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10th Feb 2013 from Twitlonger

田川建三『キリスト教思想への招待』
第2章「やっぱり隣人愛」
より引用。

http://web1.kcn.jp/tombo/v2/MATTHEW20.html

【イエスは、仕事にあぶれた人も、その日一日分の賃金を手にした、という話をした。…日雇いで、その日その日の賃金をもらうとすれば、今日働けなかったということは自分とその家族が今日は食うことができない、ということを意味する。…しかし同じ人間として生きていてそれでいいのだなどということがでいるだろうか。…
これが当たり前ならますます運が差別を広げていく。…明日になったら昨日十分に食って安心して眠った奴の方が、鼻をすすって寝つけなかった奴よりも、体力があるのは当然である。雇い主は、体力のある労働者を雇う。かくして差はひろがっていく。】

【そうではなくて運良く働ける人は与えられた機会に感謝して十分に働き、その仕事によってこの社会を支えようではないか。…
しかし今日も安心して食べることができ、安心して寝る場所がある、ということはすべての労働者に保証されてほしい。1デナリが1日分の賃金であるのなら、みんなに1デナリずつ分けようではないか。】

【これはいい話ではないか。こんないい話はめったに聞くことができない。驚くべき点これが後一世紀の一人に大工によって語られているという事実である。…イエスの話は以後のキリスト教社会にくり返し語り継がれ、くり返し人々の心にしみとおっていった。
それが、キリスト教西洋のさまざまな制度を生み出し、支える要因となったのである。】

【私はある小さい女子大学の教師になった。…その学生たちに、私は毎年つとめて授業でイエスや新約聖書の話をするようにしていた。…特にこの日雇い労働者の譬え話は必ず紹介した。】

【ある学期の終わりの試験の時に、最後に時間が余ったら、これは試験と関係なく、採点にも関係ありませんから、率直に、この譬え話についての感想を書いて下さい、と頼んだ。…その中身に私は非常なショックを受けた。全体のおよそ3分の2(3分の1ではない!)の学生がこういう意見は間違っている、と書いていたのである。】

【働かなかった労働者にも賃金を与えるなんて、間違っている。それじゃ働いた労働者が損をしてしまうではないか、そんなのは不公平だ。働かなかった労働者は、自分が悪いんだから賃金をもらう資格なんぞ無い、等々、等々。】

これは1年生の授業である。…ほどほどにまずまずの知性があり、みなさん人柄はなかなか良い人たちである。…この人たちの「素直な」感性がこういうことであったとは。】

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