朝日新聞デジタル 2012年12月2日03時00分

マニフェスト評価、冷めた熱気 検証大会は見送り

 【山岸一生】シンクタンクなどによる各党の公約を評価・分析する動きが盛り上がらない。最近の国政選挙で必ず開かれていたマニフェストの検証大会は見送りに。衆院解散が唐突で政党数が多いことを理由とするが、民主党のマニフェストが総崩れしたことも影響している。

 若手経営者らでつくる日本青年会議所の井川直樹会頭は11月29日、主要政党の公約を一覧できる「統一マニフェスト」を独自に作成することを発表した。

 政党理念や財政・税制、社会保障など10項目の公約を要約し、A3判の1枚紙に並べる。12月上旬から討論会などで配り、ホームページにも掲載する。

 井川氏は「マニフェストはウソの一丁目のように言われる」と嘆いたうえで、「有権者には『どうせマニフェストは、実現できない』との思いが強いが、誰かが(評価などを)やらないと」と語った。

 前回の2009年総選挙で競うようにマニフェストの分析に取り組んだシンクタンクなど各団体の熱気は冷めている。日本青年会議所の取り組みは例外的だ。

 09年は学者や経済人がつくる「新しい日本をつくる国民会議」(21世紀臨調)がマニフェスト検証大会を主催。日本青年会議所やPHP総研、日本総研など9団体が、民主、自民両党のマニフェストを分析し、採点した。10年参院選でも8団体が実施した。

 だが、21世紀臨調は今回、「準備する時間がない」として開催を見送る。過去の検証大会に参加した構想日本、PHP総研の2団体は「時間がなく分析の予定はない」(構想日本)などと、検証や分析もしない。経済同友会はアンケートの実施にとどめる予定。突然の解散や相次ぐ政党の離合集散で、政策を吟味できないのが主な理由だ。

 マニフェスト選挙を主導した民主党が前回の反省から、今回のマニフェストで数値目標を大幅に削ったことも影響する。あるシンクタンクの担当者は、民主党の変質によって「各党を並べて比較することが難しくなった」と話す。

 だが、マニフェストの必要性を訴えてきた早大マニフェスト研究所の北川正恭所長は「今はマニフェストの進化の過程における踊り場だ」と指摘。研究所では一般の人がマニフェストを評価しやすくする「チェックシート」を作成して配る。北川氏は「民主党のマニフェストは甘かったが、バラマキ、利益誘導の選挙に戻していいわけではない」と語る。

Reply · Report Post