ワシントンポスト 2月17日 WPオピニオン

「日本の挑発的な動き」

ジャクソン・ディール 副論説主幹

http://www.washingtonpost.com/opinions/jackson-diehl-japans-provocative-moves/2014/02/16/142b22e4-9599-11e3-afce-3e7c922ef31e_story.html

日本はこれまでオバマ大統領が向き合った事のない最も深刻な国家安全保障問題を引き起こしてしまうのだろうか。

2年前ならそのような考えは馬鹿げていると思われただろう…2年前、つまり日出づる国はそのときまだアメリカがそれまで20年間知っていたような、停滞してはいるが豊かな、民主的ではあるがしょっちゅう変わる弱い政治リーダーを持つ、世界的にも地域的にも安全保障の要素の存在しないような国だった。

しかしながら日本は、急激な、時として破壊的な変化のあと、長い間停滞していた。14か月前に首相になった保守的な国家主義者、安倍晋三は、日本をダイナミック、かつ潜在的に危険な時代へ引き込みつつあると見る向きもある。

安倍氏は首相在任の1年目に経済の刺激と、日本の近隣諸国を啓蒙して安全保障上のアメリカとの関係をより近いものにすることに成功した。防衛予算の増強や、国家安全保障委員会(NSC)の発足といった安倍氏の日本の防衛力強化の最初の歩みは、より好戦的になってきた中国や北朝鮮を見れば納得の行くものに見えた。

しかし、過去数ヶ月間の間に安倍氏はこれまで政治的に一定の影響力のあったタカ派国家主義へと軸足を移した。安倍政権の動きに対して、中国、韓国だけでなく彼が同盟国と頼んだ他ならぬ米国政府内でも警報が鳴り始めた。

首相のもっとも目立った動きは、12月26日の靖国神社参拝だった。靖国神社は第二次大戦の戦犯を含む日本の戦没軍人を記念する施設である。この動きはそのときすでにあった中国との緊張状態をエスカレートさせた。中国はその一月前にオバマ政権の高官から出された声明を無視した上で一方的に日本領空を含む空域に防空識別権を設定していた。

その同じ月、安倍氏は4人の新しい経営委員を12人からなる日本の公共放送ネットワークであるNHKの経営委員会に送り込んだ。その4人はすぐに新聞の見出しをかざりはじめた。一人は1937年の日本軍による南京虐殺は無かったと言い、戦犯を裁いたアメリカによる軍事裁判はアメリカの犯罪を隠蔽するためのでっちあげだと宣言した。二人目は好戦的な右翼の儀式的な自殺に感謝するエッセイの中で、天皇は現人神になったと書いた。

そして3人目、NHKの新会長になった籾井勝人氏は従軍慰安婦という奴隷を作った歴史を過小評価し、新任最初の記者会見でNHKは原発や安倍首相の靖国参拝のようなことについて政府を批判するべきはないと言った。

籾井紙は部分的に発言を撤回し、安倍氏も報道の自由に対する支持を宣言した。しかしその数日前、安倍氏はダボス会議のスピーチので、日中関係は「第一次大戦前夜の英独関係に似ている」と言った。

日本の佐々佐々江賢一郎駐米大使はこれを援護してワシントンポストに「アジア社会、国際社会が心配しているのは日本ではない。中国である」という意見を投稿したが、その点は否定できない。南北朝鮮を除けばその意見はたしかに正しいと言える。しかし、それを言うなら安倍氏の国家主義回帰がアジアの安全保障上の危機を作っていると言う方が正確だろう。その理由は三つある。

第一に靖国参拝は東京と北京とソウルの間の凍り付いたような関係を改善する可能性を打ち砕いた。中国の習近平総書記と韓国のパク・クネ大統領は安倍氏との会談を拒否している。日中間の外交的軍事的な接触は事実上存在しないが、それは両国が領有権を主張している一群の無人島を巡る諍いという点では警鐘である。

第二に、靖国参拝とその後の余波は安倍政権とオバマ政権との関係に大きなダメージを与えた。日米間のコミュニケーション・ギャップは米中間のそれよりも大きくなったと見る向きもある。米国政府関係者は離れ小島をめぐる緊張が一挙に敗れた時、安倍氏が何をしでかすか、危機的状況の中でアメリカの助言に耳を貸すどうかは、もうわからないと考えている。事実上ホワイトハウスや国務省内の高官に日本と近い関係を持った経験者がいないという現状はどうしようもない。

第一、第二の問題は、さらに第三の問題を引き起こす可能性がある。つまり中国の指導者たちが安倍氏に対する敵意と、安倍、オバマ間に距離があることに動かされて、中国の力を試そうとするだろう。もし中国が兵隊を乗船させた漁船の船団で岩でできた島を取り囲んだらどうなるだろう。安倍氏は日米安保条約を発動させて領土を守る道を探るだろうか。もしそうなったらオバマは前向きに対応するだろうか、それとも引くだろうか。

オバマ大統領は4月にアジア歴訪の一環として日本を訪問する予定になっている。公式な訪問目的ではないとしても、危機回避が大統領の大きな使命の一つになるだろう。


翻訳:@reservologic

Reply · Report Post