'Bleeding Cool'のロブ・カジンスキーへのインタビューページ、翻訳に補足しました。(部分)
http://www.bleedingcool.com/2013/07/11/when-bleeding-cool-met-rob-kazinsky/


世界公開日直前ぐらいの時期の記事で、彼のパシリムに対する思い入れの深さが伺えます。この人がチャックやってくれて本当によかったんだな、って思えます。




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(前述部分省略)

ギレルモが僕を見つけてくれたのは、「ホビット」経由でだった。僕が参加していた時のテープと、僕が送ったオーディション時のテープを見て、『彼だ!この役者知ってるよ、彼のスケジュールは空いてる?』それで僕はパシフィック・リムのオーディションを別途に受けたんだけど、監督がロンドンまで来てくれて、コーヒーを飲みながら映画の話をした。監督に『君にやってもらうよ』と言われた時僕は『僕ですか?!すごい、もちろんやります!ちょっと腕つねってください』こんなだったね。

マックス・マーティーニ[チャックの父ハーク役]の配役は僕の前に決まっていた。ルックスからいっても、僕たちは家族だといってもいい。本当にぴったりだと思う。ギレルモが僕を見つけてくれた時『信じられないかもしれないけど、彼が君の父親を演じるんだ』と言ってディスプレイを見せてくれた。すぐにどういうことか解った。

マックスが先にキャスティングされていたのはラッキーだったと思う。僕らは本物の父親と息子みたいに見えるから。マックスは僕の父親を演じるのは嫌がっていた。僕より13歳しか年上じゃないんだし、彼が演じてきたのは若いタフガイばかりだったのに、今度は若いタフガイの父親だっていうんだから。ほんとに嫌そうだったよ。

僕とマックスは実生活でも家族だ。すごく親しくなれて家族みたいに思ってるし、しょっちゅう会うよ。彼の子供たちも大好きだ。映画を通じて知り合う間柄としては他にないくらい、親しくなれたと思う。一日じゅう撮影した後も、一緒に出かけて食事をした。ジムにも一緒に行ったし。僕たちは似た者同士だから、13年経ったら僕は彼みたいになってるんじゃないかな。バイクにも乗るし。同じようなルーツを持ってるんだ。これは本当に得難いことだと思う。この映画の全部が僕にとって贈り物だよ。こんなことが現実に起こるなんて、思いもよらなかった。

僕はオタクでゲーマーなんだ。「ファイヤーフライ 宇宙大戦争」のファンだし、「スター・トレック」のコスチュームとか原画も持ってる。だってオタクだから。デル・トロとトラヴィス・ビーチャムの二人は、金や名誉のためにやってるんじゃなく、自分たちが見たい映画を作るためにやってる。好きだからやってる仕事なんだ。嫌味な言い方はしたくないんだけど、こんなの初めて見るから言うと、レジェンダリーとワーナー・ブラザーズが揃って二人のプロジェクトをバックアップしてるなんて、信じられない。これは原作ものじゃないし、もう使い古された版権もののシリーズ第17作め、とかでもない。二人のパッションが込められてる新作だ。ギレルモは、自分が情熱を注ぎ込めるものしか作らない、見てもらえれば分かる。

脚本のリライトは30回はあった。そのうち25回はギレルモが書いた。ギレルモと一緒に座って、シーンについて相談すると、その場でギレルモが書き直す。それからまた僕らがここはこのほうが、と提案しても、ちゃんと聞いてくれるんだ。オスカーにノミネートまでされたような監督が「ここが?」と聞いてくれて「ああ、それいいかも」とすぐ採用するなんて、そうあることじゃない。撮影に使った最終稿は、最初のものとは全く違ったものに変わっている。話の作りも違うし、キャラクターも。全員の力でキャラクターを作り上げて、ギレルモはそれに任せてくれた。

撮影中もギレルモは「はい、(台詞を)言ってみて」ぐらいしか言わない。柔軟で、可能な限り最高の映画を作ろうとしていた。僕は今まで、他の誰かが作ったキャラクターを演じるいろんなプロジェクトに参加してきた。人が書いた脚本を元にしたものを。だけどギレルモは、自分でキャラクターを作らせてくれる。僕はチャックと知り合いみたいに思えるし、チャックを自分のものにした。彼は僕のバディなんだ。

チャックを知るには、ハークのことを知らなくてはならない。ハークは退役間近の軍人で、メルボルンで(*)妻と一人息子と暮らしていた。その時カイジュウの襲撃に遭い、妻を失う。彼は軍を捨てて息子を育てるか、9歳の(*)息子を軍隊で育てるか、選択を迫られる。そしてチャックは軍のなかで育てられることになる。子どものうちからイェーガーパイロットになるべく育てられたんだ。チャックはイェーガーのボルトの一つ一つ、設計図、性能の全てを知り尽くしている。人間よりもイェーガーとカイジュウのことの方が理解できるんだ。チャックはこの時代に生まれた、生きて呼吸する人造兵器だ。しかも最強の。
(*):作中設定ではシドニー/11歳

