震災から8か月経過し、今被災地支援について思うことを書き連ねる。

これまで数多くの物的・人的支援が被災地を救っていただいた。心から深謝したい。感謝してもしきれない。
この恩返しは町の復興をもって果たすしかないと、改めて心に誓うものだ。

その一方で、被災地支援について考えてみると、現地の状況としてはいくらかミスマッチが目立ってきている。
復旧フェーズの支援にいつまでも比重を重く置き続けると、おそらく被災地は被災地のままなのだろう。
自分がやっている支援が『復旧支援』なのか『復興支援』なのか、私も含めて、しっかり自らの立ち位置を確認して行動したい。

『復旧支援』は基本的に消耗戦。
支援者はいつまで続けることができるのだろう…と、心と金銭面のスタミナが正直心配。
『復興支援』は経済活動が不可欠。
関わるものは利益を上げ、これを原資として復興を目指す。
こちらは短期長期いずれもあるが、復旧支援よりも先の未来まで見据えた事業となる。

皆で立ち上がり、未来へ進むための支援が 『復興支援』。
これを『復旧支援』と混同してしまい、せっかく素晴らしい事をしていても結果として良い方向に進まない事例を見る。
物をもらう非日常に慣れてしまい、もらえるまで自分で買おうとしない。
自活という日常に戻れなくなっている人がいる。

心の傷を抱えて未だに前へ踏み出せない方もいる中、一方で今働ける環境にあって働かない人がいる。
失業手当が延長され続け、仕事を選ぶ余裕や、就労に未だモラトリアムがあると思っているのかもしれない。
ハローワークには長蛇の列、求人もある。
しかし、募集に対し応募が極端に少ない。
被災地企業は深刻な人手不足に悩んでいる。
失業手当はいつまで続くのか。
続くわけがない。
失業手当が無くなった後はどうするのだろう。
手当が切れるとわかったその瞬間に応募が殺到するのだろうか。
その時に企業に受け入れのキャパシティは十分にあるのだろうか。

「復旧」と「復興」に話を戻す。
極端な例で喩えると、傷ついて飛べない鳥を、家で手当てするのが復旧。ケガが治った鳥を自分の羽で飛ぶように手伝うのが復興。
今もどちらかをそれぞれ必要としている人がいる。
しかし、ケガの治った鳥にまでいつまでもエサを与え続けていたら、飛べる力があっても人はカゴから出て自ら飛び立つだろうか。
「自分で収入を得て自活する」という被災前まで当たり前だった日常を取り戻そうとする意志を物資支援等で結果的に奪うことになってしまっていたら、それは支援者としても本意ではないはず。

また、「被災地の為に何かをしなければならない!」という気持ちが先行してしまう方や「被災地を視るだけでなく、せっかくだから何かをしたい!」という方の中に、自分の支援がもたらす結果を気にしない方を散見するのが残念。
被災地を見に来たいのならば、それだけでも被災地としては十分ありがたい。
現地の状況を知らずに支援を持ち込み、被災地が振り回されている場合もある。是非事前の検証をお願いしたい。

ただ、それを言ってしまうと「じゃあ私たちは何をすればいいの?」「ボランティアや物資はもう不要と言いたいのか」と支援者が戸惑ってしまうことも考えられる。
私は「物資支援が必要な人以外に施しを与えることの影響と、その対象を選別することの難しさ」を言いたいだけ。
復旧から復興へ移行している今、支援の在り方が問われているのは間違いない。

私の立場で言うのはものすごく憚られるのだが、効果的な復興支援について一つだけ言える事実。
「復旧は人道、復興はお金」
復興を応援するのであれば、被災から復活した企業の商品を買ってほしい。
うちの蒲鉾なんて買わなくていいから、女川町内企業の産品を買っていただきたい。
志と郷土愛を支えに立ち上がり、プライドを持って作り出した女川町の商品を買っていただきたい。
できれば定価で買っていただきたい。
利益が多いほど現地支援になる。
それにより女川町民は日々働ける実感を得る。お客様の笑顔に会える。給料を払える。雇用が生まれる。雇用により、復興に不可欠な定住人口を維持できる。

被災地に行って商品を購入するツアーがある。被災地でキャッシュフローを回すこと、そして直接激励をしていただける機会となり、本当にありがたい。
一方、時間的・金銭的に難しい方は、商品を現地で購入しなければならないということはない。
通販等で購入し、交通費に大金がかかるのであればその分も商品購入に回すことをお勧めする。

いま一番私が危惧しているのは、女川で復活した企業や個人事業主が再び商売をやめてしまうことだ。
借金や環境・状況の悪さを乗り越える覚悟で志を持って復活し、結局商売がうまくいかず再び倒れるようなことがあれば、二度とその企業は立ち上がれない。
女川復興を成す企業という柱が折れ、修復不可能となることを意味する。

それは基幹産業の漁業だけではなく、日用雑貨・家電販売・燃料関係など全てに言える。
特にこれから冬を目前にして前述の商店に関連する物資が動く。
そこで、支援者に提案というか、お願いがある。
「お金が絡むと生々しいから物資を与えることで支援したい」と金銭のやり取りを遠慮する風潮を少し考え直していただきたい。
物的支援ではいろいろと限界があるし、復興の柱となる被災地の企業は利益が無ければ給料が払えず雇用が生まれない。
弊社も商品売上からの収益を原資にして初めて地元に対し無償の復興支援ができる。
もし、冬用の物資を女川町に送りたいと思っている方がいたら、地元の商店に発注し、現地の事業主から届けさせてほしい。
もしくは支援物資を女川町内の商店に事前に発注しておけば、物品を女川町内で受け取って自分で直接手渡しすることも当然可能だ。
善意あふれる無償の支援物資が現地の民業を圧迫させてしまうかもしれないと少しでも危惧されている方は、是非検討していただきたい。

実際、女川町内の事業主は悩み、苦しんでいる。
寄付された暖房器具の修理に奔走することになるであろう地元の電気屋さんの気持ちを考えてみてほしい。
目の前で衣類を無償で配られる洋品店店主の心中を察してほしい。
炊き出しの食材と同じものを販売している八百屋、魚屋、スーパー経営者の心情を慮ってほしい。
同じく被災者に物品がわたるにしても、支援物資を外から持ち込めば『復旧支援』であり民業圧迫の恐れがあるが、女川町内で購入すれば経済が回り、一転して『復興支援』との両立をはかることができる。

女川町民の誰もが喜ぶこの方法、ご理解できるのであれば是非お願いしたい。
もし数件でも私の提案が受け入れてもらえるならば、女川町の事業主に話をつなぐ準備をしてある。
事前準備によって大手流通企業に入る利益を、女川町の事業主に回してもらいたい。

被災地復旧とはマイナスをゼロに戻すこと。必要なのは、物資やボランティアなど人道的な支援。
被災地復興とはゼロからプラスに転じること。必要なのは、地元企業の復活と存続、雇用創出、そして収益。
津波が町のほとんど全てを奪ってから早8か月。
私を含め、支援をしたいと思う人がまずやらなければならないのは、復旧と復興の違いを考え、自分はどちらを実行に移すのかを確認することだと考える。


/* 散文思うままに書き連ねましたが、ご意見やアドバイス等あればお伺いしたいです。

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