どうやらこちらのコメント欄が閉じられているようですので、ここに書いておきます。
http://d.hatena.ne.jp/takehikom/20131121/1384981439

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コメントありがとうございます。しかし、結局よくわかりません。

私の疑問に対し、
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「何のために」かというと,算数・数学,そして世の中で用いられているかけ算(乗法構造,乗除算のモデル)には,かけられる数とかける数がはっきりと区別される「倍」と,それらが区別されない「積」があり,まずはきちんと「倍」のかけ算を理解しましょうということです.
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とお答えされておりますが、私の「何のために」という疑問は、すぐ次の「生きる力」と関わっています。このお答えでは、「何のために倍と積を(子どもが)区別しないといけないのですか」という疑問しか出てきません。

現実世界はかけ算の順序など気にせず動いています。私も、数年前に黒木さんがこの問題をツイートするまで、かけ算に順序があるなど知りませんでした(もちろんそう習ったのに忘れているだけ、という可能性もありますが)し、逆順にすると×になるなどということがあるのだとは想像すらしたことがありませんでした。「生きる力」ということを考えるならば、将来、かけ算を使う場面を想定し、逆順でも構わないという理解をさせることが必要なのではないですか? なおここでの「想定」は、単に値段の計算のような日常生活だけではなく、数学や、物理学などの学習まで念頭に置いています。

倍と積の違いを理解することが、一体「生きる力」を育む上でどのような意味を持つのでしょうか?かえって子どもを混乱させる、あるいは余計な「知識」を労力を使って覚えるというだけではないのでしょうか。もちろん、算数教育学として、あるいは教える側の整理として、倍や積といった概念整理をすることは有効なのかもしれません。しかしそれは子どもには不要なものでしょう。


さて「ところで「大前提」とあるのですが,@_nagashimamさんにとってそれは何なのか,具体的な記述がないと,確認のしようもありません.」とおっしゃられておりますが、それは例えば次のような発言です。
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問題文を読み,かけ算で求められると判断すること,すなわち演算決定は,交換法則の適用(A-1)よりも前に行わなければならない.
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なぜ前に行わなければならないのでしょうか?

「2.3 各理由の賛否」でこれに続くコメント群には、一見その根拠らしきものが書かれていますが、私には、「かけ算には順序がある」という結論が先にあり、その結論を正当化するために持ち出した、論理の逆転した「根拠」にしか見えません。たとえば次の文章です。
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式に対する解釈の多様性は,A-2だけでなくB-3およびB-4も考慮する必要がある.りんごの問題で「5×3」と書いたら,A-2,B-3,B-4の解釈が可能であるのに対し,「3×5」と書けば,これまで学習してきたかけ算の意味に基づくと,そういった解釈の余地がない.
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B-3, B-4 の解釈が云々という発言は、私にはまったく理解できません。これは「かけ算には順序がある」ということを前提にしないと正当化できない理屈です。順序はない、という立場に立てば、B-3, B-4 がそもそもナンセンスとなります。つまり、B群の理由は、(B-6を除き)「理由」ではなく「結論」あるいは「前提」にしかならないわけです。

結局、なぜかけ算には順序があるのか、ということについての根拠めいたものは、
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しかしながらその後の算数教育では,かけ算の意味を重視する中で,かける数が先に,かけられる数が後に出現する文章題は,算数教育に携わる教師による書籍で取り上げられ,学力調査・学術調査でも出題されている.
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とか
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ここまで見てきた通り,かける数が先に,かけられる数を後に置いた文章題で「かけられる数×かける数」の式のみを正答とする出題は,少なくとも半世紀以上の歴史があり,現在まで継承されている.
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のように、「今までやってきたから」ということしかないわけです。そしてこれは、今回のエントリにある
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明治期から,戦前・戦後,そして現在まで続く,慣習です.
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日本の算数教育では,「倍」と「積」の違いは,学術上*3,また実践上も,認識されていて,それぞれに配慮した指導法や出題がなされてきました*4.
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という発言に明瞭に表れています。

私が呈した疑問は、要するに「今までやってきたことそれ自体」への疑問なわけです。かけ算に順序があること、あるいはもっと限定して、逆順を×にすることが、
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算数的活動を通して,数量や図形についての基礎的・基本的な知識及び技能を身に付け,日常の事象について見通しをもち筋道を立てて考え,表現する能力を育てるとともに,算数的活動の楽しさや数理的な処理のよさに気付き,進んで生活や学習に活用しようとする態度を育てる。
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ということにどう結びついているのか、「算数以外の場面ではかけ算の順番は気にされていない」という現実を踏まえて議論をしていただきたいと切に願います(指導要領を絶対化する立場には立ちませんし批判的に学ぶべきというのが私の主張ですが、せめてこのあたりとの関係は考えていただきたいと思っています)。

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