『勇者さまのレベル上げ』作・逢沢まひる (@MahiruAizawa)

レベルが99、HPは1の勇者さまが居ま した。

勇者さまには仲間が居ません。

勇者さまが強いから必要ないのか、

仲間が居ないから強くならざるをえなかったのか、

それはわかりません。

とにかく、勇者さまはひとりでした。

この世界に、魔王は居ません。

だから、どんなに強くなっても、

勇者さまは誰にも見向きもされません。

当然です。

それでも勇者さまは、

レベルを上げ続けました。

いつか魔王が現れたとき、

この世界を 守れるように。

がさつものと呼ばれようと、

無駄骨と思われようと、

勇者さまは、レベルを上げ続けました 。

ついにレベルが100に届きそうだったとき、

勇者さまは小石に躓いて転んでしまい ました。

HPが1、削れてしまいました。

勇者さまには、仲間は居ません。

躓いた勇者さまに手を差し伸べてくれる仲間は居ないのです。

勇者さまが強かったから必要なかった のか、

仲間が居なかったから強くならざるを えなかったのか、

それはわかりません。

「ああ、これでやっと、救われた。」

勇者さまは笑顔でゲームオーバーを受 け入れました。

勇者さまは、レベル100になんてなり たくなかったのです。

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