一「おとボク」ファンによる「月に寄りそう乙女の作法」体験版感想

とにかく非常に「おとボク」を意識した部分が強い、という情報があったので、ほとんど1GBに近い体験版をダウンロードして、プレイしてみました。確かにその通りでした(苦笑)。私のいつものパターンで、箇条書き風にメモしておきます。

◆「おとボク」を意識した部分として(1)類似点
-主人公は女性から見ても美レベルの高い女装少年(OHPで「男の娘」と紹介しているのはマイナスポイント)。また、デザイン画だけは苦手なようですが、それ以外の部分では類い稀なるスキルを発揮する模様。いわゆる「完璧超人」系ですね。女装スキルは異母兄妹であるところの妹からたたき込まれます。
-主人公および攻略対象ヒロイン(たぶんルナ、ユルシュール、瑞穂、湊の4名)は、入学先の服飾学校で同じクラスで授業を受ける上に、ルナのホームグラウンドである桜小路家の屋敷にてそれぞれ部屋をあてがわれて同居することで、隔離性を確保しています。
-紫苑さまポジションを思わせるキャラクターが存在します。しかも名前が「瑞穂」。「リスペクトしてます」の表現? (ただし、OHPでのこのキャラの紹介文で、読点が行頭に来ているところがあったのにはがっくり)
-ひとり「ルナの使用人風情が」とか言うキャラもいますが、基本的にヒロインからは好意を持たれています。美少女ゲームの基本構造にして、「受略」の大切な条件。
-体験版が「これからどうなるの?」なところで終わります。

◆「おとボク」を意識した部分として(2)少し異なる点
-主人公が「上に立つ」立場なのではなく、逆に「使用人」としてヒロインたちを支えていきます。
-明らかに男性なキャラはおいておくとして、主人公以外に「女装男子」と「男装女子」キャラが主人公と同じ「使用人」の立場で存在しています。
-主人公やヒロインに関する「悪口」が何かの度に伝わってきます。
-サブキャラだが主人公を明確に嫌っているキャラクターが存在します(※「2人のエルダー」での冷泉淡雪は一定の節度は保っていたが、このキャラにはそれがない)。

◆評価できる点
-本来閉鎖的な世界での話であるにもかかわらず、それをあまり意識させないようになっています。屋敷での「お嬢様」たちとのそれらしきお付き合い(一部場面を除く)に対して、学校ではむしろ使用人も交えてカオスな状況が作り出されています。ここにNavelさんらしい登場人物間の「掛け合い」の面白さが加わり、プレイして「ついていけなくなる」要素が少ない(冒頭、主人公の生い立ちの説明用「走馬燈」コーナーを除く)ため、「おとボク」シリーズほど引かれることはないと思われます。ただし、それゆえ独特の「雰囲気」を期待してはダメ。
-主人公への感情移入がスムーズに行えるように序盤が構成されています。これは他の作品をきちんと研究した成果として大いに評価したい。
-ヒロインおよび主人公の間では触れ合いに温かみが感じられます。
-超低電圧版 Celeron 1.07GHz というスペック的に貧弱なノートPCでプレイしましたが、システム的にはたまに少し待たされる程度で、そこそこ快適でした。ただ、裏で色々と動かしているとムービーがカクカクしますね。

◆いまひとつだと思った点
-すでにあちこちから指摘されているようですが、テキストとボイスとの違いがかなり多く見られます。マスターアップ後の体験版だけに、製品初回版では直らず、パッチが当たることになるのでしょうか。
-Navelさんらしいものだそうですが、場面転換時に挿入されるアイキャッチ+効果音が、頻度が高いこともあいまって見苦しいです。
-「主人公視点」が意識されているテキストと、無意識に「俯瞰的立場」を要求するテキストとが混在しています。「掛け合いを楽しむ」ことが重視されているためでしょうが、プレイしていて混乱することがありました。また、主人公絡みでも平然と効果音がはいるので、せっかく「主人公視点」で気持ちよくプレイしているのにその気分が萎えることがありました。結局、私は途中から効果音をoffにしてプレイせざるを得ませんでした。
-他の感想を見ている限り、このキャラクターがいい、という人が多いようですが、主人公を明確に嫌っているキャラクターの毒吐きセリフは非常に不快でした。しかもわざとでしょうが、テキストが到底読めないほど小さくなっていて、聴覚障害者に優しくありません。
※この不快さは、基本「主人公視点」でプレイしているから感じられることなのであって、実際には「俯瞰的視点」でプレイしている人が大部分なのかも知れません(主人公に感情移入しているかどうかとは別)。
-何より主人公のボイスがなかったことが残念です。女装主人公が女性を相手にするゲームではとても大切な要素なのですが。それと立ち絵も「ここぞという時」に限定されていて、制服姿やメイド服姿がなかなか見られないのはもったいなさ過ぎます。

◆ニュートラルとしたい点
-キャラクター設定(ただし明らかに男性であるキャラを除く、こいつらはダメだ)。
-BGM。シーンには合っているのですが、音に厚みがなく、いかにもコンピュータ音楽です、と感じられるところが惜しいです。OPはいいと思いました。

◆体験版後の展開について
-体験版直後の展開は……まあ予想の範囲内かと。
-基本的にイベントでの掛け合い中心になるでしょうから、関係性の深みを出すテキストが……来る可能性は薄いかと。いわゆる一般的な美少女ゲームとしての展開になるのでしょう。
-たぶん本編は12月までなのでしょう。「卒業まで3年間」はテキスト量的に無謀かと。次の年度になって、妹キャラも同じ学校に行くところも見たいと思うのですが、そのあたりはどうなるのでしょうか?
-「受略」が徹底されていけば、個別シナリオに向けてのストーリーも無理なくすすめられることになるでしょうが、体験版に出てきた選択肢からあまりその風情が感じられないのが心配です。

……以上、長々と失礼いたしました。製品版を買うかどうかは別途お財布の様子を見ながら、ということで。

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