★『田代洋一大妻女子大学教授教授に聞く 幻想の排除を 粘り強く非訴える』|日本農業新聞16日(地方版)

 早く参加表明することで参院選への影響を薄め、アベノミクスの初期効果があるうちにひたすら幻想を振りまき、分断・懐柔に励む作戦だ。従って幻想を排する、分断に乗らない、懐柔されない、が闘いの要だ。
 
 交渉参加しているオーストラリアは投資家・国家訴訟(ISD)条項に強固に反対している。米韓FTA下の韓国でも再交渉要求が強まっている。それに比べれば、日本はまだ序の口の序の口だ。国会での批准阻止まで視野に入れた息の長い闘いがこれから始まる。
 
 まずは一切の幻想を捨てる。自民党のTPP反対は、民主党に対する政局的反対に過ぎなかった。党内反対派の腰砕けの速さもお見事。参院選に向けて、そういう自民党への幻想を捨てる。農村部の1人区31議席が勝負だが、全ての選挙区で一人一人の候補者にTPPへの賛否をはっきりしてもらおう。
 
 公約の6項目自体があいまいで交渉に耐えるものでなく、日米2国間の問題に過ぎないものもある。農業の「聖域確保」も幻想だ。オバマ大統領が「聖域」があることを認めただけで、TPPが認めたわけではない。
 
 条件闘争論も幻想だ。今から参加しても交渉権はないから、条件も何もない。途中下車論も幻想だ。そもそも交渉を終結する権利は実質的にない。国内での条件闘争も幻想だ。財政の大盤振る舞いを見て、関税撤廃しても国がその分を補填してくれるだろうなどは全くの幻想。そもそも財政危機の中で国民が許さない。
 
 どう闘うか。まず、「自動車で米国に妥協する代わりに米を守る」といった分断作戦にのったら、国内で農業バッシングが強まるだけだ。TPPは国民全体への攻撃で、自分だけが助かるわけにはいかない。
 
 政府は農業・米だけに問題を狭め、農業者を孤立させようとする。それに対してわれわれも主戦場を「食」にシフトする。国民の日常的な関心は農より食だからだ。食料が過剰から不足に転じた21世紀、TPPで自給率を13%に落としていいのかをふに落ちるまで訴える。
 
 情報を収集・拡散することは重要だが、TPPは交渉参加したら原則、情報はストップする。「情報待ち」になったら負けだ。手持ちの情報をフル活用してTPPの非を訴えよう。(寄稿)
 
※明快に政府・官僚機構の意図を解析した論。この日の論では論説と並ぶ必読の論と言える。

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