[S] 調麻佐志、
100mSv未満の被ばくが健康に与える影響を評価する
―線形いき値なし(LNT)モデルの意味、
岩波『科学』2012年9月号、pp.1015-1022

以下は文献[S]のp.1018から
調氏による「LNTのベースとなる考え方」の説明を引用

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~。多少単純化してしまえば、一本の放射線が
DNAを損傷する確率、DNAの損傷が修復等さ
れずに残る確率、DNAの損傷が細胞のがん化に
つながる確率、がん化した細胞が免疫系をくぐり
抜け塊としての「がん」となる確率、それが病気
としての「がん」となる確率などが非常にわずか
ながらそれぞれ存在し、重ね合わさって、全体と
して「がん」を発症する確率となるという考え方
がそのベースです。一本の放射線*16ががんへと
結び付く確率はとてつもなく小さいのですが、決
してゼロとみなせるものではありません*17。そ
れゆえに、「低」線量といえどもDNAの損傷が
多数に及び、(疫学的にリスクの存在が証明できない程度で
すが)発がん・がん死の確率が無視できないレベル
になるという前提が採用されるのです。

*16―ここでいう一本の放射線には、いわゆる自然放射線/人
工放射線の区別によるリスクの違いはありません。単にα線、
β線…といった種類によってのみリスクは変化します。

*17―一本の放射線のリスクがゼロでないからといって一本の
放射線を取り上げ、そのがんリスクについて心配することは無
用です。それぐらい一本一本の放射線のリスクは低いものです。

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この説明と脚注の全体はすごくわかりにくい。
ぼくの経験ではこういうわかり難い不自然な言い方をする人は
能力面でも考え方においても信用できない場合が多い。

ぼくだったら、素直に次のように書いてしまうと思う。

一本の放射線ががんへと結び付く確率は
無視できるほど小さい。
しかし、被ばくする放射線の本数が増えるにつれて
がんになる確率は増加して行く。
そして、被ばく線量が十分な量になるとがんになる確率は
無視できない大きさになってしまう。

調氏は本文の方で
「一本の放射線ががんへと結び付く確率は~
決してゼロとみなせるものではありません*17」
と言いながら、脚注*17では
「一本の放射線を取り上げ、
そのがんリスクについて心配することは無用です」
と述べている。そしてこの脚注がついているのにその続きが
「それゆえに、「低」線量といえどもDNAの損傷が多数に及び、
~発がん・がん死の確率が無視できないレベルになるという前提が
採用されるのです」となっているのは滅茶苦茶読み難い。
こういう変な書き方で一体何を伝えたいのだろうか?

「内容以前に推敲が足りない。よくこのまま掲載することにしたな」
というのが正直な感想。

他にも気になる部分がありましたが、省略させて下さい。
正直、時間がもったいない。

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