ワイズマン版、映画『トータル・リコール』観る。とにかく都市のディテールが圧巻だ。
わかる人が観ればディック作品の映像化『ブレードランナー』を意識したそれをオマージュともいうべき規模のでかい洒落にニヤリとしてしまう。
そのディテールはCG技術も手伝い見事に昇華させてくれている。
ただ惜しむらくはブレランに感じた冷たさと肌にまとわり付く湿度、かび臭さを感じられないところなのだが、デザインが素晴らしいのだ。
都市そのものに物語上の貧富の差と階層階級を明確にさせながら、その文化のカオスに目を見張る。
制作上、その時代の経済に於ける主導権を握る国によって意識がそちらに傾くことは仕方ないが(つまり中国)、
それ以外にも日本、個人的にベトナムもわずかに入っていたようにも感じた。
そして面白かったのはイギリスのそれが中心になっていたことだ。
建造物は近代的な共同住宅にクラシックなヨーロッパ的スタイルも加味され、まさに混沌としている。
この貧富の差によって二分された世界は、現在のイギリスの経済状況を如実に表しているところにも、舞台選びが優れている。
余計なことだが、地球のコアを中心とし、そこを通って地球の表と裏を往復するのにそのコアに意味が今ひとつ感じられなかったのが残念だ。
設定を変更したのだから、いっそエネルギー問題に触れたらもっと別の物語になって面白かったかも、と思わず別に意識を伸ばしてしまった。
ストーリーも自己のアイデンティティを探すものとは違い(ディックの小説作品には根底にアイデンティティを巡る問題が流れている)、
アクションを中心とした仕立て方に個人的には不満を覚えるが、何も知らない人にはアクション映画として楽しめる(事実上映終了後の反応は若い人たちは満足していて楽しそうだった)。
こうなると'90作品の自己のアイデンティティを求め、
労働階級の差別問題を取り扱い物語に厚みを持たせたポール・バーホーベンの手腕がいかに優れていたかが
よくわかりバーホーベンに惚れ直してしまう。バーホーベン版にも登場した三つの乳房を持った女性も姿を見せるなど作品に対する愛情が感じられて、
これも嬉しい。アクションはケイト・ベッキンセールのおかげで実にシャープで、さすがと思わせる演出もバッチリ。
ケイトの持つリボルバーへの対抗処置として、素早くそのシリンダーを解除をするシーンがあったように感じたのだが、見間違いだったかも?
もしそれが正しければ相当かっこいいのだがーw

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