきです。
そうするば「最低限これくらいの事しないとお客様は見向きもし無いね」という基準が見えるはずです。
しかし、失敗する所はいすみ鉄道がどうやって売っているのかも全く調べていません。
その結果、「現金書留」「小為替」というまるで昭和時代のサービスが当たり前のように登場する、そしてそれがあまりにもおかしい事に気付かない・・・
これではお客様に見放されて当然ですし、それは売上も上がらないわけです。
この現象は鉄道に限りません。
商店街も、お客様ニーズからかけ離れて見放された例はあるでしょう。
例えば、今時は魚をさばけない人、魚の内臓を気持ち悪くて触れないという人は結構いるでしょう。
そんな時代に、丸ごと一匹で売っていれば誰も買いません。
鮮度が落ちても切り身の方が重宝されます。
そういったお客様ニーズを無視した商売をしていればお客様離れします。
もちろん切り身にすれば勝手に客が来るわけではなく宣伝なども必要です。

ではグッズ通販、どのように展開すればいいのでしょうか?
商品数が1、2点程度ならメールでもいいかもしれませんが、ある程度アイテム数があるのならショッピングカートを設けた方が便利でしょう。
そしてこういったサービスは何も自社で開発する必要は無く、いまでは月1000円程度でレンタルしてくれたり、レンタルサーバーの無料オプションになっていることもあるほど、実に簡単で安価に利用できます。
決済のクレジットカードシステムの導入も、決められたコマンドを仕込めばいいだけの簡単な物もあります。
何より、最近はショッピングカートから、決済まで一括で提供し、しかも月額使用料も無料で、売れた分だけの手数料制度という所も増えています。
その手数料も5%に満たない程度です。
たしかに5%は減収になりますが、その販売費を見込みで価格設定すべきですし、5%を惜しんで不良在庫になるのなら叩き売った方が得なくらいです。
つまり、ちょっと探せば誰でも簡単に出来るお客様サービスや増収策を全くやってい無いという事です。

ではなぜこんなことになってしまうのか?
理由は二つあると思います。
第一に、「時代錯誤」という事です。
一生懸命何とかしようと努力していても、経営者や社員のそもそもの発想が数十年前の古い感覚、つまり送金といえば現金書留や小為替が当たり前の時代の人達にとってはこれがおかしなことと気付いていないケースがあると思います。
これは一生懸命やっていても残念な結果です。
残念ながら、時代に即していなというわけです。
しかしそれは現在のお客様に見放される要因です。

もう一つの問題は、お客様の事を全く何も考えていないケースです。
通販をするのなら、代金をどうやって受領するのかは重要な検討項目の一つです。
確実な代金の受け取りでありながら、お客様には手間はかけない支払方法は何かとことん考えるべきです。
もちろん、注文の仕方も便利である必要があります。
その方法は一体何か・・・
全く考えていないというわけです。
それは現金書留で会社まで届けてくれれば楽でしょうが、お客様には仕事休んででも17時までに郵便局行って来いという方法です。
「これじゃーお客様不便で誰も買わないだろう」
全く考えないんです。
まして小為替は現金化するのには郵便局に行かないとならないのですから、受け取った鉄道会社も面倒なはずです。
事務員の方が郵便局まで行って現金化しなくてはなりません。
往復20分かかっても、時給900円の方なら、現金化するコストに300円かかったということです。
とすると、そのグッズ販売、利益になるのでしょうか?
お客様にはあまりに面倒な送金方法を指定し、自分達も手間も暇もかかり、コストもかかる送金方法を指定する・・・
こんな経営をしていれば、そりゃー赤字になって当然では無いでしょうか?
開業以来赤字の長崎ハウステンボスを黒字化したHISの澤田会長は、まず従業員に「1.2倍早く歩きなさい」と言ったそうです。
そうすると目的地に早くつく、その分他の仕事が早く着手できる、これを全社員、毎日やれば年間2割くらい人件費が削減できるだろうという物です。
経営改革というのはこういう所始まるというのに、1000円、2000円の現金を集める費用に平気で300円、400円のコストをかけていれば、それは赤字になるでしょう。
また、こんな面倒な事を平気にお客様にさせていれば、それは客離れするでしょう。

これまさに「他がやったからうちもやりましょう」型で、どうやったら売れる、どうやったら利益が出るのか何も考えていないというわけです。
ただ形を真似れば同じ結果になると信じて止まないからこうなってしまうのです。
これはグッズに限らず、色々な運動、活動で起きます。
「アテンダント」も同じ現象でしょう。
そもそも経費削減のために車掌廃止して、アテンダント乗せて車掌業務させるのは本末転倒でしかありません。
何のためにそれを入れて、どうやって活用するのか考えないで、「他がやったからうちもやりましょうか」だとこうなってしまいます。
もし、採用するのであれば今までの車掌業務を越えた、例えば広報、PR、営業もかねるとか、そういう活用方法を考えるべきでは無いでしょうか?
でも、ただ乗って車掌業務しているだけだったり、ブログもやる・・・これも例によって他がやってからうちもやるで何も考えない、女子高生のブログより酷い内容の無いブログも多数あります。
どうすればPRになるのか、一人でもお客様に来てくれるのか?
何も考えずに、適当に適当な事を書いているブログが殆どです。
テーマや目的も無く、ただ適当。
アテンダント3人雇えば人件費年間1000万円かかるんですよ。
そこまでしてやる必要があるのか、やるんだったらいかに高い投資効果を出せるか・・・何も考えていないわけです。
もちろん一生懸命やって、高い費用対効果を出している所もあります。
ただ、「それ年間1000万円かけてやることなんですか?」という所も散見されます。

やはり色々見ていると「お客様が来ない」「売上が上がらない」「活性化しない」というところには、やはり理由があるんだと感じます。

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