【光市事件弁護団の声明は以下の通り】最高裁第一小法廷は、本日、いわゆる光市事件について上告を棄却した。本件は、虐待を受けた未成熟な少年が、たまたま被害者に出会い、その被害者に母を投影して抱きついたことが発端となって、予期せぬ対応に対処できないまま、被害者を右手逆手で押さえつけて死亡させ、この取り返しのつかない事態にさらにパニック状態に陥り、被害児までも死亡させた誠に不幸な事案である。被告人には強姦目的はなく、殺意もない。このことは、客観的な証拠と12名の専門家による鑑定および弁護人による犯行再現実験などからも科学的に明らかにされてきたところである。しかし、裁判所は、これらの専門的知見や実験の結果を無視し、捜査段階で作成された虚偽の自白などに依拠し、真実を真正面から検討しようとせず、判断を誤った。極めて不当である。本件事件当時18歳1カ月に満たない被告人は、逮捕以来現在まで13年間社会から遮断された中で、被害者・被害児の無念さおよび被害者遺族の憤りを真摯に受けとめ、反省の日々を送っている。しかし、裁判所は、被告人のこのような姿勢に目を向けようとせず、被告人の可塑性および更生可能性を否定した。少年法が18歳未満の者に死刑を科すことを禁止したのは、少年の未熟さと成長発達の権利に着目し、周囲の大人がその充足に責任を負っているからである。したがって、結果がいかに重大であろうとも、未成熟な少年に究極の刑罰である死刑を科すことはできない。被告人は、犯行時、18歳になっていたが、幼児期からの虐待によって成長が阻害されていたのであって、実質的には18歳未満の少年であった。このような少年に、死刑判決を言い渡すのは、憲法13条、14条、31条および37条、ならびに少年法51条などに違反する。また反対意見があるにもかかわらず、死刑を言い渡すのは、生命刑である死刑の刑質に反し、死刑判決は全員一致でなければならないとする最高裁の不文律を変更するものであって、強く非難されなければならない。弁護団は、誤った判決を正すため、今後とも最善を尽くす所存である。2012年(平成24年)2月20日 光市事件弁護団

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