それなのに、この二人は語り合わない。チャックとハークは折り合いが悪く、ひどく脆い関係だ。二人が"語り合う"のは、ドリフトする時だけ。そうやってコミュニケーションするんだ。それと、犬を通じて。とても難しい父子関係だ。こういうセリフがある、ディレクターズカットに入るかもしれないけど『俺たちは友達でもパートナーでもない。俺たちが家族でいられるのは、ドリフトする時だけだ』。二人には父子関係を維持するためにドリフトが必要なんだ。チャックは確かにエゴイストだ。しかも世界中から必要とされている。だからあんな振る舞いが許される。有毒物質の組み合わせだ。「トップガン」でいうなら、僕はアイスマンでチャーリー・ハナムはマーベリックだね。そういう関係なんだ。

劇場公開版はディレクターズカットっていうけど、今言ったディレクターズカットはエクステンデッドエディションのこと。内容豊富なのがいずれ出るはず。これがベストなバージョンだと思う。

僕は「パシフィック・リム」が大好きだ。自分が出たからっていうんじゃなく、子どもの頃からずっと、こんな映画を見たいと思ってたから。モンスター映画もロボット映画も今まで無数にあったけど、どの映画にもできなかったことをやってくれた。監督は今まで見たこともないスケール感を表現してくれた。「クローバーフィールド」でも「トランスフォーマー」でも「ゴジラ」でもない。全く新しい、比類ない映画だ。初めて使用されるテクノロジーを使っている。「トランスフォーマー」の真似はしていない。モーションキャプチャを使ってロボットの動きを表現してるわけじゃないんだ。全て一から、ILMのコンピュータグラフィックスを使用して作られている。

ギレルモ・デル・トロの全作品がそうであるように、ただのスペクタクルじゃない。キャラクターに根差した作品だ。だってキャラクターが気にならなければ、危険にさらされる場面だって怖いとおもえない。だから一人一人のキャラクターがバランス良く、丁寧に作ってある。互いの対立関係もある。物語性があるんだ。綺麗で爽やかなものじゃなく、汚くてざらついた物語が。

8歳の頃、『ジュラシック・パーク』を見に行ったのを覚えてる。昔は映画の数が少なくて、一つ一つの映画がイベントだった。「E.T.」は14ヶ月も上映してたんだ。今は始まったと思うとすぐ終わってしまう。僕が子供の頃、映画に行くってことは特別なことだった。『ジュラシック・パーク』が世界に与えた衝撃がどれくらい大きかったか覚えてる。あれで何もかも変わってしまった。これはそういう映画だ。一つのジャンルを形成しうる作品だと思う。オリジナルな、原型を作り出す素材。つまらない続編ものにはなり得ないし、見た人自身に再びイマジネーションを働かさせるようになるかもしれない。

もうCG盛り沢山の特撮映画は必要ない。「バットマン」のおかげで、『夏のブロックバスタームービー』のハードルは上がってしまった。ただの"バーンドカーンズシャーン"な映画には僕はもう飽きてる。みんなと同様僕もそういうのは好きだけど、「バットマン」が全体的な状況を変えてしまった。「アイアンマン」みたいに格好良い主人公が必要なんだ。魅力的なキャラクターがね。だから『パシフィック・リム』の売りはというと、作品テーマが自分自身にまともに、真っ直ぐに入ってくるところかな。「ああ、いつものCG映画ね」と言う人もいると思う。でも僕は100%の自信があるけど、これがどういう映画で、キャラクター、演技、その中を流れるストーリーが何か、知ってるから言えるんだけど、この映画は自力で観客を掴み取っていく映画だと思う。公開最初の週末は大きな売上成績が出ないとしても、口コミがそれを変えてゆくと思う。

勘違いした理由でこの業界に居る人間はたくさんいる。個人的な利益、名誉、財産のために。つまり、いつでも忘れちゃいけないのは、映画やテレビ番組というのは自分たちの為に作ってるわけじゃないってこと。そういう動機じゃなく、誰かのために、観客のために作ってるってこと。それこそが目的なんだ。

進行中の映画は数本ある。「Siren(原題)」はもう撮影に入ってる。これは現在ムービーフェスティバルに出品することになってる。監督はジェシー・パイロネルのファンタジー映画で、これが彼の監督デビュー作になる。ヴィネッサ・ショーと僕が主演の素晴らしい映画だ。他にも進行中の企画はあるけど、契約はまだ。この映画を楽しみにしてもらって、オファーはその後に来ることになるね。


(後略)

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